DX推進の第一歩として、数多くの企業で活用が進むRPA。業種、業務内容にかかわらず幅広いシーンで利用されるようになったが、「思ったほどの効果が出ない」「どこまで活用できるのかわからない」などといった声があるのも事実。そんな悩みを解消するヒントが語られた、注目のセッション内容を紹介する。

主催者講演

りそなホールディングス

りそなホールディングス
デジタル化推進部 グループリーダー
荒木 敏郎 氏

業務のデジタル化を阻む壁としてよく話に挙がるのが、紙の帳票類や他のシステムと連携できないレガシーシステムの利用が必要不可欠な業務だ。りそなグループでは、RPAを活用して様々な業務改革を進めていく上で、工夫を凝らし、DXに立ちはだかるこれらの課題を解消してきたという。

荒木氏が初めに説明したのは、紙を扱う業務への対応。1日に1万件分の依頼があるという預貯金調査業務において、紙で届く調査依頼書をOCR処理することでデジタル化を実現している。しかしこの取り組みは単に、OCRを導入すればよいというわけではなかったようだ。「どんなに優れた認識率であっても、OCRの認識結果全件を人が確認するのでは導入効果は限定的なため、OCRで認識した漢字・カナ名を顧客情報から作成した姓・名辞書と掛け合わせ相関チェックを行いました」(荒木氏)。そして、相関チェックの結果が不一致のものだけ人の目で確認することで、人による確認対象を削減し、「チェック件数を8割カットできた」。さらに、勘定系端末への入力業務は、RPAツールにキーボードエミュレータを組み合わせて自動化。小型のロボットアームを使い、紙の帳票のハンドリングも自動で行う仕組みを構築しているという。

セッションの終盤、荒木氏は「RPAだけでは解決できない課題も、知恵と実行する勇気があれば何とかなる」ことを改めて強調。デジタルツールはもちろん、物理的に動作するツールも組み合わせることで、RPAの可能性がより広がることを示唆して話をまとめた。

主催者講演

キリンホールディングス

キリンホールディングス
執行役員 情報戦略部長
阿部 泰二 氏

キリンでは2017年からRPAの取り組みに着手しており、業務時間の削減、ピークカット、業務の正確性や速度の向上といった業務改善とセットで「業務の見える化を進める」というスタンスで取り組んでいる。加えて、工数のかかる業務アプリケーションの開発をRPAで代替するという視点でも進めてきた。

RPA化着手に際して最も重視しているのは「年間換算で200時間/年以上の時間削減効果が得られるか、投資を1年未満に回収できるか」だ。見合った投資効果が出せるかを必ず議論するという。

「RPAの導入効果は、当社では特に『集中化』『横展開』『早期立ち上げ』の3つが顕著に表れていると考えます」と阿部氏が語るように、「集中化」に関しては、自販機の設置や撤去に際して地域ごとに実施していたマスター登録作業の集中処理化に際してRPAを活用した。「横展開」では、酒類の製造に関して工場ごとに異なるやり方で実施していた同種同様の業務を、先行して業務改善を進めていた工場のRPAをベースにして全工場に横展開した。「早期立ち上げ」については、得意先様でのトラック滞留時間を減らすために事前にお送りする出荷情報データ生成と送信の作業をRPA化したという。

最後に阿部氏は次のように語った。

「RPA化に着手する際は、まずその業務が本当に必要か、そして、結合・再編・簡略といった観点でどのような改善が必要かという議論をする必要があると考えます。こうした議論を経ることでRPAの導入のポイントが明確になりますし、何よりも業務改善そのものの効果がさらに高まると考えています」

主催者講演

東日本電信電話

東日本電信電話
埼玉事業部 BPR推進室長
石川 文彦 氏

東日本電信電話の埼玉事業部では、約700人が従事する光回線と電話回線の開通工事の自動化に取り組んだ。「一連の業務のうち、まず工事設計の自動化から着手しました。最も複雑な業務の自動化に成功すれば、他業務でも可能だと周囲が理解し、RPAを推進しやすくなるからです」石川氏はそう説明する。

NTTグループであるNTTアドバンステクノロジのRPAツール「WinActor®」を使用し、工事設計の自動化を約8カ月で実現。しかし、埼玉事業部の各部門に展開してみると、展開先のシナリオ作成や運用ノウハウの習熟不足からエラーや端末停止などが多発しBPR推進室に問い合わせが殺到。そこで、ロボットの運用環境を全てBPR推進室の下に集約し、24時間稼働で一元管理。こうして「埼玉ロボットオペレーションセンタ(SROC)」が誕生した。

2020年2月より東日本全域の運用までを一括管理しているSROCは、新たにNTTデータ イントラマートのBPM/ワークフローツール「intra-mart®」を導入して遠隔統制を実現。現在BCP対策としてバックアップ拠点の整備を進めている。

「RPAの導入を成功させるには、業務を見直し、標準化する作業が大切です。『やり方を変えたくない』『自分の仕事は無くなるのか』『自分のノウハウが自動化できるはずがない』といった現場の声に丁寧に答えながら、変革意識と挑戦する風土の定着に努めることが肝要です」。石川氏は最後にそう締めくくった。