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管清工業株式会社 代表取締役 長谷川 健司氏
下水道の問題は社会に影響する。作って終わりではないのが管理の仕事。ただひたすらに続けることが使命。
株式会社管清工業 代表取締役 長谷川健司氏
1975年日本の大学を卒業後、渡米し現地の下水道管理会社に入社。83年帰国し、管清工業株式会社に入社。87年取締役に就任。98年代表取締役に就任。2009年公益社団法人日本下水道管路管理業協会会長を兼任。

下水道の問題が市民の生活を大きく左右する

「下水道に問題が発生すれば、市民生活や環境に深刻な影響が及びます」

そう語るのは、管清工業の長谷川健司社長。日本の下水道普及が始まった高度成長期から下水道の調査・清掃・補修を手掛けてきたトップ企業だ。下水道管内部に亀裂や破損があれば、道路陥没や浸水といった重大事故につながる。下水道と地上の社会は表裏一体なのだ。

「地域ごとに管が耐えられる水量を把握しているので、ゲリラ豪雨で影響が出そうな地域があればすぐに自治体に連絡し、現場にポンプを用意して対応することもあります」

日本の下水道の課題は老朽化。日本は長らくインフラの普及促進が第一で管理は手薄だったが、2012年、中央道笹子トンネル天井板落下事故を契機に国がインフラ管理に目を向け始め、下水道の検査・補修にも大いに弾みがついた。だが、コロナ禍がその動きに水を差しかねない状況だ。自治体の税収減で最初にしわ寄せが行くのはインフラ管理の予算だからだ。とはいえ、「それでもできる限りの手は尽くしたい。それが下水道を長年見守ってきた企業の責任」と長谷川氏は言う。

写真:ずらりと並ぶグッドデザイン賞のパネル

代表取締役 長谷川健司氏

世界屈指の欧州企業トップが舌を巻いた技術力

この下水道という一般人には「見えない世界」で、同社は世界に伍(ご)する技術を開発している。下水道管内の作業は危険と隣り合わせで有毒ガスや鉄砲水に見舞われることもあり、安全対策のためロボットの開発にいち早く取り組んできた成果だ。例えば下水道管の汚泥の中を8輪走行でカメラ調査する「グランドビーバーシステム」。500~600メートル走行できる機械なら他社にもあるが、2キロも走行できる技術は世界でも同社だけ。背後に引きずるケーブルの自重などが距離の制約だったが、ケーブルの工夫や各車輪の独立制御などの技術で常識を覆した。

下水道の分野で長谷川氏がいつか追い付きたいと思っていた世界屈指の欧州企業がある。最近、そのトップと話す機会があり、自社技術を紹介していたところ、「こんなに、とんがっている会社だったとは」と舌を巻かれたことが何よりうれしかったという。

「私は早くから海外の下水道技術を見て、日本流に育ててきた。あの一言で自分の考えが間違っていなかったと報われた思いでした」

その原体験になったのが米国だった。70年代に大学を出てすぐに渡米、テキサスで下水道管理会社に入社し、現場で作業に明け暮れた。下水道関連の展示会に頻繁に足を運び、世界の最先端を吸収した。当時の欧米と日本の差は「体感で20年。ゆくゆくは同じ状況が日本の下水道にも訪れる」と確信して帰国、管清工業に入社、後に社長に就任する。

下水道管の中を8輪走行でカメラ調査する「グランドビーバーシステム」

下水道管の中を8輪走行でカメラ調査する「グランドビーバーシステム」

見えないからこそ、ひたすら続けるのが管理の仕事

「下水道の管理は健康診断と同じ。検査を続けるからこそ、大きな問題を予防できるんです」と長谷川氏。その検査データを業界で持ち寄り、国が災害対応や防災に役立てる仕組みづくりも可能と同氏は思いをはせる。全国に事業拠点を持つ同社なら、その面でも有利なはずだが、地方で地元企業と競争する気はないという。「むしろ地元企業に頑張ってもらって、そこにノウハウや技術を提供していきたい。そして高度な技術が必要な事態の際、当社に声がかかればありがたい。そのためにも、常にとんがった技術力を追求したい」。

下水道管理は一般の人々には見えない世界だけに、報われない思いもあるはずだが、「それを前提でやるのが管理の仕事」と笑う。長谷川氏は22年前の社長就任時に「300年続く会社にする」と宣言した。本人は「江戸300年だから」と冗談めかすが、そこにはこの仕事ならではの強い思いがあった。

「管理はひたすら繰り返すことに意味があります。清掃直後の豪雨でやり直しやコスト増になっても、『よくやった』と現場を褒めますよ。終わりのない管理の仕事だからこその考え方なんです」

管清工業株式会社

管清工業株式会社

〒158-0098 東京都世田谷区上用賀一丁目7番3号

https://www.kansei-pipe.co.jp/

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