テレワーク×派遣・副業
リクルートのケーススタディに見る
一人ひとりの声に寄り添うこと
から始まる働き方改革

「働き方改革」という言葉が浸透して久しい。そのひとつとして国が旗振り役となって進めているのが、在宅・遠隔での業務を推進するテレワークだ。IT技術を活用することで場所や時間の制約がなくなるため、生活スタイルに合わせて働き方を抜本的に変えられる可能性がある。

働き方改革でテレワーク導入は進むのか

今夏に迫った東京2020オリンピック・パラリンピック。首都圏の交通混雑緩和のためにテレワーク導入に拍車がかかるのではと言われているが、それ以前に、かつてないほど働き手の生活は、多様化・複雑化しており、企業の変革はまったなしの状況となっている。そうした中、優秀な人材の確保や活躍支援、それぞれの事情に応じた働き方を受け入れるためテレワーク等の施策を導入、成功している企業もある。「テレワーク×派遣スタッフ」「テレワーク×副業」の2つの切り口で、実例を紹介する。

CASE

1

がん治療と仕事の両立。
テレワークで派遣スタッフとして働く

テレワークは正社員に限ったことではない。リクルートスタッフィングは「2020年のトレンド予測」で、派遣先での勤務と在宅勤務を組み合わせることで派遣スタッフが活躍し始めているという兆しを「出勤オフ派遣」と名付け、今後広がっていくのではないかと発表した。

山本美智子氏

がん治療中、オフィスへの通勤が難しい体調の時にテレワークを導入することで就業を継続できたと話す。「在宅勤務により体力を消耗せず、出勤時には同僚と一緒に働くことで自分が必要とされていると実感できます」

「正社員として編集や翻訳の仕事をしていましたが、2011年の震災を機に人生観に変化があり、働き方を見直して派遣スタッフに。人生の最終段階にある方をサポートする人材を育成する事業に関わることになり、とてもやりがいを感じていました」

そう話す山本美智子氏が、さらに働き方を考えるきっかけになったのは自身の病気だった。「1年くらい前に乳がんが判明しました。手術後、3カ月間に渡って抗がん剤の投与を行うことになりましたが、通院治療なので、その間も仕事は続けるつもりでした。ところが、実際に治療が始まってみると想像以上に体調が悪くなり、通勤することが難しい状態でした」(山本氏)

それでも、山本氏は就業の継続を希望した。治療にお金がかかるなかで収入が減るのは大きなストレスの要因にもなる。

「病気になって人から言われて一番傷ついたのは、『治療に専念してくださいね』という言葉でした。私の体を気遣ってくれていることは分かっていても、ひとり暮らしで治療に専念できる環境は整っていませんでした。でも、派遣会社であるリクルートスタッフィングの方も派遣先の上長も『山本さんはどうしたいですか?』と、真っ先に私の気持ちを聞いてくれました。それは、本当に嬉しかったです」(山本氏)

病気が判明する前から山本氏の担当をしていたのが、リクルートスタッフィングの大原康嗣氏。「働き続けたい」という本人の希望を受け、まだあまり導入例がないテレワークを活用しての派遣継続を実現した。

大原康嗣氏

株式会社リクルートスタッフィング 港営業ユニット港2グループ

「病気になったから契約を終了するという考えは、頭の中にいっさいありませんでした。すぐに山本さんに会いに行き、話をお聞きするなかで、ご本人の思いに寄り添うということが担当営業として一番大事だと感じました。派遣先からも『治療を最優先で、できる範囲で継続してほしい』という要望をいただいたので、両者の希望を叶えるにはどうしたらいいのかを考え、テレワークをご提案しました。派遣スタッフのテレワークは私の経験上でも初めてでしたが、派遣先のご担当者様と山本さんの信頼関係が強かったことも後押しし、実現に向けてスムーズに進めることができました」(大原氏)

その結果、山本氏は治療と仕事の両立が可能になり、無理なく体調を回復することができたという。

「朝8時の業務開始までに出社しようと思うと7時前に家を出なくてはならず、駅まで10分歩くだけで体力を使い果たしてしまうことも。在宅勤務が可能になったことで、7時過ぎまで寝ていられる上に、お昼休憩には横になり、体力を回復させることもできます。必要最低限しかできずにいた掃除や料理などの家事をこなす元気も出てきました」(山本氏)

CASE

2

介護と仕事の両立。
テレワークで派遣スタッフとして働く

専門知識を生かせる仕事を望み、派遣スタッフとして通信キャリアの製品サポートの業務に就いていた広田啓一氏は、親の介護がきっかけでテレワークを始めることに。

広田啓一氏

介護のため、仕事を辞めることを考えていたが、オフィス勤務とテレワークを併用することで、就業を継続。「こんな働き方ができるとは、想像もしていませんでした。通勤の疲労がなくなり、業務の生産性が上がりました」

「1年くらい前から、ひとり暮らしの母の介護をしています。1時間ほどかかる実家まで通い、病院につれて行くために仕事を休んだり、身の回りの世話をするために早退したりといったことがだんだんと増えてきました。昨年亡くなった父の介護で半年間仕事を辞めていた時期があったので、このまま仕事を続けるのは難しいかもしれないと、リクルートスタッフィングの担当の方に相談しました」(広田氏)

相談を受けたリクルートスタッフィングの齋藤一貴氏は、テレワークとオフィスへの出勤の併用を提案した。

「派遣先の方からは『広田さんは業務にも精通していて周囲からの評価も高い。辞められると困ってしまう』という声がありました。広田さんも『続けられるのであれば続けたい』という思いがある一方、『介護と仕事の両立が可能なのか』とご不安な様子でした。そこで無理なく継続する方法はないかと考えを巡らせました。勤務日数を減らすという話もあがったのですが、派遣先のITインフラやツールの整備が進んでいたので、『週に何日かをテレワークにすることはできないか』とご提案したところ、快く了承してくださいました。一方、広田さんは『そんな働き方もあるんですね…』とテレワークをあまりご存じない様子でした。でも、スタートして2カ月くらいたった頃にお会いしたら、『仕事を辞めずに働くことができてよかったです。出勤時間も調整できて、休む時間ができました』と、とても晴れやかな表情になっていました」(齋藤氏)

松隈有紗氏(写真左)

株式会社リクルートスタッフィング ITスタッフィング2部 横浜オフィス

齋藤一貴氏(写真右)

株式会社リクルートスタッフィング 就業サポート ITスタッフィング2部 横浜オフィス

現在、広田氏は週3日はオフィス勤務、週2日は在宅勤務をしている。「実家に行って母のそばで仕事をすることもあります。安心感があるし、自分自身も体力的にすごく楽になりました。こういう働き方ができることを想像もしていなかったので、最初は半信半疑で、せっかく調整してもらったのだからやってみようくらいの気持ちだったのです。でも、ツールが充実しているおかげでチャットもできるし、意思疎通に困ることはほとんどありません。出社する日には同僚と話すことで、チャットでは得られていなかった情報に触れたり、会社全体の動きが理解できたりと、どちらのメリットも得られています(広田氏)

齋藤氏とともに広田氏のサポートを続けてきた松隈有紗氏は、派遣スタッフのテレワークは企業側のメリットも大きいと話す。

「広田さんは当初から派遣先の評価が高かった方。IT業界は特に人材が不足している状況です。優秀な方が辞めずに就業できたり、別の事例では採用競争が激しいスキルの高い方に就業していただけたりと、テレワークの導入は優秀な人材を確保するためのひとつの手法とも言えます。実際に『派遣スタッフでテレワークって、できるの?』と相談されることも増えてきました。週4勤務や時短勤務が選択肢として定着しつつあるように、今後、派遣スタッフの働き方の選択肢のひとつになっていくのではないでしょうか」(松隈氏)