教育事業からビジネスを変える! 旗手・ベネッセの「デジタル革命」

株式会社ベネッセホールディングス 執行役員 / CDO 兼 グループDX戦略本部長 橋本英知氏

“赤ペン先生”の添削指導で知られる「進研ゼミ」を運営する株式会社ベネッセホールディングス。「添削=アナログ」なイメージが強いが、実は、事業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を精力的に推進する、この分野では「旗手」とも呼べる企業だ。どのようなアプローチで推進しているのか。グループにおけるDX推進の責任者である橋本氏に聞いた。

株式会社ベネッセホールディングス 執行役員
CDO 兼 グループDX戦略本部長

橋本英知氏

コロナ禍の「自宅学習需要」を追い風にデジタル型の通信講座が急成長

「教育・介護・保育・語学・生活」の分野を中心に、幅広い世代を対象にしたサービスを展開するベネッセホールディングスは、多様化する顧客ニーズに対応するため、事業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を精力的に推進している。「進研ゼミ」事業も例外ではない。会員は、入会時に、紙で学習する従来型か、専用タブレットを使って学習するデジタル型かのどちらかの受講方法を選ぶことになっているが、最近は、後者を希望する入会者が急増。コロナ禍における自宅学習需要を追い風に、新規入会者数も一気に増え、会員の61%の方がデジタル型を選択。「今や、紙での受講者のほうが少数派になりつつあります」と、同社執行役員の橋本英知氏は話す。

デジタル型が従来型と最も異なる点は、専用タブレットの導入により、視覚的・聴覚的な学習が容易になったこと。加えて、AIの学習機能により、ユーザー一人ひとりの習熟度に応じた出題や、個々の生活様式に合ったスケジュールの提案など、より「個別最適化」された学習を提供することが可能となり、受講者が一気に拡大した。

進研ゼミ デジタル型利用比率

※2020年4月時点

ベネッセグループのデジタル進化

DXを三つのフェーズに分け事業ごとに最適なゴールを設定

ベネッセDX推進体制

同社のデジタル化は、通信教育事業にとどまらない。小中高校を対象とした多様なアセスメントサービス、リカレント教育、さらには介護・保育の分野にも広がる。そこで同社では、これまで社内に散っていたデジタルに知見のある人材を集め、「デジタルイノベーションパートナーズ」と呼ばれる新組織を編成。そこから各事業部に人材を派遣し、コンテンツの見直しを図るなど、全社的にDXを推進している。

しかし、橋本氏は「すべてのサービスで一律にDXを進めようと思っているわけではない」と言う。それぞれの事業に“最適なデジタル化の度合い”があり、そこにある顧客のニーズを見誤ってはいけないというわけだ。

例えば、デジタルネイティブといわれる小中高生と、介護事業の利用者の満足度が高まるデジタルの活用法は当然異なる。そうした多様な顧客のニーズに寄り添うためには、幅を持たせた柔軟な選択肢が必要だと考えている。

そのため、同社では、DXを三つのフェーズに分け、事業ごとに何が最適かを見定めながら改革を進めている。一つ目のフェーズは、従来のサービスを段階的にデジタル化する「デジタルシフト」。二つ目は、オンライン・オフラインの手段を問わず顧客ニーズにこたえるためにデータ統合する「インテグレーション」。そして三つ目が、将来の市場の変化や破壊的イノベーションを見据えた「ディスラプション」だ。

顧客から見たサービスの強みや特性を考慮したうえで、各事業が最終的にどこをめざすべきなのかを明確にしていく―。ユーザーファーストの柔軟な姿勢が、同社の強力なDXを下支えしている。

介護事業「ベネッセスタイルケア」サービスナビゲーション

介護事業「ベネッセスタイルケア」サービスナビゲーションにより入居者管理

AI StLike

AIを活用した学習アプリ「AI StLike」

デジタル改革の真の目的は「よく生きる」の実現

その根本にあるのは、同社が大切にしている理念であり、社名の由来にもなっている「よく生きる」(ラテン語でbene=「よく」、esse=「生きる」の意)の精神だ。

「弊社の創業者である福武哲彦は、もともと岡山の尋常高等小学校の教員でした。過疎地に暮らす子どもにも、都市部と変わらぬ質の高い教育を届けたいという思いが、弊社の添削講座の出発点になっています。ですから、今後、どれだけ会員数が増えようとも、一人ひとりの子どもたちを見守りたいという気持ちに変わりありません。しかし、それには従来のやり方では限界があり、テクノロジーの力を借りる必要があります。われわれのDXの真の目的は、次世代の『よく生きる』を実現すること。さまざまなデータや知見を生かしながら、われわれに何ができるのか、これからも模索を続けていきたい」と橋本氏は強調する。

技術ありきではなく、あくまで顧客第一主義で進むベネッセのデジタル革命。新たな「よく生きる」の実現に向けて、さらなる事業改革に期待が高まる。

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進研ゼミ専用タブレット

株式会社ベネッセホールディングス

株式会社ベネッセホールディングス

本社 〒700-0807 岡山県岡山市北区南方3-7-17

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