2020年、消費者のデジタルシフトは急激に進み、企業にとってDXは喫緊の課題となる中、セールスフォース・ドットコムがその技術を結集して開発したのが「Salesforce Interaction Studio」だ。このソリューションがどうビジネスに効くのか、同社デジタルマーケティング部門のエバンジェリスト・熊村剛輔氏、エンジニアの杉田紀子氏に話を聞いた。
企業が推し進めてきたDXは、新型コロナウイルスの感染拡大によって新たな局面を迎えている。セールスフォース・ドットコムのデジタルマーケティングのエバンジェリストを務めている熊村剛輔氏はこう分析する。
「消費行動はガラリと変わりました。振り返ると、この半年間は多くの人が人生の中で最も検索をした期間だったと思います。オンライン上に顧客との接点を持たない企業やブランドは、消費者からその存在を認識されない状態になってしまいました」
リアルなコミュニケーションの場が激減した企業は、顧客とのコミュニケーション、提供する体験を再構築せざるを得なくなっているのだ。「体験を提供するには、5W1Hが非常に重要で、各企業はそれぞれのやり方でそれを模索してきました。その中で最も注目されているのが『いつ』です。ただし、この『いつ』が加わることで、体験を提供する難度が急激に上がります。これ以外はデータによって明らかにできますが、リアルタイム性が問われたとたん、多くの情報を即座に処理する必要が出てくるからです」
かつては、リアルタイムなワントゥワンマーケティングは、絵に描いた餅だった。それを実現する技術がなかったからだ。「しかし今は、テクノロジーがすでにあります。だからこそ、どうやって実現するかという部分がクローズアップされているのです」
ワントゥワンのリアルタイムマーケティングは、すでに「できるかできないか」ではなく、「やるかやらないか」というフェーズに入っているのである。
PROFILE
プロミュージシャンからエンジニア、プロダクトマネージャー、オンライン媒体編集長などを経て、大手ソフトウェア企業のウェブサイト統括とソーシャルメディアマーケティング戦略をリード。その後広報代理店のリードデジタルストラテジストおよびアパレルブランドにおいて日本・韓国のデジタルマーケティングを統括後、現職に。
「消費者は待てなくなっています。検索をすればすぐに欲しい情報が見つかる、問い合わせればすぐ答えが返ってくる、そうした状況に慣れきっているからです。すぐに反応がないと不安になる。これも、コロナ禍でのデジタルシフトで顕著になった傾向です」
その変化は、消費者が企業に求めるものの変化にも見て取れるという。「2009年後半と20年6月に、アメリカで調査が行われました。マーケティング部門の上級職を対象に“今後、消費者は企業の何を最重要視すると思うか”というアンケートを取ったのです。09年、最も多かった答えは『価格』でした。それが20年には『信頼』に変わっています。信頼には、顧客を待たせないという要素も入っています」
確かに、いつ問い合わせてもなかなか回答が得られない、サイトの表示が遅くアプリの動作が重いなどといった体験が重なれば、その企業への信頼は失われかねない。
「私たちは『DXを推進したい』というご相談をたくさん受けますが、それを紐解いていくと、『デジタルでどのようにおもてなしするか』という問題に突き当たります。さらにおもてなしを紐解くと、いかにリアルタイムで手を打つかという問題に突き当たるのです」
こうした流れと並行する形で、対面でのコミュニケーションも再考されつつあるという。「デジタル上だけで接点を持ち、デジタル上だけで体験を提供するのでは不十分です。デジタルではできない、人にしか提供できない体験があるからです。DXは、テクノロジーを駆使して、顧客を中心とした体験をデザインできる力を持つこと。つまり企業にとって事業変革そのものなのです」
ではこうした本質的なDXを推進するために、企業はどのようなシナリオを描けば良いのだろうか。