『世の中が変わるときは、料理をしよう。』と題したWebサイトが、「BRUTUS.jp」と「AJINOMOTO PARK」にオープンした。味の素社が考える食とウェルビーイング(Well-being)のあり方を、『BRUTUS』らしい切り口で編集した本企画は、早くも多くの男性の注目を集めている。今見直すべき料理の魅力とは何か。このプロジェクトに携わった3人のキーパーソンが想いを語る。

コロナ禍の今、「料理」に注目する理由

──『世の中が変わるときは、料理をしよう。』。この企画が生まれた背景と、タイトルに込めた想いをお聞かせください。

株式会社マガジンハウス
執行役員 第三編集局 局長
ブルータス編集部 編集長
西田 善太 氏

西田

世の中が変わるとき、私たちは足元を見直したり、行動を変えてみたりしますよね。じゃあコロナ禍の今何をする?って考えたときに、「料理」というのはすごくいいアクションだと思いました。料理は我々の根源的な営みに関わる「食」につながり、心と体、ライフスタイルを形作るもの。実は2011年の震災後にも、『BRUTUS』は「最高の朝食を。」という特集を作りましたが、そこには食や料理を見つめ直すことで、日常に立ち返ろうよという想いがあった。その流れで今回は、特にあまり料理をしてこなかった男性に向けて、味の素さんと一緒に本企画を立ち上げました。

岡本

味の素社がこの企画で目指すのは、「食にまつわる豊かな時間を創出」すること。料理でウェルビーイングに取り組むのが狙いです。最初に西田さんとお話したとき、そのコンセプトにピタリとハマる大きな共感が得られ、アイディアがどんどん広がっていった。これはいいものができるぞ、という予感がありましたね。

西田

料理って時短で作れるものもあれば、時間をかけて探求していく楽しみもある、実に振り幅の大きいカルチャーなんですよ。それを『BRUTUS』なりに“料理”して生まれたのが、『世の中が変わるときは、料理をしよう。』です。

『世の中が変わるときは、料理をしよう。』https://brutus.jp/special/funcooking

料理をすると男も女も幸せになる

──料理とウェルビーイングの関わりについて教えてください。

味の素株式会社
執行役員
食品事業本部 調味料事業部長
岡本 達也 氏

岡本

今はどちらかというと、時短料理や完全栄養食みたいなものが「善」とされる風潮がありますが、私はそれにすごく違和感を覚えていました。実際、自分が料理してみると、もう食材探しから楽しいし、作ったものをおいしいと言ってもらえるともっとうれしくなる。こういう時間の使い方こそ善なんじゃないかと考えていたところ、石川さんがそれを肯定する様々なエビデンスを紹介してくれました。

石川

外食に偏るよりも、自分で料理をした方がより健康的でウェルビーイングであるということは、昔から繰り返し確認されています。2019年に116ヶ国12万人を対象にした調査では、すべての国で女性の方が料理をする頻度が高かったのですが、その男女格差は国ごとにバラつきがあって、その差が小さい国ほど幸福度が高いというデータもあります。つまり、男性が積極的に料理をすることで、国全体のウェルビーイングが高まる可能性があるのです。調査によれば日本の幸福度や男性の料理頻度は必ずしも高くありません。そう考えると、日本の男性はもっと料理をした方がいい。

岡本

リモートワークになって、私も週3回ぐらい昼食を作ったりもしていますが、実際そういう男性が増えていると思います。

石川

まさにおっしゃる通りで、コロナ禍でもウェルビーイングが良好な人たちを調査してみたところ、みんなに共通するのが「料理」だったんですよ。しかも、それが「昼食」。

岡本

要は空いた時間に何をして過ごすかという話で、その中でも料理や食に関することっていうのは、ウェルビーイングを生み出すのにいちばんいい時間の使い方ですよね。

予防医学研究者
石川 善樹 氏

石川

時間に追われなくなったことで、あらためて見直されているのが「煮る」という行為です。日本はもともと「煮る」文化だったのですが、戦後それが「炒める」に変わった。強火で炒めれば早く作れますが、その分調理も忙しいものになってしまいました。でも、時間をかけて煮込む料理なら、放っておいてもおいしく仕上がるし、調理中に他のこともできる。家にいる時間が増えた今、ゆっくりと“ながら料理”を楽しむのも、幸せな時間の使い方だと思います。

西田

住宅建築の世界でも、家の中心がリビングからキッチンに変わってきています。玄関を開けるとすぐキッチン、という家さえ生まれています。アイランドキッチンやダイニングテーブルを家の中心に置くことで、食や料理が家族をつなぐ設計になっているんですね。それが、コロナでより顕著になった。ごはんを作って食べる空間が団欒の場だとしたら、そこに居場所をつくるには料理をしないといけないわけです。今まで料理をしてこなかった男性にとって、これは新しい一歩を踏み出すチャンス。最近は調理器具も発達しているし、レシピもたくさん出回っているので、まずはできることから挑戦してみてはいかがでしょう。

石川

料理は最初から最後まで基本ひとりでやる作業なので、ふだんの仕事とはまた違った達成感が味わえると思いますよ。

料理の魅力を伝える4つのコンテンツ

──料理をする楽しさを多彩な切り口で伝えてくれるのが、『世の中が変わるときは、料理をしよう。』。コンテンツの見どころを教えていただけますか。

西田

『世の中が変わるときは、料理をしよう。』は、4つのコンテンツで構成されています(図表参照)。ひとつは、俳優の永山絢斗さんが各界有識者と料理やウェルビーイングについて対談する「聞くレシピ」。第一回のゲストには、石川善樹さんにご登場いただいています。

『世の中が変わるときは、料理をしよう。』:Talk1 永山絢斗×石川善樹「ウェ ルビーイングの鍵は料理にあった!?https://park.ajinomoto.co.jp/special/well-being/talk01/

西田

また、「作りたくなるレシピ 料理ってこんなに楽しかったのか!」では、「鍋ひとつで作れる」「フライパンひとつで作れる」簡単料理のレシピを動画付きでご紹介。手順を省略せず動画に収めているので、初めての人でも迷わず作れるのがポイントです。おいしい料理ができ上がっていく様を環境映像のように楽しめる面白さもあって、個人的にもおすすめのコンテンツです。

  

「作りたくなるレシピ 今はなきあの名店の味を自宅で!」は、クック井上さんの人気連載を再録したもので、思い出の味を記憶から再現したレシピ集。物語の付いたレシピを作ってみたいと考えて実現した企画です。名店の味を復活させるというのも、料理のモチベーションにつながると思います。

  

最後の「美味求真2021」は、食にまつわる書籍紹介です。「公益財団法人 味の素食の文化センター 食の文化ライブラリー」所蔵の膨大なライブラリーの中から、食文化研究家の畑中三応子さんが11冊を厳選してくれました。文人に限らず、日本人は食べ物の表現に長けているので、おいしいものについて書かれた本は、それだけでエンタテインメント。ぜひその味わいを楽しんでいただきたいですね。

料理は唯一無二の作品。作ることが喜びに

──みなさんから読者へのメッセージをお願いします。

石川

今を生きるうえで欠かせないキーワードとして、「サステナビリティ」「ダイバーシティ」「ウェルビーイング」があります。僕は、この3つを象徴するのが「料理」だと考えています。食材がどこから来てどこへ行くのかを考察することはサステナビリティにつながるし、男性が料理をすることでダイバーシティの実践にもなる。さらに先ほど申し上げた通り、ウェルビーイングの視点からも料理は重要な役割を果たします。食は人生の大きなポーションを占めるテーマ。世界が大きく変わろうとする今、みなさんもぜひこの企画を通じて料理の楽しさ触れ、自分に合った“食のニューノーマル”を見つけてもらいたいですね。

岡本

料理ってやってみるとすごくクリエイティブな作業で、道具や段取りを工夫したり、色々実験してみたりと、男性の好奇心をくすぐる部分が結構あると思います。今回の企画をきっかけに、その楽しさを多くの男性に知っていただけたらうれしいですね。料理に目覚める男性が増えると、女性が自分のために使える時間も生まれて、家族みんながハッピーになる。ひいてはそれが日本全体のウェルビーイングにつながるのだとしたら、このプロジェクトが持つ社会的意義は非常に大きい。まさに味の素社が目指し、貢献できる分野でもあるので、これからも末永く続けていきたいと考えています。

西田

世の中が変わるときに大事なのは、能動的にアクションすることです。出勤時間がなくなり時間が余ったことで、ゲームや配信映画などに興じる人も増えましたが、そろそろそれにも飽きてきた頃。みんなコンテンツ疲れしているように見えます。だったら、自分でコンテンツを作ればいい。それが「料理」だと思うのです。唯一無二の自作コンテンツである料理を作ることで、新しい喜びを見出してほしい。そんな想いを込めた料理へのいざないを、『BRUTUS』らしく提案できたと自負しています。男性はもちろん、女性の方にもぜひ楽しんでいただきたいですね。そして女性のみなさんには、男性が作った料理を褒めてくださるようお願いします(笑)。

「食べる楽しさを、もっと。」をテーマに、味の素社が運営するレシピ・食情報サイト。1万件以上のレシピで新しいおいしさ届けるだけにとどまらず、毎日の暮らしを楽しく彩るコンテンツや読者参加型のイベント・プロジェクトを通じて、様々な食の体験を提案している。

AJINOMOTO PARK WEBサイト

マガジンハウスが発行するライフスタイル情報誌。1980年の創刊以来、独自の視点からワンテーマを掘り下げる特集で日本のポップカルチャーをリードし、高感度男性から熱い支持を集めている。扱うテーマはファッション、アート、フード、トラベル、本、映画など多彩。月2回発行。

BRUTUS WEBサイト