従業員の主体性を尊重し、多様な人財が柔軟に生き生きと働ける環境を整えてきた堀場製作所。グローバルに事業展開する同社はICTの活用にも積極的で、早くからデジタル化を推進してきたという。世界を襲ったコロナ禍に対しても、場所や時間を問わない働き方を可能にする Microsoft Teams (以下、Teams)の活用と、柔軟な働き方を認める人事労務制度規定により、現場の判断で、迅速にテレワーク対応を開始。また今回のテレワーク実施を、自社の企業文化を進化させるための機会と捉え、仕事の取捨選択や評価制度の変革など、さらに歩を進めた新たなチャレンジにも取り組んでいる。

従業員の主体性を尊重し、
柔軟に働ける環境を整備

堀場製作所は1945年京都で創業した、分析・計測システムのリーディング・カンパニーである。創業から75年を経た現在は、グループの従業員が8,000名を超える企業へと成長している。

同社の社是は「おもしろおかしく」。この言葉には、「やりがいをもって仕事に取り組むことで、人生の一番良い時期を過ごす会社での日常を自らの力で彩り、健全で実り多い人生にしてほしい」という創業者である堀場雅夫の願いが込められている。従業員の力を最大限発揮できるよう、個人の主体性を尊重すると同時に、従業員とはいえベンチャースピリットを持ってチャレンジする気概を求める。

堀場製作所の社是「おもしろおかしく」
参考:http://recruit.horiba.com/ism/index.html

例えばボトムアップで従業員が経営層に提案を行う「ブラックジャックプロジェクト」という業務改善活動がある。20年以上続く活動で、2018年には実に年間853ものプロジェクトテーマが登録された。

この他にも、1986年には月に1度の週休3日制度を始める(現在の制度は異なる)など、柔軟な働き方に対する取り組みの歴史は長く、育児休業、介護休業、兼業許可、社内ベンチャー起業支援など従業員が生き生きと働ける環境を早くから整えている。

現場の判断でテレワークを可能にする
制度を2019年に導入

株式会社堀場製作所
ステンドグラスプロジェクト推進室
室長
森口 真希 氏

先進的な制度が多々ある中、この環境を更なるイノベーションや新しいビジネスモデルの創造へとつなげられるかが、堀場製作所が取り組む課題だ。そのためには、ダイバーシティを推進することによって、より一層多様な従業員が活躍できる仕組みを作る必要があると、マネージャー登用研修を受講していた森口真希氏が提案。2014年バーチャル組織として「ステンドグラスプロジェクト」がスタートした。プロジェクト名は、従業員一人ひとりを色も形も大きさも違うステンドグラスの1つひとつのピースになぞらえ、全員で美しい絵を描こうと名付けられた。

当初の状況を森口氏は、「ダイバーシティについてアンケートをとったところ、認知率が2割程度と非常に低かったのです。そこで、まずは他社事例の紹介や、管理職向けセミナー、社員向け講演会の開催など全社に向けた啓発活動を行いました。それだけでは行動は変わらないので、リーダーに向けたコミットメントを伴うワークショップも実施しました」と語っている。約3年の活動期間を経て、2017年にダイバーシティ推進の専任組織「ステンドグラスプロジェクト推進室」が正式に発足。森口氏が室長に就任した。

リーダー向けの研修は一過性のものではなく、直近でもマイクロソフトの小柳津氏の講演をトップ以下役員、管理職向けに実施。講演内容へのアンケート評価は6点満点で平均5.45点と高く、「テレワークが急激に拡がり、変革の方向性について悩んでいるところで管理職全員が聴講できたことは、大変有意義でした。全員で行動していかなければ変革はないという共通認識を持つことができました」と森口氏も評価している。

ステンドグラスプロジェクト推進室では、2023年までに女性採用比率、女性正社員比率を共に30%、女性管理職比率20%、女性役員比率10%、全社有給取得率80%といった目標を掲げ、そのための行動計画を立案推進する一方、さらなる働き方改革を実現するための制度の充実を図ってきた。例えば、2019年1月にスタートした「Good Place勤務制度」は、10年以上前に導入していた従来の在宅勤務制度をより使いやすくしたもの。加えて、ICTの進化により、在宅勤務が手軽にスムーズに行えるようになったことも背景にある。森口氏は、「これまでの在宅勤務は人事担当役員の承認が必要で、利用日数や場所なども細かく規定で定められていたため、限られた職種の制約のある社員のみが利用していました。ステンドグラスプロジェクトの活動の中で、現場からも柔軟な働き方への声が多く上がったこと、また、会社の将来を見据えて必要な制度と判断したことから「Good Place勤務制度」に改定し、必要な時には現場判断ですぐにテレワークができる制度として再導入したのです」と説明する。

堀場製作所のダイバーシティ推進プロジェクト「ステンドグラスプロジェクト」における、女性従業員の成長機会拡充目標

Good Place勤務制度と
Microsoft 365 の両輪でテレワークが実現

一方ICTの活用については、リアルタイムでの情報共有や情報の検索性に課題があった。グローバル化が進む中、これでは迅速な意思決定や業務遂行が妨げられてしまうと考え、全社共通の情報共有基盤を一新することとなった。そこで選ばれたのが Office 365(当時*)である。2018年に Office 365 を導入し、グローバルで利用を開始した。

その後、2019年からは Teams も本格的に全社導入。トップから現場まで、利用範囲が一気に広がり、部署やプロジェクトの情報共有基盤として利用されると同時に、オンライン会議のためのコミュニケーションツールとしても Teams が活用されている。

「製造業なのでリアルな製品開発や生産の価値は変わりませんが、それ以外をどう効率化するかが重要です。グローバルでそれを実践するために以前からICTを積極的に活用してきたので、全社的にデジタル化に対する抵抗はあまりありませんでした」(森口氏)。

Teams を活用し始めてから間もなくの2020年4月、新型コロナウイルス感染拡大によるテレワークシフトが起きる。多くの企業が悩むなか、現場の判断で素早くテレワークを選択できる制度と、Teams を含む Microsoft 365 を利用していたことから、テレワークへの移行はスムーズだった。2020年4月には約1,500名が、同5月1日から15日までには約2,000名がテレワークを実施。その他時差出勤なども組み合わせ、感染リスクを下げながらできる限り業務に支障のない体制を維持することができた。

コロナ禍のように突然の課題に柔軟に対応できる体制が整っていたのは、常に担当者が数歩先を見て社内で声を上げ、改善を積み重ねていたからだ。判断はトップが行うが、提案は現場からという社内風土がもたらした成果である。

多数の社員が Teams を活用して小柳津氏の講演に参加

意思決定がスピードアップし、
若手の発言が増加

現在堀場製作所では、出社しているメンバーとテレワークのメンバー間だけでなく、出社していても各自のデスクから会議に参加するなど、 Teams を活用した会議が当たり前になっている。海外を含めた拠点間の連携も Teams で十分可能な内容もあることがわかり、移動時間の効率化につながると評価が高い。

もちろん、ドキュメントやチャットなど情報を一元化できるので、情報共有にも活躍している。森口氏は、「リアルなコミュニケーションの価値も改めて理解した上で個々の部署やプロジェクトで Teams を活用することで、情報共有がスムーズになりました。ステンドグラスプロジェクトでも各ワーキンググループ活動やステアリングコミッティの情報共有を Teams で行っていますが、社内外のトピックスなど多様な情報のインプットや共有が容易なので、意思決定が速くなったと感じています」と評価している。

もう一つ意外なメリットがあった。会議で若手が積極的に発言するようになったというのだ。森口氏は、「従来通りの集まって行う会議では、どうしても声の大きい人が会議の流れを左右しがちです。それが、オンライン会議では若手の発言が増える傾向にあることがわかりました」と語る。画面で全員が同じように並ぶからなのか、よりフラットな関係性が構築できているようだ。

参加者の顔が並列になる Teams 会議では若手の積極的な発言が増加した

一方で課題も見えてきた。「会社に来なくても成果が出る仕事も明確になり、これまではまず出社する、ということが仕事の目的になっていたのではないか、と気付きました。そして、これに気づくことで、成果とは何か、コミュニケーションとは何かについて皆で考え始めています。一方で、工場などの現場で働くことが主となる部門とテレワークシフトが可能な部門での評価や公平性をどのように考えるのか、という問題や、同じ組織内でも考え方のバラツキがある、など相談も増えています。出社して行っていた業務をそのままテレワークに移行するだけでは生産性は低下するので、仕事の取捨選択が必要だという認識も出てきました」と森口氏。

Teams 活用を通し、社内文化にも大きな変化が生まれた

新しい働き方への取り組みで見えてきたメリットと課題を受け、今後の働き方についてトップとの認識合わせを行い、直近の経営会議で発信。また、意識を変えるだけでなく、行動を促すための評価や人事制度改革を今後も検討していく予定だ。森口氏は、「多様性をビジネスに生かすには、常にアンテナを立て社内にフィードバックし、次世代リーダーを育成していかなければなりません。一歩先を見て仕組みを整えようとしているので、どうしても変化を恐れる力は働きますが、歩み続ければ道はできていくと信じています。これからも変化に強い企業になるため、改革の歩みを止めず進んでいきます」と力強く語った。

*最新の Microsoft 365 プランの名称についてはこちらをご覧ください。

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