日経ビジネス電子版 SPECIAL
ビジネス機会を創出する国際会議の意義と効果
日本政府観光局(JNTO)理事長 清野 智 氏 × 国際義肢装具協会 日本支部長 陳 隆明 氏(MICEアンバサダー)
ビジネス機会を創出する国際会議の意義と効果日本政府観光局(JNTO)理事長 清野 智 氏 × 国際義肢装具協会 日本支部長 陳 隆明 氏(MICEアンバサダー)

訪日外国人旅行者の増加促進に取り組む日本政府観光局(JNTO)は、国際会議の誘致でも積極的な活動を展開してきた。2018年までの7年間、日本は国際会議開催件数でアジア・太平洋地域のトップを保持*1 してきたが、今や国家間競争は激化しており他国との差は小さい。本稿では、JNTO理事長の清野智氏と国際義肢装具協会(ISPO)日本支部長でありMICEアンバサダー*2 でもある陳隆明氏に、国際会議が産業界にもたらす効果や活用法などについて語り合っていただき、国際会議開催の意義を考察した。

*1 国際会議協会(ICCA)が毎年5月に発表する統計に基づく。
*2 MICEアンバサダー:国内外に影響力のあるグローバルリーダーの方々がJNTOの要請により就任。MICE開催国としての日本の広報活動や国際会議の誘致活動に協力している。

国際会議を誘致する意義とは

国際会議を誘致する意義とは

陳 隆明 氏

国際義肢装具協会 日本支部長 陳 隆明 氏(MICEアンバサダー)

陳 隆明 氏

国際義肢装具協会 日本支部長 陳 隆明 氏(MICEアンバサダー)

清野 まずは、ISPO世界大会(以下、ISPO)のご成功、おめでとうございます。
 ありがとうございます。昨年の世界大会は、「Basics to Bionics」をテーマに開催しました。近年、ロボット工学やAI技術などの発達により義肢装具の進化は著しく、利用者も障碍者のみならず高齢者へと拡大しつつあります。医療機器メーカーだけでなくハイテクメーカーも多数ご参加くださった昨年の世界大会は、この業界が転換期を迎えたことを象徴する会議になりました。
清野 国際会議協会の統計によると、2018年に世界で開催された国際会議は15年前の約2倍に当たる1万2951件でした。これは、国を越えた情報交換を重視する学会の積極的な姿勢の表れであり、ISPO同様に学術界と産業界が連携した会議は今後ますます増加すると考えられます。
 ISPOでは、約50社の中小企業を集めた「JAPANパビリオン」を設置しました。企業にとって自国開催の国際会議は、日本にいながらにして海外進出の足がかりを獲得する絶好のチャンスですが、中小企業が出展するには、費用や言語のハードルが高い。そこで、日本語版エントリーシートを作成したほか、通訳や商談の仲介役を手配するなど、中小企業が参加しやすい環境を整えました。
清野 ISPOは神戸開催でしたね。日本は、都市別開催件数で見ると東京以外にも神戸をはじめ大阪や京都、横浜、仙台、金沢、福岡など18都市がアジア・太平洋地域で100位以内にランクインしており、開催地の選択肢が豊富であることが強みになっています。  また、国際会議を開催することは開催都市のイメージ向上にもつながります。海外からの参加者が開催地の好印象を自国で広めることで、都市の認知度も向上。加えて、開催地や国には多大な経済効果をもたらしています。
 開催地は、観光地としてだけではなく、先進性やインテリジェンスもアピールできますよね。自国の技術レベルの向上やイノベーションの加速も期待できます。

最新技術と知識が集積する国際会議が産業界のイノベーションを加速させる
イベント会場

都市の特色を生かした会議を

都市の特色を生かした会議を

清野 智 氏 清野 智 氏

日本政府観光局(JNTO)理事長 清野 智 氏

日本政府観光局(JNTO)理事長 清野 智 氏

清野 京都で昨年初開催された「ICOM(国際博物館会議)」では、伝統文化が豊かな京都の街全体を博物館に見立て、メイン会場の国立京都国際会館のみならず、二条城や京都国立博物館でイベントを開催したほか、大阪の博物館などを会場としたオフサイトミーティングなども開催し、参加者に開催都市と周辺地域の魅力をアピールしました。
 ISPOが開催された神戸市は、医療産業都市として関連産業が集積しており、大会でも兵庫県と神戸市がパラスポーツフェスティバルや介護・医療ロボット見本市を併催してくださいました。日本らしさや開催地の特色を出すためには、行政機関の協力が不可欠だと思います。
清野 今年9月には仙台で「第17回世界地震工学会議」が開催されますが、これは被災地である仙台の経験を生かして開催する意義を訴え、ご理解いただいた結果です。
 誘致の際には、2017年にチリで開催された第16回世界地震工学会議の総会で、在チリ日本大使館の協力を得て大使公邸を会場にしたジャパン・ナイトを開催。日本および仙台市の魅力をPRしたことも誘致決定に奏功しました。JNTOでは、研究者の先生や自治体、コンベンションビューローと一体となり、オールジャパン体制での誘致活動に日々取り組んでいます。

国際会議はテストマーケティングの絶好のフィールドでもある
イベント会場

国際会議をビジネスに活用する

国際会議をビジネスに活用する

清野 国際会議は、知識や研究成果を共有し世界に発信する場です。JNTOの役割は、日本開催に対する熱意を持った先生方と一緒に国として誘致に取り組み、こうした機会をより多く日本にもたらすことだと考えています。
 陳先生をはじめ、MICEアンバサダーにご就任いただいている69人の先生方は、国内外に強い発信力や豊富なネットワークをお持ちで、海外の方や若い世代の方に国際会議を日本で開催する意義を広めてくださっています。熱意ある先生方の貢献には、日々感謝しています。
 技術と知性の集積こそが国際会議の特徴ですから、産業界の方々も参加することで新たな競争意識やビジネスチャンスも生まれるでしょう。それは、日本の産業界全体を盛り上げることにもつながっていくと考えています。
清野 国際会議をテストマーケティングの場として活用された企業もありました。これまでに自動翻訳技術や自動運転技術などの実証実験が行われたのですが、世界各国から人が集まり、男女問わず多様な年齢層にアプローチできるという点で、国際会議は絶好のフィールドといえます。

 ISPO日本の協賛社の1つである横浜ゴムは、CSRの一環としてパラスポーツフェスティバルにもブースを出展してくださいました。社員の意識を変えるいい機会だったとの感想から、そのような形で企業が国際会議を活用する方法もあると感じました。
清野 ポテンシャルの高い海外ベンチャー企業や研究者と出会える可能性も高いと思います。国際会議を日本で開催するメリットを産業界に訴えていくことも、JNTOの重要なミッションだと考えています。
 近年は国際会議に対する企業の関心が高まってはいますが、今後は、さらに幅広い分野の国際会議に注目するよう働きかけていきたいと思います。
 これまでISPOと接点が少なかった企業も、日本開催の大会が海外展開を含むビジネス領域拡大のきっかけになったと喜んでくださいました。
清野 今後は、国際会議がビジネスシーズを見つける場であることを産業界の方々にも大いに着目していただき、国際会議の日本開催に対し、積極的にご協力いただきたいと思います。