日経ビジネス電子版 SPECIAL
経済産業省×アクセンチュア

行政にも事業者にも大きなメリットをもたらす経済産業省の挑戦DXで業務全体のあり方を変革し、
次の時代の新しい産業保安行政へ

後藤 雄三氏 後藤 浩氏

chapter 02マインド・トランスフォームで
デジタルを前提としたシステムに

経済産業省のDX推進の先陣を切ってスタートした保安ネットですが、まずは概要からお話しください。

保安ネットは、電気やガス、鉱山、火薬、製品安全に関する法令に基づく申請・届出等について、インターネット上で作成・提出することが可能なシステムです。事業者様はこれらの書類を、地方ごとの産業保安監督部や経済産業局という地方支分部局に提出しますが、これらは全国に9カ所しかないため、オンラインでできるというのは、時間もコストも削減でき、事業者様にとって大きなメリットになります。

産業政策というのは、行政と産業界が同じ想いで取り組まなければなかなか改革が進まないと思うのですが、この場合はメリットをしっかり伝えた上で、行政がきちんとした仕組みをつくったからうまくいったのでしょうね。そういう点では、私たちもその一翼を担うという意識で参加させていただきました。保安ネットのプロジェクトを実際に進める上で重視したポイントはありますか。

産業保安行政のためにはDXが絶対に必要だという本気度を見せること、事業者様を含め現場で使う人の声を取り入れること、そしてこれなら使えるという納得感のあるものをつくり上げるということです。そのために、業界団体を通じて事業者様の声も時間をかけて丹念に拾いましたし、アジャイル開発で何度もレビューを行い、ブラッシュアップに努めました。実際に使うのは現場なので、一度使ったら便利で手放せないと思ってもらえるところまで持っていくつもりで開発しました。

過去に電子化が定着しなかったというお話もありましたが、従来のままでもいいじゃないかといった意見はありませんでしたか。

当初はそういう声もなかったわけではありませんが、従来の仕事のやり方は紙を前提としたもので、これからはデジタル前提で仕事のやり方を再構築する必要があります。産業保安を取り扱う私たちの部署は、経済産業省内ではコンサバティブな面があるのですが、今回のプロジェクトにはフレッシュな目線を持った若手も参加しており、話し合いを重ねながら部署としても徐々にマインド・トランスフォームができました。システムとしても使い勝手の良いものに仕上がったと思います。

産業保安分野のDXの方向性
産業保安分野のDXの方向性
従来の課題を解決し、真に使えるシステムを実現するために現場のマインド・トランスフォームが必要との考えから、単なる電子化にとどまらず、デジタルを前提とした新しい行政の仕組みへのアップデートを目指した

chapter 03「紙で申請していた時代があったんだ」
と言われる社会へ

保安ネットは稼働から1年が経過していますが、効果はいかがでしょう。

おかげさまで直近では月単位だと80%に近い利用率となっています。これは、行政を取り巻く環境が整ったということもありますが、産業界自体も変わらないといけないと実感しているからだと考えています。労働人口が減少する中で、新しいテクノロジーを使うことが事業者様の負担を減らすことになりますし、安全対策をしっかりやることは事故やトラブルを防ぐことになり、結果的に経営リスクの軽減にもなるはずですから。

産業界の発展という点でもDXの意義が大きいと捉えてらっしゃるわけですね。行政側としての捉え方はいかがでしょう。利用率80%ということは、業務効率化の実感も出てきていると思いますが、おそらく産業保安だけの話ではなく、その先にはデジタル前提の法整備という問題も出てくると思います。

おっしゃる通りです。実際に、保安現場へのデジタル技術の導入が進み、いわゆる「スマート保安」の世界になっていくことを見据え、安全規制のあり方を見直す時期に来ていると考えており、審議会などで検討をしているところです。こうした議論が進むと、例えば、AIを活用して審査がもっと効率化できるといったことも考えられますし、そうやって圧縮できた分のリソースは現場の立入検査や監督・指導等の安全対策に振り分けるといったことも可能になってきます。

貴省では「データ駆動型社会」という言葉を使われていますが、そうした法整備やリソース配分の最適化なども含め、デジタルの力を人の力にエンパワーメントする形で、より高いレベルの安全が担保されるような仕組みになっていくというイメージですね。今後は各省庁でもDXは確実に進んでいくと思いますが、目指す社会像があればお話しください。

今回の保安ネットは、次の時代の新しい産業保安行政を創るんだという意思、省内に先駆けた挑戦という意味でも、自分たちが引っ張るくらいの気持ちで取り組んできました。何年か経ったときに、「紙で申請していた時代があったんですね」と言われるくらい、デジタルが当たり前の社会になるといいなと思います。

私たちも同じ意識を共有する伴走者として、今後もご支援させていただきたいと考えています。本日はありがとうございました。

accenture
アクセンチュア株式会社
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