日経ビジネス電子版 Special

先進の食品リサイクル技術で「廃棄ごみ削減」と「地域貢献」を実現 ~地域食品資源循環ソリューション~

先進の食品リサイクル技術で「廃棄ごみ削減」と「地域貢献」を実現 ~地域食品資源循環ソリューション~

株式会社マルハ物産 企業概要

1958年(昭和33年)創業のレンコン加工のパイオニア企業。
農水産物加工食品の輸入、製造、販売および缶詰類の製造、販売を手がける。茨城、徳島の二大レンコン産地に拠点を構え、生産から加工・販売まで一貫した体制を整備。

公式サイトはこちら

株式会社マルハ物産

食品リサイクルの
「新たなスタイル」に着目

徳島県・松茂町に本社を置く株式会社マルハ物産は、レンコンなど農産物加工の工程で発生する残渣(皮、節などの端材)の処理に長年知恵を絞ってきた。「廃棄物を減らしつつコストを抑え、いかに生産性を高めるか」は、食品業界に携わる関係者共通のテーマでもある。同社経営管理部部長の大鋸史郎氏は次のように語る。「当社の主力商品であるレンコン加工品は、その加工工程で残渣処理がどうしても必要になります。従来は廃棄物として専門業者に回収・処理を委託してきましたが、そのコストは無視できないレベルに達しており、環境保全の観点からも何とかできないかと考えていました」。

そうしたなか、大鋸氏はある展示会でNTTフィールドテクノが出展していた「地域食品資源循環ソリューション」に注目する。本ソリューションは食品残渣を専用の発酵分解装置に投入し、回収してリサイクルセンターで堆肥を生産。つくられた堆肥を農家に提供するまでの一連の流れを低コストで構築するという、食品リサイクルの新しい形として提案されていた。マルハ物産では過去にも圧搾処理した残渣を県内の畜産飼料メーカーに提供することも行っていたことはあったが、加工や運搬の手間や圧搾機械の管理コストがかかることから継続を断念した経緯があった。
「初めて見たときは本当に使える仕組みなのだろうかと思いました」と大鋸氏はその本音を明かす。

株式会社マルハ物産 大鋸 史郎 氏

株式会社マルハ物産
経営管理部 部長

大鋸 史郎

導入の決め手は
「扱いやすさ」

「地域食品資源循環ソリューション」は、装置のレンタルとメンテナンスを行うNTTフィールドテクノと、リサイクルセンターを運営する楽しい株式会社の提携で2019年4月からスタートした新事業だ。 発酵分解装置は楽しい株式会社が開発した「フォースターズ」。残渣を投入すると微生物のちからにより発酵分解を行い、約24時間で堆肥原料となる一次発酵物が出来上がる。ステンレス製の本体はシンプルな構造で、嫌な臭いはほとんど発生しない。装置内の状況(残渣量・発酵分解の状況など)はリアルタイムでクラウドシステムに送信され、スマートフォンやタブレットでいつでもチェックすることが可能になっている。一次発酵物はリサイクルセンターでの工程を経て完熟堆肥化され、土壌改良材として契約農家や農協、農業法人に提供される。

導入にあたって重視した点として、大鋸氏は「扱いやすさ」を挙げる。「当社の従業員はベテランだけでなく、新人や外国人の技能実習生、障害者の方といった様々な方々がおります。操作が複雑だとせっかく導入しても活用は望めません。私たちは残渣を投入するだけで作業が完了するため、経験の浅い社員でも無理なく扱えることが導入の決め手になりました」

発酵分解装置「フォースターズ」
装置上部にある投入口から残渣を入れる

食品残渣を処理する発酵分解装置「フォースターズ」。装置上部にある投入口から残渣を入れるだけで作業は完了。
微生物のちからにより発酵分解処理を行ってくれる。

地元農家への堆肥提供で
地域社会に貢献

マルハ物産では本社工場の一角に装置を設置し、2020年1月から「地域食品資源循環ソリューション」の運用を開始した。導入効果について大鋸氏は次のように語る。「操作はきわめてシンプルで、従業員に負担がかからないのはメリットです。また、心配していた装置の動作音や臭いもほとんど気にならず、快適に使えています。いままでは残渣を“ゴミ”と捉えていたせいか、テープなど細かなビニール片が混ざっていてもとくに気にすることはありませんでした。しかし、堆肥原料をつくるとなると残渣以外のものを混ぜてはならないため、投入する前に残渣の内容は充分チェックする必要があります。今後は“残渣は堆肥になる大切な商品”という認識を高めたいと思います」

従来の食品廃棄物処理コストとの比較では、本リサイクル事業の活用によって年間20~30%程度の削減が可能とされている。「ゴミを減らして環境を守りつつ、利益を増やす」という、これまで実現が難しかった課題の解決に向けた大きな第一歩といえるだろう。

同社は設立以来、地域社会への貢献を経営理念の中心に据えている。残渣からつくられた堆肥が地元農家に提供され、そこで生産された野菜を再び加工するという理想的な食品リサイクルの実現をめざし、さらに創意工夫を重ねていく計画だ。

まとめ

「リサイクル=高コスト」
の意識を変革

食品ロスの話題がクローズアップされるなか、廃棄物削減とともに食品関連企業の担当者を悩ませているのがコストの問題。環境への配慮は当然だが、その負担がビジネスに悪影響を及ぼす事態は避けなければならない。「地域食品資源循環ソリューション」は高品質の堆肥を生産するとともに、地域内で食品資源循環コミュニティを構築するという多様な役割を担う。

「捨てる」から「活用」へ、さらには「地域社会への貢献」と、新時代のリサイクルを提案するユニークな試みとして注目されている。

「捨てる」から「活用」へ

地域食品資源循環ソリューションについてもっと詳しく NTTフィールドテクノ

協力/株式会社NTTフィールドテクノ

  1. 1
  2. 2