新型コロナウイルスの感染拡大を受け、大きな方針転換を迫られているビジネス現場。在宅勤務やリモートワークが定着したことで、業務フローのデジタル化も急速に進展している。コロナ禍で必要性が顕在化した領域の1つが「電子契約」だ。仕組みそのものは以前から存在していたが、コスト削減に加えて感染防止、ビジネスの持続性担保などのニーズが加わったことで、注目度が高まっている。電子契約のメリット、課題、そして導入する際のポイントとはどのようなものなのだろうか。
従来の紙の書面と印鑑に代わり、電子データと電子署名で締結する電子契約が注目されている。背景にあるのは、新型コロナウイルスの感染拡大だ。多くの企業が在宅勤務やリモートワークを導入する過程で、契約書や請求書など「紙の書類に押印するためだけに出社した」という声も聞かれ、デジタル化の遅れが顕在化している。
20年前から企業間のEDI(電子データ交換)、電子契約サービスを通じて業界を牽引してきたコンストラクション・イーシー・ドットコムの山口 重樹社長(NTTデータ代表取締役副社長執行役員)は、電子契約の現状について次のように語る。
「ビジネスに限らず押印の習慣が根強く残っていることが、日本で電子契約の普及が遅れた原因の1つです。電子署名法の施行は2001年4月ですが、法令が整備されても、長年続く習慣からはなかなか抜けられませんでした。デジタル化に対するセキュリティ面の不安もあったと思います。技術は強化され、サービスも多様化しているところに、在宅勤務やリモートワークの普及、政府による押印廃止の推進が重なり、電子契約はこれから急速に普及が進むのではないでしょうか」
電子契約のメリットについて改めて確認してみよう。分かりやすいのは業務効率化とコスト削減である。書面での契約には、原本の印刷、押印、送付などのプロセスがあるが、電子契約ならこれらを簡略化し、契約業務を効率的に行える。
「紙の書類は保管するのも、検索するのにも手間がかかりますが、クラウド上でデータを管理すれば、保管などに関わる作業も必要ありません。また、書面契約に必須だった印紙税の対象にならないため、コスト削減にもつながります」と山口氏は語る。
業務プロセスのデジタル化となるとコストも気になるが、長期的に見れば電子契約によるコスト削減効果のほうが大きい。では、契約や押印に関するすべてを電子化すれば万事解決かといえば、「業務フローを俯瞰的に精査する必要があります」と山口氏。例えば税務や法務に関わる他社との契約書と、社内稟議書では重要度に差がある。
「電子契約サービスにも種類があり、法的な証拠力が求められる重要書類には、当事者型と呼ばれる電子契約サービスを使い、日常的な業務には簡易的なサービスを使うなどの対応も必要だと思います。当事者型のほうが法的効力は強いのですが、以前は電子認証局が電子証明書を発行する際に本人確認の住民票などが必要であり、さらに契約利用時はローカル署名(署名にICカードやUSBトークンが必要)により操作面で煩雑だったことも、普及を妨げる要因となっていました」(山口氏)
では、契約書などの重要書類を電子化するにはどうすればいいのだろう。1つの答えになるのが、コンストラクション・イーシー・ドットコムが提供する電子契約サービス「CECTRUST-Light」だ(図1)。
ポイントは安全性と利便性のバランスである。電子契約に求められるのは「作業はなるべく簡潔に、セキュリティは強固に」。CECTRUST-Lightは、前述した当事者型の電子契約サービスだが、初期申請時に会社の存在確認書類を提出すればよく、契約利用時にクラウドにログインして行うリモート署名を採用することで、導入時のハードルが下げられている。
利便性を高めるために安全性を犠牲にするのでは意味がないが、建設業法で規定する技術的基準を満たすものとして、国土交通省の確認も得ている。つまり、安全性の高さは公的にも認められているのだ。
「もう1つの大きな特徴は、片側のみの費用負担で利用できる点です。A社がB社と契約を交わす時、両社が同じ電子契約サービスを利用する必要があります。例えばA社は既に利用し、B社は利用していない場合、B社に導入コストがかかると、利用を躊躇するかもしれません。CECTRUST-Lightは、A社が導入していれば取引先企業にコストの負担はないため、導入ハードルが格段に下げられます。取引先とのやりとりを増やしながら、業務効率化を図ることも可能です」と山口氏は説明する。
コンストラクション・イーシー・ドットコムの事業実績も、CECTRUST-Lightの信頼性を担保する証となっている。同社は20年前から建設業界向けのEDIサービスを展開し、電子契約サービスも建設業界を中心に提供を進めてきた。
建設業界はデジタル化を進めにくい業界の1つといわれている。大規模開発になると数多くの事業者との契約が必要になり、金額も大きくなる。小さなミスがクリティカルな状況を招く領域で、20年間、トラブルなしでデジタル化を進めてきた実績を基に、様々な業界に提供する。それがCECTRUST-Lightなのだ(図2)。
建設業界では、大成建設がいち早く導入して業務効率化、コスト削減を実現しており、他業界でもNTTグループ、高速道路関連会社、空港関連会社やそれらの取引先など、約4000社の導入事例がある。この数字も信頼性の証といえるだろう。
電子契約サービスの提供で、同社は社会にどのような価値を与えようとしているのだろうか。
「電子契約は、企業のデジタル化を支える基盤となるものと考えています。昨今のDXにおいても、RPAなどを活用したバックオフィスプロセスや、対外企業との受発注プロセスのデジタル化が進んではいますが、最後の契約部分におけるデジタル化ができておらず、契約プロセス全体でのデジタル化のネックとなっていました。
電子契約サービスを導入することで、契約行為自体の業務効率化はもちろんですが、契約プロセスの一気通貫でのデジタル化により、一連の契約関連情報をデータ化することができるため、契約の参照や活用、標準契約の推進などが可能となり、DX化をさらに進めて行くことができるようになります。
電子契約サービスというインフラを活かして、BtoB領域のデジタル化を支えていける存在になれればと考えています」と山口氏は語った。