AI、RPAなどの導入で進化が続くコンタクトセンター。新型コロナウイルス感染拡大の影響はこの動きをさらに加速し、これまでにない厳しい状況下でも応対品質の向上と、オペレーターやスーパーバイザーの負荷軽減が求められている。先が見えず、追加投資を行いづらい状況下で、コンタクトセンターはどのような機能が求められ、そしてその実現に向けて今、何をなすべきなのか。2020年9月8日に開催されたウェビナー「CX変革2020 ~AIを駆使したニューノーマル時代のコンタクトセンター」から、最新のテクノロジーを活用した、CX最大化への解法を見ていこう。

ニューノーマル時代のコンタクトセンター変革の方向性
求められるのは『CXのハブ』としての役割

最初のテーマは、「コンタクトセンターの現状における課題要件を踏まえた変革の方向性」。アバナード株式会社の播磨 隆弘氏は、目指すべき3つのポイントに「マルチチャネル対応の高度化」「能動的なサービス提供機能」「業務自動化・パーソナライズ」を挙げた。

コンタクトセンター変革の方向性とは?

アバナード株式会社
アドバイザリーサービス ディレクター
播磨 隆弘 氏

播磨氏は「サービスの多様化、高度化にオペレーション業務の効率化と情報連携で対応した上で、コンタクトセンターはこれから、『CX(カスタマーエクスペリエンス)のハブ』として、より積極的かつ能動的な社内への情報提供、販促展開、提案を行うべきです。この先、コンタクトセンターがいかに自らのバリューを示せるかが重要。そのための変革としてセンター内に閉じたこれまでの業務効率化から、一歩踏み出す必要があります。これまでの常識が通じない事態が起きたニューノーマルを、改めて全体像を見直す機会と捉えましょう」と語り、「その上で、必要な施策に応じてテクノロジーの選択肢を検討すべき」と付け加えた。

その理由は「AIやBotなど、テクノロジー主体で導入を行うとチグハグになる」からであり、播磨氏は「まずは全体を俯瞰して捉え、ビッグピクチャを描くことが大切」とした。

日本マイクロソフト株式会社
ビジネスアプリケーション統括本部
第二営業部 ソリューションスペシャリスト
今野 拓哉 氏

これを受けて日本マイクロソフト株式会社の今野 拓哉氏は、「現状、我々に寄せられるご相談の多くはCOVID-19の影響などで稼働が高まる現場オペレーションの維持・管理や業務効率化についてなのですが、これから先、本当に重要になるのは『CXのハブ』としての機能だと捉えています」と同意した上で、その理由を次のように語る。「マルチチャネル化が進み、これまでよりも高度、複雑化するカスタマージャーニーを俯瞰して見ることができるのがコンタクトセンターの特性です。その特性を活かし、顧客接点の各段階の中で得られたさまざまな情報を社内に積極的に発信することで、コンタクトセンターに全社の売上向上への貢献という新しい価値が生まれます」

コンタクトセンターの課題の本質は
「散在するシステムとデータベース」にあり?
Microsoft Dynamics 365 による
課題解決の具体例とは?

続いてのテーマは、「具体的な課題にフォーカスした、課題解決策の提示」だ。自らもコンタクトセンター出身で、多くの現場課題の解決に取り組む日本ビジネスシステムズ株式会社の三田村 国樹氏が、同社に寄せられる相談事項を5つに分類。それぞれに有効な施策例を説明した。

コンタクトセンターに寄せられる相談事項とその解決策

さらに三田村氏は、これらの課題を大きく「オペレーターのストレス軽減」と「オペレーションの最適化」課題に分け、「本質的な課題は、散在するシステムとデータベースにある」と語る。

現状のコンタクトセンターの多くは、応対履歴、モニタリング、レポーティング、通話録音など、チャネルや目的ごとに使用するツールが分かれ、さらに購入履歴や与信管理など外部のデータベースが存在し、シームレスに連携できていない。そのためにオペレーターはストレスを抱え、オペレーションも最適化できない、との指摘だ。

こうした現状を踏まえ、三田村氏はニューノーマル時代のコンタクトセンターに求められること、として①マルチチャネル化 ②顧客情報の見える化 ③コールセンター業務の見える化 を挙げた。

ニューノーマル時代のコンタクトセンターに求められること

日本ビジネスシステムズ株式会社
Dynamics Solution 2部 グループマネージャー
三田村 国樹 氏

引き続き激変するCXと、密を避ける職場環境に対応するためには、在宅勤務も視野に入れた人員配置の最適化が求められ、従来の電話やメールに加えてチャット、SNSへの対応およびデータの結合と集約が必要となる。そこではマルチチャネル化しても全体が把握でき、問い合わせの内容を分析して「インサイト(気づき)」が得られる仕組み作りが欠かせない。

これを受けて、今野氏が示すのが「お客様といつでも繋がっているサービス”Always On Service”」という、マイクロソフトのコンセプトだ。

お客様といつでも繋がっているサービス“Always On Service”

このコンセプトは、マルチチャネル化を支える「OmniChannel for Customer Service」と、顧客情報の見える化およびコールセンター業務の見える化を実現する「Dynamics 365 Customer Insights」から構成されている。先に三田村氏が挙げた「散在するシステムとデータベース」という課題に対する解として、今野氏は「CDM*と呼ばれる共通データ基盤を提供できるのが、マイクロソフトの強み」と強調した。

*CDM:Dynamics 365 の中核となる共通データモデル(Common Data Model)。すべてのアプリケーションとビジネス プロセスで統合データの整合性を実現する。

さらに三田村氏は、これまでの課題に対する解決のキーワードとして「with Package」「with AI」「with you」の3つを挙げ、Dynamics 365 による課題解決効果を、具体例を示して解説した。

「with Package」は、既にあるパッケージ品を自社にどうあてはめられるか、という考え方。システムを業務に合わせてカスタマイズするこれまでのやり方ではなく、パッケージに合わせて業務を標準化するという方向性だ。例えば Dynamics 365 を活用するとメール、チャット、SNS、電話などの情報が一元管理でき、オペレーターは自身のダッシュボードで仕掛り、完了案件をすぐに把握できる。さらに Dynamics 365 では、タイトルを入力すると問い合わせ内容に関連するナレッジが自動で参照されレコメンドが提供される。SLAにも準拠し、着台までの時間短縮およびESとCSの向上につながるのだ。

2つ目の「with AI」は、文字通りAIの活用。三田村氏は「AIにも、自身がロジックを持つ人のような『強めのAI』、ブラッシュアップが必要な『弱めのAI』の2種類ある」と前置きしたうえで、具体的なAI活用効果を紹介した。

Azure Cognitive Service で通話音声をリアルタイムにテキスト化し、それを Dynamics 365 に連携することで関連するナレッジがレコメンドされる。さらにはトークスクリプトも自動チェックされることで、応対に不慣れなオペレーターでも伝え忘れなどが防げる。

通話音声のテキスト化はモニタリングを容易にし、ポイントを斜め読みすることで引継ぎ時間の短縮につながることに加え、必ず伝えなければならないキーワードを自動でポップアップすることにより、コンプライアンスの強化にもつながるのだ。

また、Dynamics 365 には対応満足度をアンケートで把握できる「Customer Voice」、オペレーターのパフォーマンスを自動的に分析する「Customer Service Insight」という機能がある。顧客の声(VOC)をいかにして取り込むかは今、非常に注目度が高い項目だが、「Customer Voice」は対応後アンケートを速やかに実施でき、満足度の数字化が実現する。また、「Customer Service Insight」は入力情報をリアルタイムに分析、トピックごとの判断情報をAIがレポートしてくれることで、スーパーバイザーの業務負荷を軽減しながら、継続した業務改善を実現する。

さらにもう一つ、スーパーバイザーを悩ませる業務負荷として煩雑なレポート作成がある。この点も、Dynamics 365 には各社固有のKPI状況をリアルタイムに可視化して、Power BI を用いて高度な分析、レポート自動生成を行う機能がある。

BtoBマーケティングのインサイドセールスがデジタルセールスと呼ばれるようになるなど、今後、あらゆるポジションでデジタルを使いこなすスキルが求められるようになる。それはコンタクトセンターにおいても例外ではなく、それこそが3つ目の「with you」が意味すること、と三田村氏は結んだ。

ニューノーマル時代のカスタマーケアは、
“Planned“から“Responsive“へ
AIの本質的な役割は新しいインサイト、気づきを得ること

最後のセッションは、「ニューノーマル時代のコンタクトセンターの変革をどう考えるのか?」。播磨氏は、これからのカスタマーケアは「Planned」から「Responsive」へ変わる、と語る。

カスタマーケアは“Planned“から“Responsive“へ

あらかじめ決められた「Plan」ありきで効率化のみを目指したマニュアル志向の応対では、顧客への共感、理解には至らない。データやAIを活用したクリアなコミュニケーション、プロアクティブな応対、そして短サイクルでの判断や意思決定により顧客に寄り添う「Responsive」こそが、顧客への共感や深い理解が得られるという変化だ。もちろん、ソーシャルディスタンスを意識したエンゲージメントも欠かせないだろう。

播磨氏はこうした「Responsive」な仕掛けづくりのポイントを「効果は全体の波及とコストのバランスで設定」「走りながら新しい機能配置を考える」「データ検証・反映し続ける」こと、と語る。そしてソリューションの焦点として「オペレーションに活かせるシーンごとのマイクロセグメント状況を可視化し、データに基づいたCX最適化」を目指すべく、AIを活用したResponsiveな仕掛けづくりが必要とした。

続いて播磨氏は、こうしたマイクロセグメントをリアルタイムに仕分けし、適切なアクション検討に移るための同社のグローバルでの取り組みとして「コールアナリティックス」を紹介。オペレーターのパフォーマンス向上のための明確な方向性を示すコーチングをAIが行う、“Responsive”なカスタマーケアを実現するソリューションだ。

これを受けて今野氏は、「まだまだ感情分析は静的な分析が多いが、顧客の感情をリアルタイムに数値化して分析、改善施策にもつなげる取り組みはマイクロソフトの米国本社ではすでに始まっている」と明かし、「AIの本質的な役割は新しいインサイト、気づきを得ることです。日本企業は元からきめ細かな対応は優れているので、今後はAIを活用してさらに高めていくことで、半歩先を進んだ”寄り添い”が可能になるでしょう」と語った。

顧客を起点に企業を変えていくために

今回の各者のコメントを受けて、ファシリテーターを務めた日経クロストレンド発行人の杉本 昭彦氏は「コンタクトセンターには、これからCXのハブとしての役割が期待されるということが良く理解できました。そしてそれは、顧客を起点に企業を変えていくコーポレートトランスフォーメーションのけん引役としての期待、と言い換えることもできるでしょう。その実現に向けて今、何をなすべきなのかについては、最新テクノロジーである Dynamics 365 の有効性を理解し、使いこなすことが近道と言えると思います。急激な環境変化で稼働の高まるコンタクトセンターにおいて、業務課題の解消という点でスモールスタートも重要です。これまでの常識が通用しないニューノーマルに向けての対応として、早急にPoCを行い、アジャイルなプロジェクトを実行しましょう」と総括した。

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