テレビ広告が過小評価される要因はどこにあるのだろうか──。平尾氏は「要因は2つ考えられます。それらがテレビ広告の現状の課題だと思います」と語る。
平尾氏は、要因の1つ目に「ROI(投資対効果)が分からないこと」を挙げる。テレビ広告を出稿しても、かけたコストがどのくらい売上などの事業成果に結びついたのかを定量的に計測する方法がなかったのだ。これは、「成果に連動した運用が難しいこと」(平尾氏)という2つ目の要因と大きく関連している。そして、効果を測定しやすく、柔軟な運用が可能なオンライン広告が登場したことで、これらの課題がさらに際立っている格好だ。
この課題を解決すべく、事業成果に対するROIベースでテレビ広告の効果測定や運用を実現するサービスが始まっている。
「テレビ広告の分析・効果測定ができれば、最も投資対効果が上がるようにテレビCMの出稿を最適化できます。私たちはこのサービスを、売上などの事業成果に対する成果報酬型CM出稿サービスとして実現しました」と平尾氏は話す。
サイカは20年9月に発表した「XICA ADVA(以下、アドバ)」のサービスラインアップの一部として成果報酬型CM出稿サービスの提供を開始。同サービスにはこれまでテレビ広告を展開してきた大手企業をはじめとして、テレビ広告を出稿したもののROIが見えない、と悩む企業からの問い合わせが相次いでいるという。
「テレビ広告を出稿されるスポンサー企業の方には、今まで感覚的に捉えていたテレビ広告のポテンシャルをデータで定量的に把握した上で、オンライン広告の感覚でテレビ広告を運用いただけるようになります」(平尾氏)
さらに20年12月、アドバには先進的な新サービス「ADVA CREATOR」が追加された。これは、脳波解析とデータサイエンスの技術を用いて、成果を最大化するテレビ広告のクリエイティブを制作するサービスだ。
「この定量的なアプローチで、クリエーターの活動を支援したいという想いがあります。スポンサー企業の意向に沿うべき部分を経験や勘だけでなくデータに基づいてしっかりと押さえれば、それ以外の部分でのクリエーティビティーの自由度が上がるからです」(平尾氏)
こうしてデータサイエンスで最適化されたテレビ広告が放映され、視聴者の目に止まれば、顧客体験の向上も誘引できる。
「広告の投資対効果が上がるということは、消費者に『これはいい』と感じてもらえて、買っていただいた結果だと思います。そうした体験が増えることは、消費者の人生の満足度を上げることにつながるのではないでしょうか」(平尾氏)
こういった新しい手法で作られ、新しい効果測定によって分析されるテレビ広告は、テレビ広告業界内にPDCAという概念を持ち込む存在であると、平尾氏は語る。
「投資対効果が見えるということは、オンライン広告のようにROIベースでテレビ広告が語られるようになるということです。コロナ禍などで不安定なこの時代、テレビ広告はPDCAが回り、再現性・確実性を持って事業成果と連動するようになる。つまり、事業成長のドライバーとして活用いただけます。これは経営者にとっても実に魅力的と言えます。
さらに、テレビ広告の品質や情報発信力、緊急時における信頼感などの“力強さ”は健在です。“新しい形”になったテレビ広告は、ポストコロナの中で再び中心となる広告メディアになるのではないでしょうか」
新しい魅力を携えたテレビ広告が、多くのビジネス分野に革新的な変化をもたらしていく。
XICA ADVAではテレビ広告出稿のすべてのプロセスにデータサイエンスを実装。出稿前にその広告によって得られる事業成果をシミュレーションすることで、広告の量ではなく、売上などの事業成果にコミットする成果報酬型モデルを実現した。ADVAという名称には、広告を適正評価する「AD Valuate」と、事業成果向上という付加価値を提供する「Add Value」という2つの意味が込められている。