日経ビジネス電子版 SPECIAL
20年間で劇的な変化を遂げた台湾メーカーと台湾製品 20年間で劇的な変化を遂げた台湾メーカーと台湾製品
坂口孝則 氏、詹國良 氏 坂口孝則 氏、詹國良 氏
経営コンサルタント 坂口 孝則 氏、日本エイサー株式会社 代表取締役社長 詹 國良氏

2000年以前の台湾製造業は、下請けやODMが主流だった。ODM生産が台頭してきた2001年ごろからは、ODMによって世界のトップ企業のパートナーとなり、技術レベルが一気に向上。現在は、とりわけ半導体、PC、タブレット、ゲーム機などハイテク分野での台湾企業の活躍が目覚ましく、世界生産のほとんどを担うほどの成長を遂げている。世界のビジネスや生活を支えている台湾製造業。その理由を経営コンサルタントの坂口孝則氏に語っていただいた。

坂口孝則 氏、詹國良 氏

2000年以前の台湾製造業は、下請けやODMが主流だった。ODM生産が台頭してきた2001年ごろからは、ODMによって世界のトップ企業のパートナーとなり、技術レベルが一気に向上。現在は、とりわけ半導体、PC、タブレット、ゲーム機などハイテク分野での台湾企業の活躍が目覚ましく、世界生産のほとんどを担うほどの成長を遂げている。世界のビジネスや生活を支えている台湾製造業。その理由を経営コンサルタントの坂口孝則氏に語っていただいた。

特別インタビュー
台湾製品が激変した20年

 面積が狭く天然資源が乏しい台湾は近年、モノづくりを「頭脳勝負」に転じてきた。私がメーカーで働いていた当時、台湾ブランドは知名度が低く、高品質とは言い難かったが、それから20年たった今、台湾製半導体などは世界中の電子機器を動かす「環境」そのものである。
 台湾企業のスタッフは、20年前からとてもユニークだった。製造現場で働く人々は、日本人同様に真面目で実直。他方、研究者や開発者は転職を頻繁に繰り返し、同業者同士のつながりが強い。この活発な人材交流は、台湾製造業の強みにもなっている。
 そして経営層。彼らはいつも新しいことに目を向け、異業種参入なども臆せずチャレンジする。その大胆かつ独特な経営哲学は「捨て身」とすら思えたが、エレクトロニクス分野では特に、世界中に製品・部品を供給する企業グループが誕生した理由とも考えられる。
 現在の台湾は、政府の後押しもあってエレクトロニクス産業の勢いが止まらない。政府施策の中でも特に注目したいのが、法人税の安さと減価償却年数の短さ。日本企業が5年もかけて投資回収をしているときに、台湾企業は2-3年ごとの大規模投資を実行してきたのだ。
 台湾企業は、ODMを通じ、また、インテルのオープン戦略などを活用して、販売単価を下げるための効率化とモジュール開発などの高度化を実現。それに伴い、オリジナル商品の信頼度も向上し、世界各国の市場で支持されている。

坂口 孝則 氏経営コンサルタント 坂口 孝則 氏
Taiwan Excellenceのラインナップにハイテク分野での台湾の強さを実感
標準品の高度化から自社製品開発へ
坂口 孝則 氏

 この20年、日本の製造現場は顧客の要望をかなえるためのASIC開発に注力してきた。その間台湾では標準品製造の効率化を進めながら技術力を高め、現在は、標準品製造で潤った資金を投じて特定用途向け製品を開発している。
 また、日本は課題先進国を標榜しているが、少子高齢化対策や防災テック、医療関連製品などの開発も、台湾企業が先行している印象だ。政府認定製品「Taiwan Excellence」の商品群からは、IoTなどハイテク領域における技術力の高さがうかがえる。また、そのラインアップは多分野に及び、日本でも知らずして台湾製ハードやソフトを活用している人が多いことは容易に想像できる。
 そのソフトパワーの勢いを象徴する企業の1つがM17 ENTERTAINMENTだ。LIVE配信アプリを提供している会社だが、その優れたシステムは、日本を含む世界の若者から人気を集めている。
 かつて日本主導といわれた半導体開発だが、現在は設計・製造ともに台湾企業が先導している。しかし、半導体製造の中間領域も含めると、日本メーカーの優位性はまだ十分にあり、広く業界を見渡せば、世界トップクラスの技術を持つ企業も多い。実績がある日本企業とスピードと効率性を磨いてきた台湾企業。その協業には新たな可能性を感じる。
 日本企業は近年、製造を中国一極に集中してきた。しかし、コロナ禍などの影響でポスト中国の製造拠点を模索する企業も増えてきた。米中による東シナ海の覇権争いも鑑みると、親日家が多く距離的にも近い台湾は、魅力的な拠点候補といえるだろう。

Maker’s Voice日本エイサー株式会社 代表取締役社長 詹國良 氏時代を超えたエイサーの挑戦 「フォロワーでなくパイオニアであれ」

 40年以上の歴史があり世界71カ国に支社を持つエイサーは、1981年に台湾企業として初めてオリジナルブランドのPCをリリースした会社。現在では、多様な企業を傘下に抱える台湾屈指の企業グループとして知られています。
 当社創業者は、1990年代から「スマイルカーブ」の両側、つまり設計を含むR&Dと、顧客サービスに当たる販売・流通に注力すべきという理論を提唱してきました。その理論の下、エイサーはオリジナル商品の開発を積極的に推進。グローバル市場を視野に早くも2000年にはタブレット端末を、2008年にはネットブックをリリースしました。そのネットブックは、当時のパソコンの平均単価を大きく下回る価格設定が欧州や日本で大きな反響を呼びました。当社は「台湾生まれ、欧州育ち」といわれることもありますが、現在でも欧州各国ではPC販売シェア1-2位のプレゼンスを保持しています。
 台湾政府による優良商品認定制度「Taiwan Excellence」の活動は、多くのスタートアップ企業の海外市場進出を支援してきました。商品の合理化と高付加価値化をいち早く実現し、海外市場を開拓してきたエイサーは、Taiwan Excellence選出企業の中でもキャリア組といえる存在。そのプロモーション活動に協力することで、台湾エレクトロニクス業界全体の質が向上したことをうれしく思います。

エイサーのパソコン

 今やPCはスマホより安価な時代。つまり価格の合理化は達成できたといえるでしょう。そこで近年は、用途別のニーズに合致した製品を開発。特にハイスペックが求められるゲーミングPCやクリエイター向けPC分野では、既に先端を行く企業として業界をけん引しています。
 日本における小中学校の全児童・生徒に1人1台端末を整備する「GIGAスクール構想」や、働き方改革によるテレワークの浸透は、PC普及率のさらなる向上を予測させます。また、小学校で必修化されたプログラミング教育は将来、PCに慣れ親しみ、理論的思考力を身に付けた社会人を多数輩出するはずです。当社は、日本市場向け製品に専用生産ラインを確保し、ひときわ厳しい品質管理を行っています。来たる追い風を逃さないよう、信頼される製品を生産することも含め、今後もいっそう日本市場に注力していきたいと思います。
 エイサーはフォロワーではなくパイオニア。これからも常に既存製品に改善の余地を探し、革新的な製品を開発していきたいと考えています。

詹國良 氏
特別インタビュー
台湾製品が激変した20年

 面積が狭く天然資源が乏しい台湾は近年、モノづくりを「頭脳勝負」に転じてきた。私がメーカーで働いていた当時、台湾ブランドは知名度が低く、高品質とは言い難かったが、それから20年たった今、台湾製半導体などは世界中の電子機器を動かす「環境」そのものである。
 台湾企業のスタッフは、20年前からとてもユニークだった。製造現場で働く人々は、日本人同様に真面目で実直。他方、研究者や開発者は転職を頻繁に繰り返し、同業者同士のつながりが強い。この活発な人材交流は、台湾製造業の強みにもなっている。
 そして経営層。彼らはいつも新しいことに目を向け、異業種参入なども臆せずチャレンジする。その大胆かつ独特な経営哲学は「捨て身」とすら思えたが、エレクトロニクス分野では特に、世界中に製品・部品を供給する企業グループが誕生した理由とも考えられる。
 現在の台湾は、政府の後押しもあってエレクトロニクス産業の勢いが止まらない。政府施策の中でも特に注目したいのが、法人税の安さと減価償却年数の短さ。日本企業が5年もかけて投資回収をしているときに、台湾企業は2-3年ごとの大規模投資を実行してきたのだ。
 台湾企業は、ODMを通じ、また、インテルのオープン戦略などを活用して、販売単価を下げるための効率化とモジュール開発などの高度化を実現。それに伴い、オリジナル商品の信頼度も向上し、世界各国の市場で支持されている。

坂口 孝則 氏Taiwan Excellenceのラインナップにハイテク分野での台湾の強さを実感
標準品の高度化から自社製品開発へ

 この20年、日本の製造現場は顧客の要望をかなえるためのASIC開発に注力してきた。その間台湾では標準品製造の効率化を進めながら技術力を高め、現在は、標準品製造で潤った資金を投じて特定用途向け製品を開発している。
 また、日本は課題先進国を標榜しているが、少子高齢化対策や防災テック、医療関連製品などの開発も、台湾企業が先行している印象だ。政府認定製品「Taiwan Excellence」の商品群からは、IoTなどハイテク領域における技術力の高さがうかがえる。また、そのラインアップは多分野に及び、日本でも知らずして台湾製ハードやソフトを活用している人が多いことは容易に想像できる。
 そのソフトパワーの勢いを象徴する企業の1つがM17 ENTERTAINMENTだ。LIVE配信アプリを提供している会社だが、その優れたシステムは、日本を含む世界の若者から人気を集めている。
 かつて日本主導といわれた半導体開発だが、現在は設計・製造ともに台湾企業が先導している。しかし、半導体製造の中間領域も含めると、日本メーカーの優位性はまだ十分にあり、広く業界を見渡せば、世界トップクラスの技術を持つ企業も多い。実績がある日本企業とスピードと効率性を磨いてきた台湾企業。その協業には新たな可能性を感じる。
 日本企業は近年、製造を中国一極に集中してきた。しかし、コロナ禍などの影響でポスト中国の製造拠点を模索する企業も増えてきた。米中による東シナ海の覇権争いも鑑みると、親日家が多く距離的にも近い台湾は、魅力的な拠点候補といえるだろう。

坂口 孝則 氏
Maker’s Voice 日本エイサー株式会社 代表取締役社長 詹國良 氏
詹國良 氏時代を超えたエイサーの挑戦 「フォロワーでなくパイオニアであれ」

 40年以上の歴史があり世界71カ国に支社を持つエイサーは、1981年に台湾企業として初めてオリジナルブランドのPCをリリースした会社。現在では、多様な企業を傘下に抱える台湾屈指の企業グループとして知られています。
 当社創業者は、1990年代から「スマイルカーブ」の両側、つまり設計を含むR&Dと、顧客サービスに当たる販売・流通に注力すべきという理論を提唱してきました。その理論の下、エイサーはオリジナル商品の開発を積極的に推進。グローバル市場を視野に早くも2000年にはタブレット端末を、2008年にはネットブックをリリースしました。そのネットブックは、当時のパソコンの平均単価を大きく下回る価格設定が欧州や日本で大きな反響を呼びました。当社は「台湾生まれ、欧州育ち」といわれることもありますが、現在でも欧州各国ではPC販売シェア1-2位のプレゼンスを保持しています。
 台湾政府による優良商品認定制度「Taiwan Excellence」の活動は、多くのスタートアップ企業の海外市場進出を支援してきました。商品の合理化と高付加価値化をいち早く実現し、海外市場を開拓してきたエイサーは、Taiwan Excellence選出企業の中でもキャリア組といえる存在。そのプロモーション活動に協力することで、台湾エレクトロニクス業界全体の質が向上したことをうれしく思います。
 今やPCはスマホより安価な時代。つまり価格の合理化は達成できたといえるでしょう。そこで近年は、用途別のニーズに合致した製品を開発。特にハイスペックが求められるゲーミングPCやクリエイター向けPC分野では、既に先端を行く企業として業界をけん引しています。
 日本における小中学校の全児童・生徒に1人1台端末を整備する「GIGAスクール構想」や、働き方改革によるテレワークの浸透は、PC普及率のさらなる向上を予測させます。また、小学校で必修化されたプログラミング教育は将来、PCに慣れ親しみ、理論的思考力を身に付けた社会人を多数輩出するはずです。当社は、日本市場向け製品に専用生産ラインを確保し、ひときわ厳しい品質管理を行っています。来たる追い風を逃さないよう、信頼される製品を生産することも含め、今後もいっそう日本市場に注力していきたいと思います。
 エイサーはフォロワーではなくパイオニア。これからも常に既存製品に改善の余地を探し、革新的な製品を開発していきたいと考えています。

エイサーのパソコン