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KIRIN SDGs Top Interview ヘルスサイエンス領域に挑み世界の人々の健康に貢献をKIRIN SDGs Top Interview ヘルスサイエンス領域に挑み世界の人々の健康に貢献を

キリンホールディングス 代表取締役社長 磯崎 功典氏キリンホールディングス 代表取締役社長 磯崎 功典氏
キリンホールディングス 代表取締役社長 磯崎 功典氏キリンホールディングス 代表取締役社長 磯崎 功典氏
キリンホールディングスは2019年に長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」を策定し、
「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV(社会との共有価値)先進企業となる」ことを目標として掲げた。
同時に、ヘルスサイエンス領域を立ち上げ、育成していくことも宣言している。
同社社長の磯崎功典氏にその意味を聞いた。 
図:長期非財務目標CSVパーパス
長期非財務目標CSVパーパス

不透明な時代だからこそCSV先進企業を目指す

――なぜCSVという概念を重視するのでしょう。

新型コロナ感染症が拡大する今がまさにそうであるように、現代は非常に不透明な時代です。社会が抱える課題も増大しており、人々は経済的豊かさと同時に社会的課題の解決も求めています。そんなときに必要とされる企業とは何か。私は人々と意識を共有し、社会的課題にチャレンジする企業が選ばれる時代になると考えています。

短期的に利益を上げることは簡単です。しかし、20年、30年先、次世代まで会社を存続させようと思うなら、経済的価値だけでなく社会的価値を創造する企業でなければ人々の共感は得られません。

とはいえ社会的課題すべてに対応することは不可能です。そこでキリンの持つ強みを生かせる領域で、人々と共有できる価値を創造し、社会的課題に立ち向かう「世界のCSV先進企業となる」ことを目標に掲げました。そして我々が創造する価値とは「食から医にわたる領域での価値」です。

写真:磯崎 功典氏
ニューノーマルな時代が始まり、不安定・不透明・不確実の中で持続的に成長しなければならない。「社会に必要とされる会社」であり続けるためにキリンが持っている技術で社会課題をどうやって解決できるかが大きなテーマだと語る。

――キリンの持つ強みとは何ですか。

我々の強みはコア技術である発酵・バイオ技術です。今から110年ほど前に発酵・バイオ技術を使って始めた事業がビール事業です。そして約40年前に医薬事業に参入しました。さらに次の時代に向けて同技術を使い、ヘルスサイエンス領域において人々の健康課題の解決にチャレンジしていきます。

健康は国や人種を問わず、人類すべての共通の課題です。今コロナ禍によって人々の健康への意識はさらに高まっています。また地球温暖化により、新たな感染症の脅威が高まるリスクも指摘されています。我々のビジョンは新型コロナ感染症拡大の前後で変化はありませんが、ヘルスサイエンス領域への取り組みは最大限加速させていかねばならないと実感しています。

図:食から医にわたる領域でイノベーションを創出 健康分野の領域で広く果敢にイノベーションを創出。健康課題の解決を進める。

プラズマ乳酸菌免疫機能で初※の機能性表示食品

免疫機能を訴求する機能性表示食品
免疫機能を訴求する機能性表示食品

――ヘルスサイエンス領域ではどのような分野に取り組んでいますか。

大きく分けて3つあります。1つは、免疫の分野、次に腸内環境分野、そして高齢化の進行に伴って大きな問題になっている脳の分野です。

免疫分野については、キリンの独自素材である「プラズマ乳酸菌」にいま最も力を入れています。体内には様々なタイプの免疫細胞が存在します。それらをコントロールする司令塔となる細胞に働きかけるのがプラズマ乳酸菌です。グループ会社である小岩井乳業・協和発酵バイオと共同研究を続け、今年8月にプラズマ乳酸菌を使用した商品が、機能性表示食品制度の「健康な人の免疫機能の維持をサポート」に関する表示で、免疫機能において初めて消費者庁に届出受理されました。同商品群は11月から全国で発売しています。

※2020年9月 機能性表示食品の届出情報検索を用いた当社調べ

腸内環境分野については、我々の体内にあり腸の健康を整えるヒトミルクオリゴ糖を大量生産する技術を開発、早期の事業化を目指しています。脳の分野では認知機能を維持する機能が期待されるシチコリンやβラクトリンなどについて研究・開発が進んでいます。

大事なポイントはこれらの素材が食品として利用できる点です。食品だからこそ飲料にできたり、他の食品に混ぜたり、あるいはサプリメントになったりします。汎用性が非常に高いのです。

ファンケルと提携 互いの強み生かし新発想の商品開発

――昨年ファンケルと資本・業務提携をしています。どのようなシナジーが得られていますか。

長年人々の健康や美容に向き合ってきたファンケルと、おいしくて安全・安心な飲料を提供する当社が、互いの強みを生かし新発想の商品を創出しました。

キリンビバレッジからは10月にフレーバーウォーター「キリン×ファンケル BASE ピーチ&ザクロ」を発売しました。当商品は、ファンケル独自の組み合わせによるコラーゲンやビタミンCを配合、当社の技術により、新しい美容習慣としてそれらの成分を手軽に補給できる飲料として開発しました。

同じく10月にキリンビールから「キリン×ファンケル ノンアルコールチューハイ 氷零 カロリミット®」を発売しました。当商品は、難消化性デキストリンの働きにより「食事の糖や脂肪の吸収を抑える」機能性表示食品であると同時に、食事にも合いおいしく飲めるノンアルコールチューハイです。

健康と美のファンケル、おいしさを追求してきたキリン。両社が力を合わせることで、Win-Winの関係を築けたと思います。免疫や脳の領域でも両者のシナジーが期待できます。我々が持つ発酵・バイオ技術による機能性素材と、ファンケルの製品化技術やマーケティング力を生かして、さらにヘルスサイエンス領域を強化できると思います。

――今後の展開について教えてください。

社会環境の変化はますます激しくなり、食領域、医領域に加えて、ヘルスサイエンス領域は、将来の持続的成長を考えれば一刻も早く事業の柱として育成していく必要があります。

ファンケルとの共同開発で生まれたヘルスサイエンス領域の新商品
ファンケルとの共同開発で生まれたヘルスサイエンス領域の新商品

我々の強みである発酵・バイオ技術により、免疫、腸内環境、脳という3つの分野での研究開発には、一層力を入れていきますが、キリンだけではできないこともあります。グループ内の連携はもちろんのこと、大学や他の企業などとも積極的に連携していく必要があるでしょう。すでに、プラズマ乳酸菌を海外の企業にも提供する交渉も始めています。

今、私の頭の中では7割をヘルスサイエンス領域が占めています。当社の将来にとって、今が大変重要な転換点であることに間違いはありません。ヘルスサイエンス領域で新たな価値を提供することに挑戦し、世界の人々の健康に本気で取り組む我々の姿にぜひ注目いただきたいと思います。