提供:キリンビール

10月6日、キリンビール「一番搾り」ブランドから「キリン一番搾り 糖質ゼロ」が新登場した。ビールカテゴリーで“糖質ゼロ”を掲げる商品は、日本初(※)。高いニーズがあったにもかかわらず、技術的ハードルの高さから叶わなかった“ビールで糖質ゼロ”の夢を、ついにキリンが実現した形だ。開発期間は5年。そこにはどんな苦労や試行錯誤があったのか。開発のキーパーソンである若き研究者・廣政あい子氏に、品田英雄が鋭く切り込む。

友人の一言から始まった“ビールで糖質ゼロ”への挑戦
5年間の試行錯誤を経て、ついに完成!

品田 日本初(※)の“ビールで糖質ゼロ”を実現した「キリン一番搾り 糖質ゼロ」が、いよいよ発売されましたね。先だって行われた発表会には私も参加させていただいたんですが、その注目度の高さには驚きました。長い開発期間を経てついにお披露目することができた今、研究者としてはどんなお気持ちですか。

廣政 とにかくお客様に喜んでいただける技術を完成させよう、という一心で走り続けてきたので、ようやく発表、発売の日を迎えられてほっとしています。今は、少しでも多くのお客様にこのおいしさをお届けしたいという気持ちでいっぱいですね。

品田 それは私も同感です。ここだけの話、実は糖質ゼロになったことで大好きな「一番搾り」の味が損なわれるんじゃないかと内心危惧していたんですよ。でも飲んでみたら、まったくの杞憂でした。「一番搾り」の雑味がなく調和のとれたおいしさはしっかり担保されていて、しかも糖質を気にせず飲めるというのはうれしいですね。

廣政 そこはかなりこだわりました。糖質ゼロであっても、「一番搾り」ブランドから出す以上、おいしさは絶対に妥協できませんから。

品田 どうやってここまでおいしくできたのか、今日は廣政さんにいろいろ聞いてみたいと思います。そもそも開発はいつ、どんなきっかけから始まったんですか。

廣政 きっかけは、育児休業中にお花見をしている時にパパ友がつぶやいた、「ビールは好きだけど、体型も気になるから最初の一杯だけ」という一言でした。それを聞いて、誰もがもっと気兼ねなく飲めるおいしいビールをつくりたい、と考えるようになったんです。そこで育児休暇が明けてすぐに、「ビールの原材料だけで、糖質を限りなくゼロにする技術開発」に取り組ませてほしいと社内プレゼンを行いました。今から5年前の、2015年春のことです。

品田 そこからプロジェクトが始まったんですね。でも、”ビールで糖質ゼロ”というのはまだ世の中には出ていない技術。それだけ難易度の高いチャレンジだと思うのですが、プレゼンを聞いた社内の反応はどうだったんですか。

廣政 たしかにとても高いハードルへの挑戦でしたが、「お客様の求めるものがそこにあるのならなんとか届けたい、時間と手間を惜しまず取り組んでみよう」と多くの賛同を得られました。今思えば、「お客様のことを第一に考える」というキリンビールの社風があったからこそ、このプロジェクトを実現できたのだと思います。

工程を一から見直し、試験醸造は350回以上
前人未踏の“ビールで糖質ゼロ”を実現するまで

品田 今やあらゆるジャンルで“糖質ゼロ”がもてはやされているのに、なぜかビールにはそれが存在しなかった。その理由はどこにあるのでしょう。

廣政 最大の理由は、実現のための技術に難しさがあるからです。ビールは麦芽とホップを主原料としていますが、この麦芽の発酵から生まれる糖は、アルコール発酵とうまみのもとになるもの。糖質をゼロにすると、おいしさとアルコール度数を担保するのが困難となるのです。

品田 なるほど。麦芽を少なくすれば、糖質ゼロはできるけど、そうするとビールじゃなくなってしまうんですね。

廣政 そうなんです。今市場に出ている糖質オフ・ゼロ系というのは、麦芽使用量がビールより少ない発泡酒や新ジャンルだからこそ実現できた商品といえます。その点、ビールは酒税法で麦芽の使用比率が定められていて、製法や使える原材料にも制約があるので、ビールで糖質ゼロを実現するのは至難のワザ。ここにたどり着くまでに、ありとあらゆる技術を試し、350回以上の試験醸造を繰り返しました。

品田 つまり、常識破りとも思える挑戦だったわけですね。開発にあたって、まずはどこから着手されたんですか。

廣政 ビールづくりの技術を一から見直すところから始めました。原材料選びから仕込・発酵といったすべての工程を洗い出し、今まで当たり前だと思っていた醸造過程の中に何か見落としがないか、ヒントがないか徹底的に探ったんです。

品田 徹底的な見直しを行った結果、これまで不可能だと思われていた糖質ゼロを実現するための光明が見えてきたと。その鍵はどこにあったのか、可能な範囲で教えていただけますか。

廣政 ひとつは糖質低減に適した麦芽の選定にあります。麦芽中の糖質には、酵母が食べられるものと食べられないものが混在しているので、酵母が食べられる糖をより多く含んだ麦芽を厳選しています。また、仕込の段階で麦芽中のでんぷんをより酵母が食べやすい糖に分解することも重要なポイント。これまで以上に効率よく分解できるよう、仕込技術を大きく進化させました。

品田 食べやすく分解するというのは、具体的にどうやるのでしょう?

廣政 麦芽中のでんぷんは、仕込の工程で大小さまざまな糖に分解されますが、大きな糖は酵母が食べきれません。食べ残した糖はビールの糖質となってしまうので、酵母が食べられるサイズに揃えて分解することが肝となります。

品田 小さく分解した糖を全部酵母に食べ尽くしてもらうことで、糖質ゼロを実現しているわけですね。でも、実際は言葉でいうほど簡単じゃないですよね?

廣政 そうですね。仕込や発酵の温度によって糖の分解や酵母を食べる条件が異なるので、より適した温度や条件は何か、細かく検討しながら何度も実験を繰り返しました。こうして350回以上の試験醸造の末に生まれたのが、厳選した麦芽に、進化した仕込技術・発酵技術を組み合わせた「新・糖質カット製法」です。

※ ビールで糖質ゼロを実現した国内で初めての商品(Mintel GNPDを用いた当社調べ)
※2 食品表示基準による