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若手発信で経営層を巻き込む 東急不動産の働き方改革 GREEN FLAG PROJECT

「働きやすい風土は、自分たちでつくる」。東急不動産の若手社員たちが進める“GREEN FLAG PROJECT”が業界内外の注目を集めている。「働き方改革」を意識した新本社への移転に伴い、ハードだけでなく、改革を促す仕掛けをボトムアップで発案し、実践しようという取り組みだ。

「自分たちで社風を変える」若手社員たちが発足

 東急不動産は2019年8月、本社を東京都渋谷区道玄坂のオフィスビル「渋谷ソラスタ」に移転した。

 新本社ビルには、働き方改革や多様なワークスタイルをサポートするため、部署ごとのグループアドレスの導入や、「COLABO!(コラボ)」と呼ばれるグループ従業員同士のコミュニケーションスペースを設けるなど、工夫が凝らされている。

 一方、単にハードを整えるだけでなく、働きやすい風土をつくり上げたいと考えた同社の若手メンバーの発信で、部門横断的な組織風土改革プロジェクトを発足。それが“GREEN FLAG PROJECT”だ。

 「30人ほどの若手社員たちが、『オフィスを新しくするだけではなく、働きがいのある組織に変えなくてはいけない』と自発的に手を挙げて発足しました。東急不動産は『挑戦するDNA』という理念を掲げており、社員が『やってみたい』と思うことには積極的にチャレンジさせる社風があります。自由な発想をぶつけ合い、変化を生み出すことへの期待を込めて、彼らがやりたいことを精いっぱいできるよう応援しています」と語るのは、同社の亀島成幸執行役員である。

 プロジェクトメンバーは、「コミュニケーション活性化」「人材育成の仕掛けづくり」「イノベーションが起こりやすくなる仕掛けづくり」など、課題ごとにチームを組んで活動。

 2019年5月のプロジェクト発足からまだ1年足らずだが、自由闊達なアイデア出しや、管理部門への積極的な働き掛けなどを通じて、すでに様々な成果が表れている。

 「働きやすさを追求するためにトライアルで服装のカジュアル化に踏み切りましたが、一方で若手社員から『服装だけでなく、心もカジュアル化しよう!』という提案があり、コミュニケーション活性化を目的に朝の挨拶運動も始めました。その結果、多くの社員から『挨拶をきっかけに社員間のコミュニケーションが増えた』という声をいただきました。小さなことかもしれませんが、今までは課題や改善策が浮かんでも実行に移せなかったことを、自発的に考え、とにかくやってみることが大事だということが分かりました」と語るのは、プロジェクト発足時からのメンバーである入社3年目の平川雄基氏だ。

亀島氏
東急不動産ホールディングス株式会社
東急不動産株式会社

総務部、法務部、人事部、IT戦略部担当
執行役員
亀島成幸

社員が自発的に考え、
行動することができる環境を
整えていきます。

前例のないことでも、
とにかくやってみようという
気持ちで挑んでいます。

平川氏
東急不動産ホールディングス株式会社
グループIT戦略部
業務改革推進グループ
平川雄基

ソフト面での成果を含めより良い「働き方」を提案

 人材育成の仕掛けとしては、「ナナメンター」というユニークな制度も発案した。OJTが終了した入社2年目の社員をメンティ(指導・助言を受ける側)とし、別の部署の先輩が“ななめの関係”からメンターとして指導や助言をする。「直属の上司ではなく、別の部署の人とコミュニケーションを取る機会を設けることで、新たな発見や視野拡大につながると確信しています」(平川氏)。

 働く側の目線で、「こんなふうに働きたい」とか、「社内やグループ内で関係性やコミュニケーションを深めていきたい」という理想を追求し、それを実現するためのアイデアを形にしようとしているのが特徴だ。

 「なかには役員のスケジュールまで全社共有し、若手社員による会議の設定作業を効率化するなど、『そこまでやるか!』と思うような提案もありましたが、これも含め、ほとんどの提案は役員も快く承諾してくれています。その代わり、一度決めたことにはKPIを設定し、きちんと成果を上げてもらいます。自由と自立を兼ね備えた、責任あるプロジェクトとして取り組んでもらっているのです」(亀島氏)

 プロジェクトのメンバーは1年足らずで約2倍の60人以上に増え、来年には150人を目指すという。平川氏は「会社を良くするために活動することが、本当に楽しくてやりがいのあることだと肌で感じたので、他の社員にもその楽しさを実感してほしい」と期待している。亀島氏は、「新本社によるハード面と、この活動におけるソフト面での成果をもとに、お客様により良い『働き方』を提案していきます」と語った。

会議室
新本社の執務フロアの一部には、トレーニングマシンなどで体を動かしながら会議ができるミーティングスペースを設置。ブレストなどに活用されている
仮眠室では、平川氏の考案でリラックス効果の検証を行っている。これも「やってみよう」の取り組みの一つだ
仮眠室