三井デザインテックがイギリスのホテレスショー「Sleep Set」で提案したデザイン。大きく開いた窓が内外をシームレスに繋ぐ。部屋の中央には木製の浴槽を配置している。

ミレニアル世代の価値観の浸透、デジタル技術の進歩は、デザインにも変化をもたらしている。住居とホテル、オフィスという独立していた場所が融合し、新たな価値を持つ空間が提案されているのだ。その“今”を、世界最大規模の家具見本市ミラノサローネの動向や三井デザインテックの話から探る。

夕刻、高層ビル街を一人のビジネスマンが歩いている。電車で帰宅するところだ。郊外の駅に降りて辿り着いた先は森の中。落ち葉を踏みしめ、木々の間を縫って行くと、そこに現れるのは、滝のそばで食卓を囲むダイニングや、岩場の間にソファが置かれたリビング。人々は屋根のない山中でスタイリッシュな家具を備え、自然環境とじかに繋がって暮らしている。豊かな緑につつまれた天蓋ベッドで妻と爽やかな朝を迎えた男性は、娘と一緒に森を抜け都会のオフィスへ向かう──。

これは世界最大の家具見本市「ミラノサローネ」で、2017年に上映されたコンセプトムービー『DeLightFuL』の描く情景だ。

「近年のインテリアトレンドを鮮やかに象徴しています」と語るのは、10年以上にわたりミラノサローネを視察している三井デザインテックのデザインマネジメント部長、見月伸一氏。「すがすがしい自然との一体感、香りや手触りといった五感への刺激を通じて心身のリラクゼーションやレクリエーション体験を求める社会的な需要が高まっています。それにともない、インテリアデザインでも、素朴さや柔らかさによって心地良い安らぎを促すような表現が注目を集めているのです」。

日本独自の工法「なぐり仕上げ」が施された浴槽。こうした和のデザインも、ヨーロッパの人々にとって新たな発見だった。

見月氏が訪れた「ミラノサローネ2018」の「PAOLALENTI」の様子。家具からアウトドアとインドアの境がなくなってきている潮流が見られる。

このトレンドは現在も続いている。具体的なアイテムとしては、インドアにもアウトドアにも使える、風雨で傷まない耐候性を備えたハイテク素材のラグジュアリーな家具を富裕層に訴求している。こうしたアウトドア家具の登場は、室内外の境界を曖昧にし、自然との心地良い一体感を得ることに寄与している。

ミラノサローネでは木質系のデザインも目立つようになってきた。これも天然素材に魅かれるリラックス志向と結びつく。木の手触りや香りがもたらす安らぎが求められているのだ。

また、三井デザインテックは2016年にロンドンで開催された、未来のホテルの客室空間を提案するデザインコンペティション「Sleep Set」に日本企業として初めて招かれ、グランプリに肉薄する審査員特別賞を受賞した。主催者から選出された企業が与えられたテーマをもとにデザインを考案するこのイベントで、同社に与えられたテーマは “Established”。トラディショナルでハイエンドな客層をメインターゲットにしたホテルの新しい客室コンセプトの提案が求められた。

ここで表現されたのも、最近のインテリアトレンドを牽引するリラックス志向にほかならない。ハイクラスの客層に訴求するのは物質的な豪華さではなく精神的な豊かさ──自然を感じるリラクゼーションや禅的なマインドフルネス──との仮説を立て、内面と向き合える静謐なイメージの客室を造形。縁なし畳や盆栽、坪庭に張り出した木の浴槽など、心安らぐ「和」の風合いをホテルの「洋」の空間に展開した。浴槽には、日本独自の工法「なぐり仕上げ」がヨーロッパの伝統職人によって施された。また、水のせせらぎ、鳥のさえずり、草木の香り、陰影深いアンビエントな照明など、五感に働きかけるコーディネイトを徹底した。

実際の空間を体験した来場者にも大変な人気を呼んだという。「こういう世界観の空間に浸りたいと思っていた、こんな家に住みたい、と言う方もいらしゃいました」(見月氏)。

シームレスな融合空間

近年のデザインの潮流を語る三井デザインテックのデザインマネジメント部長、見月伸一氏。

ミラノサローネのコンセプトムービーでは自然環境と居住空間が融合していた。Sleep Setのデザインコンペで表現されたのは、ホテルという西洋文化と日本的な精神や技術の出会いだ。しかも「こんな家に住みたい」との来場者の感想がいみじくも語っているように、ホテルと住居の境界さえ飛び越えて混じり合う価値を実現した。

このような空間設計のコンセプトを三井デザインテックでは「クロスオーバーデザイン」というキーワードで定義している。Sleep Setでも、このクロスオーバーデザインの考え方が主催者に注目されたことが受賞の一因となった。それはライフスタイルの変化の潮流に呼応したものだ。デジタルデバイスの進歩は、いつでもどこでも思い立ったら公私の隔てなくアクションを起こせるライフスタイルを可能にした。

時間や場所の制約から解放されると、おのずと人々の価値観も変わる。それに応じて生活や仕事の環境に求めるクオリティも異なってくるに違いない。

「10~20年前なら仕事はオフィスでしかできませんでした」と見月氏は語る。「今はホテルやカフェ、自宅でも仕事ができます。すると、自由な発想を生み出すクリエイティブな環境が、オフィスだけでなくホテルや住居にも求められるでしょう。それは知的・感性的な刺激を促す仕掛けであり、一方でリラックスを促す要素でもあります」。

生活も仕事もシームレスに繋がり始めているからこそ「空間デザインにも、ヒト・モノ・コトにおけるさまざまな融合を実現したクロスオーバーの要素が求められている」と見月氏は指摘する。「とりわけ、ホテルでも緊張感のある豪華さではなく肩肘張らず自宅でくつろいでいるようなリラックス感を醸し出したり、リゾートホテルの贅沢なアメニティ空間の要素をラグジュアリーな邸宅に持ち込んだり、ホテルと住宅のクロスオーバーが進んでいます」。

働き方改革ではワーク・ライフ・バランスが重視されてきた。しかしこれからは「ワーク・ライフ・ミックス」にシフトするのかもしれない。仕事と生活をきっちり分けるのではなく、五月雨式に混ざり合う。一日のタイムスケジュールが「仕事→遊び→仕事→私用→仕事→くつろぎ」とクロスオーバーする。生活やくつろぎの中から浮かんだアイデアがそのまま仕事に活かされることもあるだろう。

こうしたワーク・ライフ・ミックスによるフィードバックは、生産性や効率性だけでは達成できない(つまりAIに取って代わられない)創造性を要求される事業には欠かせない。さらには、子育てしながら仕事を続けるのにもふさわしい働き方といえる。

望ましいワーク・ライフ・ミックスも促すのがクロスオーバーデザインによる住まいづくりにほかならない。

「ミラノサローネ2018」で見月氏が見てきた展示の数々。「B&B ITALIA」

「ミラノサローネ2018」で見月氏が見てきた展示の数々。「moooi」

「ミラノサローネ2018」で見月氏が見てきた展示の数々。「baxter」

「ミラノサローネ2018」で見月氏が見てきた展示の数々。「moooi」

「ミラノサローネ2018」で見月氏が見てきた展示の数々。「HERMES」

「ミラノサローネ2018」で見月氏が見てきた展示の数々。「PAOLA LENTI」

「ミラノサローネ2018」で見月氏が見てきた展示の数々。「ARMANI / CASA」

「ミラノサローネ2018」で見月氏が見てきた展示の数々。「Dada」。アウトドア対応の家具や、木質感のあるものが目立った。

ミレニアルが価値観を牽引

クロスオーバーデザインが求められる背景として見月氏が特に着目するのは、1980年代から90年代半ばまでに生まれたミレニアル世代の価値観だ。「物心ついた時から当たり前にデジタルデバイスを使いこなし、有り余るモノに囲まれて育ったこの世代は、モノよりコト体験のほうに魅かれます。また、デジタルテクノロジーによる効率性、利便性を享受すればするほど、逆に人間の本質的に求める情緒や、工業製品にはないクラフト感を尊重し、自然環境に安らぎを求めるアナログ的な願望が強くなっているのです」。

インスタントカメラの流行やアナログレコードの復活、コーヒーブーム、屋外フェスやキャンプの人気などは、それを象徴する現象だろう。「ミレニアル世代の価値観が社会を牽引していく時代になりました」と見月氏は続ける。「その空間にいることで、自分らしい体験を楽しむ。人との繋がり、ナチュラルなぬくもりを求め、活力を取り戻す──こうした要素を充足させるのもクロスオーバーデザインの目指すところです。特に限りある時間を有効に活用することに価値を見出すエグゼグティブにとっては、常に外の世界と繋がって感度を高く保てる空間が大切。リラックスしつつクリエイティブが生まれる環境が求められるに違いありません」。

三井ホーム・プレミアムの住空間も、こうした価値観を大切にしている。例えば、駒沢や芦屋ではウッドサッシを開放すれば、ダイニングからガーデンラウンジへとフラットに続く広大な半戸外空間が誕生し、緑と陽光を感じながら大勢のゲストと集える。あるいは、自然の木目が持つ色のばらつきをあえて残した床材や壁材のデザイン。ウォールナット材のグラデーションを基調に、ナラ材、チェリー材などの自然の色合いを活かしてコーディネイトしている。

時代を先取りし、未来の新しい価値を自ら発信してみせるのがハイエンドなライフスタイルだとしたら、クロスオーバーデザインは、その実現に欠かせない住環境を提供するだろう。

グレートルームからガーデンラウンジを見る。〈芦屋〉

屋上スペース「スカイガーデン」。近年のトレンドであるアウトドア対応の家具が置かれ、ラグジュアリーな雰囲気を引き立てる。〈芦屋〉

ゲスト用シャワールーム。ホテルの一室と見まごうデザインで、ゲストに心からのくつろぎを提供する。〈駒沢〉

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三井ホーム株式会社

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