フィリピンと日本、
経済活動の再活性化が目指すもの
7,100以上の島々から成るフィリピン諸島。このフィリピンがコロナ禍という世界的危機を切り抜け、さらに国と経済を強固にしてコロナ禍の危機から浮上する。その鍵となるのは、日本とのパートナーシップである。
諸外国の例にもれず、フィリピン経済も新型コロナウイルスの世界的感染拡大により大きな痛手を受けた。しかし、アジア第3位の急速な経済成長を遂げるフィリピンは、発展する機会がまだ十分あり、そのためには緊密なパートナーシップが必要である――。
2020年12月1日、「フィリピン-日本 ビジネス投資バーチャルフォーラム 2020 (Philippines-Japan Investment Virtual Forum)」が開催された。財界人の情報交換の場である同フォーラムが開催されるのは第6回目。今回は日本、フィリピンから政府高官やビジネスリーダー315名が参加。経済予測、ビジネスに関する知見、革新的アイデアなどさまざまな意見交換が行われ、両国の緊密なパートナーシップをテーマにさまざまな議論が繰り返し論じられた。
コロナ禍から立ち上がるフィリピン
世界がコロナ禍にあるなか、フィリピンではこの事態を楽観視できる理由がある。現在、フィリピン経済は2020年第3四半期に前年同期比で8%の成長を遂げ、2020年10月末時点の総外貨準備高は過去最高の1,040億米ドルに上った。
「フィリピン経済には回復の兆しが見え始めており、最悪の時期を脱したと思われる」とフォーラムの主賓として参加したフィリピン財務大臣のカルロス・G・ドミンゲス(Carlos G. Dominguez)氏はこう述べた。
また、主賓挨拶に立った日本アセアンセンター事務総長の藤田正孝氏は、デジタル化によりフィリピンの競争力はさらに強まり、現在や将来の危機に備えてより弾力性あるグローバル・バリュー・チェーンを築く下地がつくられるため、今後フィリピンへの期待感が高まると述べている。
「弾力性の問題はパンデミックだけから生じるのではない。弾力性を以前のレベルに戻すだけではなく、より高いレベルにする必要がある。より強靭なバリュー・チェーンを構築する必要があり、我々にはそれが可能だ」。その実現に向け、経済をよみがえらせて活性化し、ビジネスや投資、暮らし、国内需要を活発にするための戦略がすでに実施されている、とフィリピン貿易産業大臣のラモン・M・ロペス(Ramon M. Lopez)氏はフォーラムの歓迎挨拶ではっきり述べた。需要を活性化し供給を増大させるための鍵は、消費の活性化と生産能力の増強。そのためには、フィリピン経済の需要増を捉える力を地域産業に付けてもらうことである。
「しかし、より良い再建を行い、より良いフィリピンを取り戻そうとするなかで、われわれは日本のような海外パートナーの重要性を認識している。コロナ禍の間だけでなく、フィリピン経済を立て直す取組みにおいて、こうした海外パートナーが重要なのだ」(ロペス大臣)。
二国間の絆を深めることで
より強い国づくりを実現する
日本とフィリピンは投資、通商の両面で長いあいだ強い結びつきを保ってきた。たとえば、日本はフィリピンにとって第2位の貿易相手国であり輸出市場であるとロペス大臣は指摘している。日本は輸入供給国としても第2位であり、2019年に承認された投資額では第4位である。
日・比両国が徐々に経済を再開するなか、駐日フィリピン大使を務めるホセ・カスティーリョ・ラウレル五世(Jose Castillo Laurel V)氏は両国のより緊密な協力体制を歓迎している。
ラウレル大使は「自信をもって言えるが、フィリピンの経済界も日本の経済界も、二国間関係の強化を望んでいる。駐日大使としての経験に基づけば、日本は今後もフィリピンでの事業に強い熱意と関心を寄せると思われる」と述べた。
ドミンゲス大臣も、雇用を創出し、国民を貧困から救うため、積極的なインフラ整備政策「Build Build Build」が重要な戦略となった点を強調している。コロナ禍にあっても、フィリピンに対する日本の強力な支援は続いている。とりわけ、ソフト面を支援するプロジェクト・ローンや政府開発援助の面で、日本の支援は大きい。
ドミンゲス大臣は「幸いにも、フィリピンは開発支援パートナー各国からの借款を迅速に利用することができた。また、民間金融市場では非常に低金利、タイト・スプレッド、長期の返済期間で資金が調達できる。必要性が非常に高い支援の提供について、日本政府や日本国民は極めて寛大に応じてくださっている。企業活動や公共交通機関が次第に再開されている今年(2020年)第4四半期には、更なる改善が見られると期待している。こうした兆しはフィリピン経済が立ち直る途上にあることを示している。2021年は力強い景気回復に向かう道筋がはっきりと見える」と日本の支援の重要性を述べている。