コロナ禍によって半ば強制的にテレワークを実施したことにより、今多くの企業の意識が変わろうとしている。コロナ禍を経たニューノーマル時代に向かう今、中小企業の現場を間近に見てどのように変化したのか、今企業が取り組まなければならないことはなにか。企業のテレワーク導入・デジタル推進を、専門家の立場からサポートするネクストリード 代表取締役 小国幸司氏に考えを訊く。

中小企業への
テレワーク普及活動に尽力

ネクストリード 代表取締役 小国幸司氏は、システム開発のエンジニアとしてビジネスキャリアをスタート。その後に日本マイクロソフトでの15年間の勤務を経て、ネクストリードを創業した。

マイクロソフト社在籍時の最後の約5年は、テレワーク推進プロジェクトとの関わりも強かった。東日本大震災を受け、翌2012年から社内の取り組みとしておこなっていた活動を2014年から外部の自治体や企業にも声掛けを行い、テレワーク推進プロジェクトとして拡張、実施した。2015年には実に651社が賛同したというこのプロジェクトで小国氏は、賛同企業に対し「何故賛同したのか」「どういうサービスがあれば役立つのか」など、各社の課題や要望を電話でヒアリングした。

ネクストリード株式会社
代表取締役
小国 幸司 氏

「振り返るとテレワーク推進プロジェクトをリードして得た経験が、その後の人生で非常に重要な基盤となりました。また多くの中小企業のご支援をする中でわかってきたのは、ちょっと背中を押して進むようなことで、実は多くの企業が立ち止まっているということです。私はマイクロソフトに在籍していた15年の間に多くのことを学び、吸収できたと思っています。その経験を生かして日本の中小企業のお手伝いをするべく、自分自身も中小零細企業の経営者として何ができるのか、実証実験のつもりで起業しました」と語る。

2016年に設立したネクストリードのメイン事業は、ICTを適切に活用して成果につなげるための、企業のデジタル推進やマーケティング支援である。テレワーク推進にも特に力を入れており、日本テレワーク協会客員研究員の立場で日本のテレワーク普及・推進活動に取り組む。2018年からは、日本テレワーク協会「中小企業市場テレワーク普及・定着推進部会」の部会長も務め、特に中小企業へのテレワーク普及活動に尽力。さらにテレワーク導入を検討する企業に対し、無料で助言・情報提供を行う総務省の「テレワークマネージャー相談事業」にて、テレワークマネージャーとして各社の相談役を担っている。

ネクストリードが提供するNR Trust。
場所や時間に囚われない柔軟な働き方を採用する企業に向けて、最適なセキュリティを併走型で支援している

テレワーク導入と、
ビジネスの変革を併せて検討する企業が増加

コロナ禍を経て、テレワークに関する相談件数は明らかに増えた。「総務省のテレワークマネージャーとしての活動件数は、以前は月に2件程度でしたが、現在では週に2、3件以上に増えています。加えて、これまではテレワークをするために業務単位での検討から、今は今後変容していく社会に適応していくため、自社たちが変わるための手段の一つとしてテレワークをどう取り入れるかについて、多くの企業が真剣に悩まれています。テレワークができればいいという、短絡的な結論に急がない傾向があると感じています」(小国氏)

本インタビューも、Teams を活用して実施。ビデオ越しで、互いの身振り手振りも見える状態で、小国氏とインタビュアーとの会話は進んだ

「自社の変容を実現することは簡単なことではない」と語る小国氏が、多くの企業に共通してアドバイスしてきたという“秘訣“を教えてくれた。「まず、それぞれの企業が自分たちのビジネスドメインをしっかりと見つめなおすことが必要です。テレワーク自体を目標としてしまうと、いきなりICTツールの選定から入りがちですが、どんなすばらしいICTツールを導入しても、自社に合わなければ意味がありません。自分たちがどういう会社で、どんな働き方を目指しているかから整理して考えた方が定着しやすいし、手戻りも少ない。その際担当者だけでなく、経営者を含め全社的に考えることが重要なのです」(小国氏)

今こそ、組織に合った評価基準を再考するチャンス

テレワーク導入後も、思ったような効果が出ず、定着しない悩みを持つ企業も多い。こうした企業が共通して抱える最大の課題は、従業員の評価についての問題だ。現場社員とマネージメント双方が、評価・成果についての納得感がない中でテレワークが進むと、「制度はあるが、活用が思ったようにいかない」ケースに陥る。一方で、勤務時間から成果主義への評価基準の移行については、多くの企業が試みてはいるものの容易ではない。

しかしそれが今、大きく変わる可能性があると、小国氏は次のように語る。「今回、社員皆が出社できない状況を体験済みであることが、決定的に違います。半ば強制的な事情ではあったものの、実際にテレワークを体験したことにより、反対していた人が良いと思うようになったり、逆に賛成していた人がテレワークの難点を挙げるなど、多くのビジネスパーソンの価値観が揺さぶられたことと思います。全員が実感を持って考えるという機会が訪れている今だからこそ、その直近の体験をベースに社内で意見をぶつけ合うことで、結果的にテレワークを許容できる成果主義へのシフトについて、企業ごとの正解の道筋を見つけることができるのではないかと期待しています」

3つの軸:制約条件、ムダの削減、価値創出で
業務を整理

ネクストリードは、テレワークの導入を検討する企業に対し、じっくり時間をかけてアセスメントを行う(目安は2か月程度、企業課題により前後)。その際重要なのが、①制約条件、②ムダの削減、③価値創出の3つの軸で考えることだ。

どんな会社にも独自の制約条件がある。例えば子会社が、親会社の定める方針やビジネス慣習に合わせるケース等がこれに該当する。まず制約条件(①)を、変えられない前提として最初に計画内に織り込んでおく。その上で、本業の「減らせない業務」、新たな製品や業務の進め方などを考える時間といった「増やしたい業務」、ムダな会議や不必要なチェックなどの「減らしたい業務=ムダな作業」といった観点から業務を仕分ける。こうしてあぶりだしたムダな作業について極力減らし(②)、一方で増やしたい業務=価値創出に取り組む(③)ことで、実現可能な業務配分の変更案に落とし込むことができる。

ICTツールをどう活用するか考える前に、①・②・③の各項目を仕分けることが重要

ここまでの棚卸を経てようやく、ICTツールをどう活用するかを考える。「ICTのツール自体の詳細が分からなくても、自社のビジネスの成果を高めるための方法や答えは、ほとんどの場合社員の方自身が持っています。さらに言えば、その解決策はICT導入ではない、ということもあるかもしれません。いずれにしても、社内で話し合って①・②・③の各項目を掘り起こして仕分けるまでが、それぞれの企業独自の解がある部分です。その後に、ICTを具体的にどう活用するかは、当社のようなところに相談し最適なツールを見つければいいのです」(小国氏)

ICTの選定段階について小国氏は、「無料ツールから Microsoft 365 のような統合型クラウドパッケージまで、複数の選択肢を提案して選んでもらうようにしています。こちらはフラットに提案しているつもりですが、検討を重ね、いろいろなことがわかってくると、多くの会社が Microsoft 365 を選びます。実際 Microsoft 365 はよく練られていて、組織の課題解決に適合すると思います」と語る。

組織のテレワーク度スコアがわかる
「テレワークアセスメント」を実施

現在ネクストリードは、マイクロソフトと協業で「テレワークアセスメントサービス」を提供している。このサービスは、ネクストリードがコンサルティングを行う際に使っていた企業の現状を可視化するツールが基になっている。制度・プロセス、ICTインフラ、カルチャーに関する詳細な質問で構成され、その中からテレワークに関する部分だけ抜き出して簡易にしたものが、「超かんたんテレワーク診断」だ。

「組織のテレワーク度」スコアを算出する『超かんたんテレワーク診断』。15問の設問なのでサクサク答えることができる
参考:https://assess.nextread.co.jp/

回答すると先進性、インフラ、コラボ、社内活用の4項目でテレワークスコアを算出。導入に向けての課題や阻害要因もレーダーチャートで可視化でき、テレワークを進める上での検討資料が手に入る。無料で簡単にできることもあり、サービス開始から2か月で1,800名が利用しているという実績もある。現在はこれを、テレワークに限らない組織の課題を分析できるよう拡張しているところだ。

自ら変わろうと努力する中小企業に、専門家の立場からサポートを続けるネクストリードが掲げるコンセプトは、“仕事をもっと「シンプル」に”。経営リソースが少ない中小企業であっても、セキュアなクラウドサービスなどのICTツールを活用して、本業のバリューを上げることが比較的容易にできる環境が加速度的に整ってきている。最後に小国氏は、「皆様のビジネスの価値を向上するため、あまり難しく考えずシンプルにICTを活用するためのお手伝いをしていきたい」と抱負を語った。

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