医療のニーズが満たされていないがん治療において、革新的な医薬品を相次いで導入しつづけるグローバル・バイオファーマ、ブリストル マイヤーズ スクイブ。「がん免疫療法」という新たな治療法を確立させ、アンメットニーズへ挑戦する。

「免疫チェックポイント阻害剤」を用いたがん免疫療法

「免疫チェックポイント阻害剤」を用いたがん免疫療法

京都大学医学研究科附属
がん免疫総合研究センター長
京都大学高等研究院 副院長・特別教授

本庶佑
京都大学医学研究科博士課程修了後、米国のカーネギー研究所、米国国立衛生研究所で客員研究員を務め、1974年帰国。東京大学、大阪大学を経て1984年から京都大学医学部教授、医学部長などを歴任。2018年、ノーベル生理学・医学賞受賞。

──がん治療で注目されているがん免疫療法についてご説明ください。

本庶佑氏(以下、本庶) 私たちの体は、免疫機構により異物を排除する仕組みがあります。がんは、遺伝子が変異した細胞であり、体にとっては異物として認識されます。そのため、がんに対しても通常であれば免疫機構により排除する仕組みが成り立ちます。しかしやっかいなことに、免疫機構の監視の目から逃れる能力を備えたがん細胞が出現すると、免疫機構により排除されず、増殖してしまいます。もともと免疫細胞には、暴走して正常な細胞までも排除しないようブレーキの役割を担う機構が備わっており、それを免疫チェックポイントと呼びます。がん細胞は、自らを守るためにこの免疫チェックポイントを介して免疫細胞の働きにブレーキをかける能力を獲得し、免疫細胞からの攻撃を回避して増殖していくことがわかりました。そこで、がん細胞によって免疫細胞にかかったブレーキを外す役割を持つ治療薬として、「免疫チェックポイント阻害剤」が開発されました。

ジャン=クリストフ・バルラン氏(以下、JC) 免疫チェックポイント阻害剤は、近年のがん治療を大きく変えた治療薬です。本庶先生は、PD-1免疫チェックポイント阻害を発見された功績によりノーベル生理学・医学賞を受賞され、その発見が、がん免疫療法の礎を築きました。サイエンスの画期的な進歩により、医療は目覚ましい発展を遂げていますが、未だ十分な治療法がない深刻な病気と闘う患者さんがいらっしゃるのも事実です。当社では、「深刻な病気を抱える患者さんを助けるための革新的な医薬品を開発し、提供する」というミッションの下に活動しています。がん領域は、免疫系疾患領域、心血管疾患領域、線維症と並ぶ当社の重点疾患領域の一つであり、患者さんの人生に違いをもたらす治療薬の開発を目指して研究を進めています。

本庶 がん領域では、様々な種類の治療薬が研究開発されており、その進歩には目覚ましいものがあります。免疫チェックポイント阻害剤の研究では、従来の化学療法や現在開発段階にある新たな治療薬と一緒に使用する様々な取り組みが世界中で行われています。まだ解明されていない点もありますが、今後の研究開発によって、より多くの患者さんが不治の病から解放されるでしょう。

オープンイノベーションによるアンメットニーズへの挑戦

ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社
代表取締役社長

ジャン=クリストフ・バルラン
リヨン大学で獣医学の博士号を、マンチェスタービジネススクールで経営学修士号をそれぞれ取得。複数の製薬会社で活躍した後、2012年ブリストル マイヤーズ スクイブに入社し、17年11月から現職。

──今、なぜオープンイノベーションが必要なのでしょうか。

JC がんに対する新たな治療法として、治療薬を組み合わせて“一緒”に使うというお話がありましたが、私たちは外部の研究機関や企業と“一緒”になって新たな治療法の研究開発に取り組んでいます。現在、固形がん、血液疾患、心血管系疾患、免疫系疾患、線維症、神経系疾患の6つの領域に重点を置き、開発パイプラインの強化に努めています。これまでも外部機関との強固なパートナーシップを構築し、研究開発を行ってきました。実際、米国ブリストル マイヤーズ スクイブのブロックバスター20品目のうち、12品目が外部機関とのパートナーシップにより市場に導入されたものです。また、開発パイプラインの約60%が提携品目です。このように、私たちはオープンイノベーションを推進することで研究開発スピードを加速させるとともに、互いの強みを発揮することによって、革新的な医薬品を世の中に出していくことができると考えています。

本庶 先ほど述べた免疫チェックポイント阻害剤を用いたがん免疫療法は、効く患者さんと効かない患者さんがいます。その原因どころか、先ほどから述べているがん免疫についても未だに解明されていないことが多くあります。これまでに免疫細胞の働きにブレーキをかける複数種類の機構が存在することがわかり、研究開発が進み、新たな治療薬としての候補が誕生しました。しかし、臨床試験では期待するほどの効果が得られなかったりするものもありました。今後もトライ・アンド・エラーを繰り返しながら、新たな治療薬が開発されていくものと推測します。オープンイノベーションの推進によって、がん治療におけるアンメットメディカルニーズに応える新たな治療法の創出、さらに新たな治療法をいち早く困っている患者さんに届けられるようになることに期待しています。

──今後の展望や期待されていることを教えていただけますか。

JC 日本国内では、2016年から研究機関や企業との共同研究機会を模索する「ジャパン・オープン・イノベーション」(JOIN)を実施し、新たな革新的治療法へとつながる可能性のあるイノベーションを有する国内のバイオテクノロジー企業やアカデミア研究機関との連携を模索しています。がん治療において、がん免疫療法は世界中で有望視されており、産学ともに様々な研究が行われています。今後もさらなる研究に期待しているところです。本庶先生のご研究が若手研究者を鼓舞し、先生のリーダーシップの下で研究に取り組む若手研究者が増え、その活躍も楽しみです。

本庶 少し前までは免疫についての研究が下火となっていました。しかし、最近では若い世代も含めて多くの研究者が様々な課題に取り組んでいます。オープンイノベーションは私たちアカデミアにとっても非常に魅力的です。産学連携においては、アカデミアに不足しているものを企業がサポートし、企業のニーズをアカデミアが補完するなど、双方の知識や資産のギャップを埋める相互補完が重要なカギとなります。私もこれまでにブリストル マイヤーズ スクイブを含め複数の企業と共同研究を行ってきました。企業とアカデミアが良好な関係を築き、将来的にも産学連携による共同研究が活発に行われていくことを切望します。




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