今、日本企業が取り組むべき
デジタル経営改革とは
~「レジリエンス経営」を支えるDX推進~

デジタルトランスフォーメーション(DX)は企業の成長戦略に不可欠であるという認識が広まりつつある。新たなテクノロジーを活用しデータやシステムをいかに部門間連携させ、全社的に統合することで、新たな企業価値を創出するのか。一方、新型コロナウィルスをはじめとする予測不可能な経営リスクに対し、どのように備え、対応し、持続的な成長を担保するのか。環境変化や危機に打ち克ち、それを糧に成長できる組織経営を「レジリエンス経営」と定義し、攻めと守りの経営改革を支援するKPMGコンサルティング社長の宮原正弘氏が解説する。

KPMGコンサルティング 代表取締役社長 兼 CEO 宮原 正弘 氏
KPMGコンサルティング
代表取締役社長 兼 CEO
宮原 正弘

経営者には、中長期的な 戦略策定とコミットメントが必要

世界でテクノロジー投資を拡大した企業の割合は、過去15年の間で今が最も高まっている。宮原氏はこの理由を「これからの企業の成長戦略は、既存ビジネスのドラスチックな変革や、新しいビジネスモデルへの転換が必要であり、そのためには最先端のテクノロジーの見極めと活用が不可欠」という認識が広がってきたためだと語る。

しかし、DXの必要性は理解しながらも、何から手を付けるべきかと躊躇している企業は少なくない。こうした状況の中で、経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」では、2025年までにレガシーシステムを刷新できなければ、日本経済は年に最大12兆円の経済損失が生じる可能性があるという「2025年の崖」と呼ばれる警鐘を鳴らした。「この指摘の本質は、つぎはぎだらけのレガシーシステムが、DXを阻害しているということです。複雑化・ブラックボックス化したシステムは運用コストが高く、技術的負債がかさみます。何よりDX推進の鍵となるデータの効率的な収集・整流化ができません。この状況を打破するためにはトップの強いリーダーシップが求められます」(宮原氏)。

また、多くの企業で現行業務をそのまま機械化し、短期的な成果を上げやすいRPAの導入が進められているが、「様々なデジタルテクノロジーを駆使することは必要です。ただし、それ以上に重要なことは、将来に向けて既存の事業、組織を変革するための長期的な戦略です。費用対効果がすぐには見えにくい取り組みの推進には、トップの意思決定が欠かせません。『DXレポート』は長期的な戦略としてDXをやりきる必然性を示す根拠となったはずです」(宮原氏)。

では、経営者はどのように自社のDX推進を後押しすべきか。経営者は必ずしもデジタルに精通していない。その中で、「経営者は5年先、10年先を見据えて成長戦略を真剣に考えていくことにコミット」し、「多様なパートナーと共創するオープンイノベーションの仕組みを確立する」ことが決め手となると宮原氏は言う。

さらに、「デジタル人材の育成を積極的に行うことも重要です」と宮原氏。「実際にAIエンジニアやデータサイエンティストの役割を社内のみで補うことは難しいと思われます。大切なのは、デジタル要素を理解しながら、社内のニーズを把握し、データの活用・分析結果から新しいアイデアを生み出せる、コミュニケーション能力を持ったデジタル人材を育成することです。それらが結果的にDXの実現につながります」。

※参照「Harvey Nash/KPMG 2019年度CIO調査」

DX推進を後押しするテクノロジートレンド

現在、DXを後押しする先進テクノロジーの例を、KPMGが支援するプロジェクトから紹介したい。

【デジタルイノベーション】

まずAI活用で注目したいのが、自然言語処理を活用したAIソリューションだ。企業・組織には膨大なテキスト情報が存在するが、すべての情報を有効活用することは難しく、様々な領域の業務は熟練者のノウハウ・経験などの「暗黙知」に頼っていることが多い。例えば人事領域では履歴書や業務レポートを含めた、社内のあらゆる自然言語情報をAIによって「形式知」化。最適な人材の採用や配置案への応用など、業務を効率化・高度化するAIソリューションを生み出し成果を上げている。

設計・開発領域でも、日報や技術報告書などの埋もれた情報や、勘や経験などの熟練者の知見をAIで形式知化することで、コストの低減や市場投入リードタイム短縮、業務の効率化・高度化、広範囲なリスク分析に寄与している。

【インテリジェントオートメーション】

導入が盛んなRPAをさらに進化させ、AIと連携させることで自動化の適用範囲はさらに広がりを見せている。KPMGでは人の判断が必要な作業を含めて業務をエンドツーエンドで自動化し、意思決定のスピードアップや生産性向上を目指す活動を「インテリジェントオートメーション」と位置付け取り組んでいる。その中で 「プロセスマイニング」も、DXに欠かせない技術だ。これは蓄積されたログデータを基に業務を可視化する技術。従来のBPRでは、事前に幾重もの現状調査が必要だったが、業務のムダやボトルネックをシステムで特定できるため、改革や自動化ポイントの特定を迅速に行うことが可能になる。

【デジタルファイナンス】

経理財務部門における経営意思決定支援強化の一環で、EPM(企業業績管理)の普及および実装支援にも取り組む。昨今では、従来からの財務諸表および管理会計の情報と、非財務情報(例えば、物価指数、地域別人口推移、気象情報などの外部データも含む)を結びつけ、将来の売上や収益予測をAIの活用により実現する動きが加速している。これにより、経理財務部門が、トップマネジメントや各事業部門に「何が起きるのか」「何をすべきか」といった洞察やアドバイスを行えるようになる。「DXの進展で、経理財務部門も、将来を予測して処方箋を組み立てる時代を迎えました。我々はテクノロジーを活用したデジタルファイナンス革命をリードしていきます」(宮原氏)。

【サイバーセキュリティー】

IoTの進展により、サイバー攻撃は機密情報やプライバシーだけの問題ではなく、物損や人への危害にも繋がる可能性が拡大している。「企業はリスク認識のステージを一段上げ、競争優位を生み出すための戦略的投資として取り組む必要があります」(宮原氏)。

「攻め」と「守り」の両輪でレジリエンス経営を支援

KPMGコンサルティングでは、147カ国におよぶ海外のKPMGメンバーファームや内外の専門家と連携し、様々な領域において企業の支援に取り組んでいる。同社の優位性の源泉は、クライアントの視点に立ち経営課題解決に取り組む会計事務所系ならではの中立性と、支援内容の幅広さにある。

「KPMGではテクノロジーを活用する『攻め』の経営支援のみならず、クライシスマネジメントを含むリスクマネジメントの『守り』の支援の双方を得意としています。不確実な時代だからこそ、新たな環境変化や想定外の危機が発生しても『攻め』と『守り』をワンストップで支援し、リスクに対する万全な備えを築きながら成長を遂げるための総合的なアプローチが必要となるのです。グローバルファームならではの経験とノウハウを提供することで、さらなる成長を目指す日本企業の経営者の皆様のお役にたてるよう努めてまいりたいと思います」と宮原氏は語った。