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─目指すべき日本版デジタルトランスフォーメーション─ 国と企業が一体となってDXを進めていくために

諸外国よりも遅れていると言われているデジタルトランスフォーメーション(DX)を日本企業はいかに進めるべきか。経済産業省の能村幸輝室長と富士通のDXをリードする福田譲執行役員常務に、ServiceNow Japanの村瀬将思執行役員社長が聞いた。(以下、敬称略)

コロナ前の働き方に
戻ることはできない

村瀬:新型コロナウイルス感染症の拡大でテレワークを導入する企業が増えるなど、ようやく日本企業における業務のデジタル化が本格的に動き出そうとしています。

 テレワークの導入はDXの第一歩にすぎませんが、「ニューノーマル」と呼ばれる新しい時代に対応するためには、これまでの働き方を根底から変える必要があるのではないでしょうか。

福田:富士通は、その具体策として「ワークライフシフト」という施策を展開しています。当社も大半の社員を在宅勤務としましたが、社内アンケートを取ったところ、85%の社員が「新たな働き方が望ましい」と回答したのです。

 コロナ後には、人々の価値観や生活様式が大きく変わるだろうと考え、働き方を抜本的に見直すことにしました。

 場所を選ばない働き方へ移行し、結果として出勤率は25%を割る見込みです。これに伴いオフィスを半減させます。直接会うことが価値あることだと気が付きましたから、オフィスの機能も大きく変わるでしょう。ニューノーマルの働き方がどうなるのかという“正解”はまだ見えませんが、試行錯誤を繰り返しながら最適解を追求します。これは働き方改革だけでなく、DX全体にも言えることです。

能村:私は経済産業省で産業人材政策を担当していますが、コロナ後にはどんな働き方が求められるのか、その変化に対応する企業をどのように支援していくのかということも、重要な政策課題の一つであると認識しています。

 ニューノーマルの時代に日本の産業を支える人材を育成していくためには、働き方や人材登用の仕方、評価方法など、あらゆる面で、今までとは異なる価値観や仕組みを適用させていかなければなりません。仕組み作りにおいては、HRテクノロジーをはじめとする新たな技術の活用も不可欠になるでしょう。

 国として、企業の皆さんがそうした変化に適応できる環境を整えていきます。

働き方の側面から
日本版DXを支援する

村瀬:私たちServiceNowは、能村さんからお話があった仕組みの側面から、企業の働き方改革を支援するサービスを提供しています。

 分かりやすく言えば、社内に散在するシステムを一つのプラットフォームで包み込み、ボタン一つで必要なデータを簡単に呼び出し、作業が実行できる仕組みです。

 これによってルーティンワークから解放されれば、社員の方々は「人にしかできない仕事」に専念できるようになり、よりワークライフバランスの取れた働き方も実現します。ServiceNowは、「We make the world of work, work better for people.」(付加価値のある、人にしかできない仕事の創造)というパーパス(理念)を掲げており、働き方の側面から日本版DXの実現を支援していきたいと考えています。

「使いにくい」仕組みが
変革を妨げている

村瀬:ところで、お2人は日本企業がDXを推進していくためには、何が必要だと感じていらっしゃるでしょうか。

福田:私は「経営のリーダーシップ」「現場の叡智」「カルチャー変革」の3つがカギになると考えています。

 DXの目的は、デジタル技術を取り入れることではなく、事業やカルチャー、人の生かし方などを抜本的に変えることです。そのためには経営者が変革の全体像を明確に描き、強いリーダーシップを発揮することが欠かせません。

 一方、ビジネスの最前線で「何が課題なのか」を、時に経営者以上に理解しているのは現場です。その叡智を活用し、トップダウンとボトムアップの両面で変革を進めるのが効果的と考えます。

 そして、DXの基盤になるのが「カルチャー変革」です。現場が課題に気づいていても、声を上げない、身近な範囲で解決しようとすることはあるものです。何でも「言ってみよう、変えてみよう、やってみよう」というマインドや空気の醸成が大事ではないでしょうか。

能村:DXを推進する上では、その取り組みに対するマーケットの評価も重要になると思います。

 例えば、経済産業省は現在、DXに積極的に取り組んでいる事業者を認定する制度作りを進めています。これによってマーケットの評価が高まれば、資金面での支援も加わって、DXがさらに加速するという好循環が生まれるはずです。

村瀬:まさに、国と企業が一体となったDX推進のための取り組みですね。

能村:その通りです。日本企業のDXは諸外国に比べて遅れていると言われますが、今回の事態は、遅れを取り戻す大きなきっかけになると思います。ここで変わらなければ、ニューノーマルの時代を生き残れないのではないでしょうか。

福田:新型コロナウイルス感染症の影響で、世界の国々が国民に感染者情報などを知らせるアプリを開発していますが、図らずも、そのアプリの成果が、国ごとのDXの進捗状況を採点する基準になっていると思います。

 残念ながら日本のアプリは、想定通り機能しているとは言えません。求められているのは、UX(ユーザーエクスペリエンス)の改善です。どんなに機能が良くても、使われないアプリは結果につながりませんから。日本のDXは、もっとUXに光を当てると進むように感じます。

村瀬:広島県ではServiceNowの仕組みを取り入れ、訪問先のQRコードにスマートフォンをかざすと、同じ時間・場所にいた人が感染した場合、自動的に警告を送るアプリを県民に提供しています。

 このように、自治体でも革新的な取り組みを行うところが出てきているのですから、「良いものは自分たちも活用する」という精神で先例を積極的に学びながら、DXを推進していくべきでしょうね。

 本日はありがとうございました。

DXを進めるためには、試行錯誤を繰り返し
最適な形を追求する必要がある

富士通 福田 譲

企業の皆さんがニューノーマルの時代に
適応できる環境を国として整えていく

経済産業省 能村幸輝

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ServiceNow Japan 村瀬将思
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