これまで営業の現場では、顧客やチームメンバーと実際に会って会議や商談を行うことが当たり前だった。その当たり前がコロナ禍により崩れ去ったことで、大きな混乱が起きた。本稿では、自社のソリューションを活用し変化に迅速に対応して業績を上げるマイクロソフトと、Microsoftソリューションを活用して顧客のデジタル変革や働き方改革をサポートしてきたシーイーシーに取材。同社が手掛けたあいおいニッセイ同和損保の事例を含め、デジタル変革の実践、活用、定着のための極意を聞いた。

日本の営業現場がリモートワークに適応しにくい3つの理由

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、世界的に働き方が大きく変化している。リモートワークに上手く適応し業績を上げる企業がある一方で、なかなか適応できない企業もある。それは日本企業に多く見られる現象だ。米国の調査によると、職場勤務と在宅勤務を比較した結果、8割以上の人が効率が変わらないか在宅でより効率的になったと回答(注1)。一方日本での同じような調査結果では、8割以上の人が効率が低下したと回答するという真逆の結果となっている(注2)

注1:Jose Maria Barrero, Nicholas Bloom, Steven J Davis "Why Working From Home Will Stick"(2020年12月)
注2:森川正之「新型コロナと在宅勤務の生産性:企業サーベイに基づく外観」(2020年10月)

上:米国での調査結果 下:日本での調査結果
引用:コロナ禍の経済への影響に関する基礎データ
内閣官房 成長戦略会議事務局
経済産業省 経済産業政策局

日本マイクロソフト株式会社
マーケティング&オペレーションズ部門
ビジネスアプリケーション事業本部
プロダクトマーケティングマネージャー
サンタガタ 麻美子 氏

ではなぜ日本企業でリモートワークの生産性が低下したのだろうか。日本マイクロソフト ビジネスアプリケーション事業本部のサンタガタ麻美子氏は、特に旧来、対面を基本としてきた営業の現場での課題として、次の3つを挙げる。1つ目に環境がないという問題だ。しかし、これはコロナ禍で急激にキャッチアップされていった。環境はある程度整備されたものの、旧来通りのコミュニケーションをWeb会議に移し替えただけでは、円滑なチームプレイは実現しない。このコミュニケーションのやり方が2つ目の問題だ。サンタガタ氏は、「当社でも最初から上手くいったわけではなく、上司と部下との1on1ミーティングを意識的に増やしたり、チャットをフル活用するなど、かなり工夫しました」と語る。

近年営業活動は複雑化し、顧客の意思決定者、社内外の関係者も増える傾向にある。つまりどんなに優秀な人でも1人で成果を上げることは難しい。チームプレイがますます重要になっており、そのキモはコミュニケーションだ。「リモートワークでコミュニケーションが上手くいかないと孤立しがちです。リモートワークで成果を上げるには、コミュニケーションに尽きます」(サンタガタ氏)。

株式会社シーイーシー
サービスインテグレーションビジネスグループ
営業部
小枝 悠真 氏

そして、3つ目が人材育成である。これまで日本企業では、先輩の仕事の仕方を見せて学ばせる育成方法が主流だった。しかし、リモートで行うのは至難の業だ。そのため、リモートでコーチングができるコミュニケーションを実現しなければならない。そのポイントをサンタガタ氏は次のように語る。「まず営業活動がすべてデジタル化されている前提で、データを見ながら、数字に基づいて議論できるようになっていることが重要です」。それができれば、新人でも営業活動の進め方や判断基準などをリモートでも学ぶことができる。とはいえ、情報集約には困難も伴う。社員が情報を入力しなければ、箱だけ入れても意味はない。シーイーシー 営業部の小枝悠真氏は、「営業活動のデジタル化、データ化においては、営業支援システム(SFA)が有効です。ただ、SFAは定着させるのが難しいという課題があります。情報を入力しやすい仕組みが求められます」と指摘する。

営業活動の
デジタル化・コミュニケーション強化を迅速に実現

このような営業部門の課題を解決するソリューションとして、マイクロソフトが提供しているのが「Microsoft Dynamics 365」である。Dynamics 365 は、業務に必要なデータやプロセスを統合的に管理し、業務の生産性、パフォーマンスを高めることを目的にクラウド上に構築されたAI搭載のビジネスアプリケーション群だ。営業部門向けのDynamics 365 Salesは、デジタルファーストで設計されており、デジタルのワークスペース上に営業活動に必要な機能がすべて実装されているため、デジタル営業を実現するのに最適なツールだ。使い慣れた Microsoft Office 製品と同じような操作性なので、誰でもすぐに使いこなせ、社内への展開も容易。Outlook のカレンダーやメールなどとシームレスに連携し、同一画面上でチームメンバーとのコミュニケーションや予定の確認もできる。いろいろなアプリケーションを立ち上げる必要がなく、非常に効率的だ。

また、データドリブンなので、特定の顧客や案件に関するデータをダッシュボードで一覧可能。これまでのような勘や経験ではなく、データに基づく意思決定が可能になる。AIも積極的に活用しており、繰り返し作業の自動化や次の打ち手のアドバイスも可能だ。「例えば、お客様と会話をしながらメモを取れば、それを読み取って次にすべきアクションを自動的にリストアップしてくれます。また、活動の確度を高めるためのアドバイスを自動生成することもできます」(サンタガタ氏)。

データ連携機能も充実しており、拡張性も高い。Microsoft 365 を始めマイクロソフトの各種サービスとシームレスに連携できる。ローコードでアプリケーションを開発できる Power Apps とも連携できるので、自社の業務にカスタマイズした独自アプリケーションを容易に構築・連携可能。サービスの拡張に合わせたシステム変更も容易に実現する。その中で特に注力しているのが、Microsoft Teams との連携だ。「営業活動の生産性向上には、社内外の関係者との頻繁かつ正確なコミュニケーションが重要で、その実現に向けて Dynamics 365 と Teams の連携を強化しています」(サンタガタ氏)。

パッケージだからこその導入の容易さもポイントだ。そのまま利用するのであれば即日使い始められる。とはいえ、SFAはほとんどの場合、自社の業務に合わせたカスタマイズが必要だ。その手間を軽減するサービスとしてシーイーシーは各種テンプレートを提供。不動産業、情報通信、医療機器、製造業など業種に特化したものと、人脈創出、見積書作成、ルートセールスなど業務に特化したテンプレートを用意している。「ゼロからカスタマイズすると半年くらいかかることもありますが、テンプレートを活用することでその期間を2分の1、3分の1に縮めることができます」(小枝氏)。

Dynamics 365 で効率化と
ペーパーレスに着手したあいおいニッセイ同和損保

損害保険大手のあいおいニッセイ同和損保は、シーイーシーの協力のもと、Dynamics 365を導入した。同社は従来紙ベースでの業務を基本としてきたが、2018年デジタル化に舵を切り、2021年までに138万時間の余力創出、年間1200トンの紙削減という目標を掲げ、ペーパーレスやシステム連携強化による二重入力を防ぐといった取り組みを始めた。その際、社内の業務支援システムのアプリケーション基盤として Dynamics 365 を、RPAシステムなどと併せて導入した。

この取り組みを加速させたのが、2018年に多発した災害である。大型の台風で問い合わせが急増したのだ。その時はスタッフをバックアップセンターに集め、膨大な書類の中から問い合わせに合致する書類を探す作業を行ったが、次回は対応しきれないかもしれないという危機感があった。そこで2019年、なんとしても台風シーズンの前までにデジタル化を実現するという命題の元、Dynamics 365 を活用して保険金支払い業務のワークフローを構築。バックアップセンターに来なくても Dynamics 365 上でデータが見える状態を実現した。

株式会社シーイーシー
サービスインテグレーションビジネスグループ
エンタープライズサービス事業部 マイクロソフトサービス部
主査
馬本 法幸 氏

営業分野でも、同じく Dynamics 365 を活用したSFA刷新プロジェクトに取り組んでおり、本格的に運用が開始した2020年度から、様々なデータを蓄積してきた。2021年4月から、Teams に連携することで、業務によってさまざまなアプリケーションを行き来するユーザの手間の削減や、単純にデータを可視化して共有するだけでなく、営業担当者の育成指導にも活用している。シーイーシー マイクロソフトサービス部の馬本法幸氏は、「これまで蓄積された営業ノウハウを、システムに独自ロジックとして組込み、SFAに案件の登録・進捗状況の入力により自動的に Teams へその案件に関連する有益情報を通知し、次にやるべき活動を提案しています。今後、 Power BI を活用してデータ分析と改善を繰り返すことで、導き出されるノウハウを利用し提案の精度を高める取り組みを進めていく予定です」と説明する。

Dynamics 365 と Teams を
シームレスに連携し生産性向上に寄与

株式会社シーイーシー
サービスインテグレーションビジネスグループ
エンタープライズサービス事業部 マイクロソフトサービス部
主任
野口 晋祐 氏

シーイーシーは、このような取り組みを通じて蓄積したシステム構築ノウハウと顧客ニーズを組み合わせ、「Teams 連携ソリューション」を提供。使い慣れた Teams 上でDynamics 365 の機能を利用できるようにした。シーイーシー マイクロソフトサービス部の野口晋祐氏は、「例えば営業担当者が営業報告を上げると、Teams 上で上司や同僚に通知が届き、チャットなどを使ってアドバイスを受けたり提案に向けた意見交換等のコミュニケーションが手軽に、そしてスピーディにできるようになります。都度 Dynamics 365 を起動して確認し、Outlook でメールをチェックするといった面倒がありません。承認機能も付いているので、Teams だけで業務を回すことが可能になります」と語る。

コロナ禍が収束したとしても、デジタル変革の気運は減速することはない。特にリモートワークによる働き方改革は若い世代を中心に支持を集めており、コロナ以前の働き方に固執する組織には未来がないといえるだろう。営業の現場でも、もはや付け焼刃ではなく、本格的なデジタル化による働き方改革に取り組むことが求められる。その選択肢として、営業に必要な機能を網羅し、拡張性が高く、誰でも使いやすい Dynamics 365 は、最有力候補といえる。

Teams 連携ソリューションイメージ

最後にサンタガタ氏は、「コロナ禍でこれまでの課題が浮き彫りになった日本の営業組織のデジタル化と生産性向上に、シーイーシーを始めとするパートナーと一緒になって寄与していきたい」と語った。

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