一般財団法人コージェネレーション・エネルギー高度利用センター(コージェネ財団)は今年9月、設立10周年を迎えた。コージェネ普及の軌跡や「2050年カーボンニュートラル」実現に向け果たす役割ついて、フリーキャスターの唐橋ユミ氏がコージェネ財団理事長の柏木孝夫氏にインタビューした。

省エネと災害時に活躍するコージェネ

唐橋ユミ氏(以下敬称略) コージェネ財団は設立10周年を迎えられました。おめでとうございます。改めて、コージェネレーション(熱電併給)システムとはどんなものか、教えていただけますか。

柏木孝夫氏(以下敬称略) コージェネは天然ガスやバイオガスなどを燃料に、電気と熱を同時につくり供給するシステムです。発電時の排熱を蒸気や温水に無駄なく使い尽くすカスケード利用で20%程度の省エネが可能となり、コストも低減できます。

唐橋 そのコージェネは、私たちの身の回りでどのように導入されていますか。

柏木 オフィスビルや商業施設が建ち並ぶ都心部では、コージェネを核とするエネルギーシステムが構築され、エリア内で熱を面的に融通しながら地域冷暖房などに活用されています。熱を多く使う工場や病院などへの導入も進んでいます。家庭用燃料電池「エネファーム」もコージェネの1つの形態です。国内では1980年代から順調に増加し、2020年時点の導入量は累積で1330万kWを超え、発電電力量においては日本全体の約6%を占めています。

省エネ性に加え、BCP(事業継続計画)を実現するレジリエンスなど多様な価値が評価され普及が進みました。

唐橋 コージェネはどのようにレジリエンスを発揮するのですか。

柏木 近年、災害が多発、激甚化していますが、コージェネは停電が起きた際にも耐震性に優れた中圧導管から供給されるガスによって自立的に発電できます。コージェネを組み込んだビルやコミュニティは周囲が停電に見舞われる中でも発電し、ビルや地域内の業務・生活が可能となります。東日本大震災では「六本木ヒルズ」、北海道胆振東部地震では「さっぽろ創世スクエア」、千葉県広域を襲った2019年の台風15号では地産ガスを利用する「むつざわスマートウェルネスタウン」などで活躍しました。

唐橋 コージェネはエネルギーを無駄なく使えて環境に優しい上に、防災やまちづくりにも貢献できるのですね。

カーボンニュートラルへの貢献

唐橋 では、そのコージェネの未来について教えてください。政府の「2050年カーボンニュートラル」宣言に向けて、どんなロードマップを描いていますか。

柏木 エネルギー政策においては、日本の実情を踏まえたリアリティのある政策として、2050年までの道のり(トランジション)が重要です。まず必要なのは、さらなる省エネの徹底です。消費エネルギーの削減は再エネ導入と同じ効果があり、即効性の高い脱炭素対策として極めて重要です。そして、再エネの主力電源化を図りつつも、バランスの取れたエネルギーミックスを実現することが求められます。

例えば、人間は血圧が高すぎたり低すぎたりした時、また脈が乱れた時には具合が悪くなり倒れます。電気も同じで電圧が高すぎたり低すぎたり、周波数が乱れたりした時には停電が起こります。太陽光や風力は天候の影響により発電量が不安定であり、補完・調整する仕組みが必要です。大規模電源とコージェネのような安定的な分散型電源が再エネとうまく共存・協調し、レジリエンスの高いエネルギーシステムを構築することが不可欠です。

唐橋 その将来像に向け、コージェネはこれからどのような役割を果たすのでしょうか。

柏木 2050年に向けては、分散型エネルギーシステムに組み込まれた高効率なコージェネが、再エネの調整役を果たしつつ一層の省エネと強靭化に貢献するでしょう。今後、IoTやAIなどを活用したDXが進み需要は高度化します。電力の使用を最適化する「デマンドレスポンス(DR)」や、小規模な発電設備やシステムをまとめて仮想発電所として機能させる「VPP(バーチャルパワープラント)」が普及し、生産者と消費者が一体化した「プロシューマー」が台頭する中でも、コージェネは調整役として重要な役割を担います。

その上で、CCUS(CO₂の回収・貯留・活用)の推進などによってコージェネの燃料が徐々に低炭素化され、やがてメタネーションガスやバイオガス、水素などへの転換で脱炭素化すれば、完全なカーボンニュートラル実現に貢献できます。

唐橋 2050年まではあと30年弱ほどです。その頃、私たちの暮らしにコージェネはどのように浸透しているでしょうか。

柏木 新築住宅・建築物市場ではエネルギー消費量ゼロの「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」や「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」、さらにコージェネやエネファームを搭載し、レジリエンスを加えた「ZEH-R」「ZEB-R」が普及するでしょう。各地に生まれるスマートコミュニティ内に構築されるマイクログリッドの安定電源としても定着し、ゼロカーボンシティーの要となっているはずです。

コージェネは太陽光、風力、バイオマスなどと共に地産地消のエネルギーシステムの核として、地域創生や地域活性化にも大いに貢献するはずです。

唐橋 大規模電源と分散型電源がそれぞれの役割を果たしながら再エネと共存し、カーボンニュートラルを実現する未来において、コージェネがいかに重要な存在であるかがよく理解できました。ありがとうございました。

柏木(かしわぎ) 孝夫(たかお) 氏
コージェネ財団理事長、東京工業大学特命教授/名誉教授

1946年東京都生まれ。70年東京工業大学工学部生産機械工学科卒業。79年博士号取得。専門はエネルギー・環境システム。経済産業省総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会長、基本政策分科会委員などを歴任。日本のエネルギー政策に深くかかわる。著書に『超スマートエネルギー社会5.0』など。

唐橋(からはし) ユミ 氏
フリーキャスター

福島県喜多方市生まれ。大学卒業後、テレビユー福島のアナウンサーとして活躍。現在TBS系列「サンデーモーニング」、TOKYO FM「ノエビアカラーオブライフ」、NHKラジオ第1「イチ押し 歌のパラダイス」などに出演中。

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