日経ビジネス電子版 SPECIAL

行政にも事業者にも大きなメリットをもたらす経済産業省の挑戦DXで業務全体のあり方を変革し、
次の時代の新しい産業保安行政へ

経済産業省×アクセンチュア
後藤 雄三氏 後藤 浩氏

省庁の中でも先駆けてDX推進に取り組む経済産業省。その先陣を切る形で2020年初から稼働をスタートした「保安ネット」の開発背景やデジタル社会への想いとは? 同省大臣官房審議官として産業保安を担当する後藤雄三氏に、アクセンチュア公共サービス・医療健康本部統括本部長の後藤浩氏が話を聞いた。

chapter 01産業の安全性を確保するために
DXは避けて通れない選択だった

社会全体でDXの重要性が叫ばれる中、電子申請の推進やデジタル庁の創設など、国や行政でも電子化に向けた取り組みが進んでいます。経済産業省は、2018年にデジタル・トランスフォーメーション室を設置するなど、DXの推進に積極的な印象があるのですが、まずは貴省がDXに取り組むようになった経緯をお聞かせください。

この20年ほど、IT基本法やe-Japan構想などの流れはありましたが、電子化自体が目的化してしまうとメリットが見えにくく、結果としてはデジタルへの移行がなかなか進んでいかないという現状がありました。経済産業省としても業務効率化のために電子化の必要性は感じていましたが、ここ数年でようやくデジタル関連の法案が整ってきたり、DXの具体的なメリットが明確になったりしたことで、スピード感を持って取り組もうという機運になってきたというのが経緯ですね。

そうした中で真っ先に取り組まれたのが、産業保安行政手続の電子申請を可能にする「保安ネット」です。今回、私たちもDXパートナーとして保安ネットの立ち上げに携わらせていただきましたが、産業保安行政がどういうものなのかについて、簡単にご説明いただけますか。

後藤 雄三氏
経済産業省
大臣官房審議官(産業保安担当)
兼 大臣官房調査統計グループ長
後藤 雄三

社会を支える産業には、電気やガス、石油コンビナートや各種プラントなど、多種多様な基盤があります。産業保安行政は、こうしたインフラや産業基盤の安全性を確保するための規制や申請手続などを管轄しています。例えば、電気が止まってしまったら、パソコンも動かなくなりますし、交通や医療など、ひいては社会全体が立ち行かなくなってしまいます。

重要な国家経済インフラを維持する役割を担っているということですね。その産業保安の領域でDXを推進するに至った背景はどのようなものがあったのでしょうか。

産業保安に関する書類は、定期的な申請・届出等が必要なものも含めて、年間25万件以上と膨大です。こうした申請手続に対応するためにリソースを割かれてしまうという状況は以前からありましたが、近年、自然災害の増加や電力自由化などもあり、ますますこの傾向が強くなったことで看過できない課題となっていました。つまり、電子化のためのDX推進というよりは、産業保安行政本来の役割、つまり安全を守るという点にしっかりとリソースを確保するためには、DXしか選択肢がなかったということです。

なるほど、単に書類の電子化やオンライン化ということではなく、業務全体のトランスフォーメーションが不可欠だという問題意識があったからこそ、新しい挑戦に踏み切ったわけですね。

後藤 浩氏
アクセンチュア
常務執行役員
公共サービス・医療健康本部 統括本部長
後藤 浩
NEXTマインド・トランスフォームで
デジタルを前提としたシステムに
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