——アドビと電通デジタルはパートナーシップを組み、ここまでご説明いただいた消費行動の変化に対応した顧客体験の提供に取り組んでおられます。それぞれの強みを活かす形でのパートナーシップだと思いますが、まずはアドビプロダクトについて解説をお願いします。
安西もともと数年前まで「Adobe Marketing Cloud」というサービスを提供していましたが、顧客体験の重要性が高まってきたことを受けて、CXM(顧客体験管理)が今後どうあるべきかを検討し、新たなプラットフォームとして「Adobe Experience Cloud」へとブランドを昇格しました。「Adobe Experience Cloud」は、コンテンツ管理とユーザーデータ管理の両方が統合されている点が最大の強みです。アドビにはPhotoshopを筆頭とするクリエイティブツールがそろっているので、コンテンツ制作のスピード化やAPIで連携し画像の自動生成なども可能ですし、データを基にコンテンツを配信するシームレスなフローも提供できます。また、先進的なプラットフォームとして、AIや機械学習への対応やエコシステムとしての機能、さらにはプライバシーに関するガバナンスの強化なども考慮した設計となっています。
小林クリエイティブも含めたソリューションが提供できるという点で、アドビさんは唯一無二といっていい存在ですよね。また、単なるテクノロジーではなく、ビジョナリーな世界観があるとも思っています。先頭に立って顧客体験の転換を牽引されているので、私たち電通デジタルも刺激を受けています。
——続いて、アドビとパートナーシップを組むうえでの電通デジタルの強みについてお願いします。
小林電通デジタルがアドビさんとパートナーシップを組むに当たっての強みという意味では、SIerやITコンサル会社とは異なり、クライアント企業のマーケティングや広告などのコミュニケーション分野を手掛けてきたという点が挙げられます。ペイドメディア活用も含め、コンテンツによる顧客体験づくりを得意としているので、アドビプロダクトとの相性も良いのだと思います。
また電通デジタルは、アドビプロダクトの中ではコンテンツ管理ソリューション(Adobe Experience Cloud)や分析ソリューション(Adobe Analyticsなど)を得意としてきましたが、コマースソリューション(Adobe Commerce、旧Magento)を得意とする電通アイソバーと2021年7月に合併したことで、包括的にアドビプロダクトを提供できる日本随一のプレーヤーになったと自負しています。
安西当社が主催するカンファレンス「Adobe Summit 2021」でも、日本及びアジア太平洋地域における「Digital Experience Solution Partner of the Year」として国内電通グループさんを選出させていただくなど、日本だけでなくグローバル市場でも国内電通グループさんとは早くからパートナーシップを組ませていただいています。これは今後も協力関係をお願いしますというラブコールでもありますが(笑)。
COVID-19の拡大による消費行動の変化を受け、Afterワクチンの顧客体験を実現するためには、マルチ接点でのシームレスな体験を実現するヘッドレス対応に加え、顧客データやデジタルアセットの管理が必須。アドビプロダクトの進化と電通デジタルの強みの相乗効果が、次世代の顧客体験を生む。
——両社のパートナーシップの相性の良さを先ほどお伺いしましたが、どのような役割分担なのでしょうか。
安西アドビプロダクトはあくまでプラットフォームですから、これを武器としてどう効果的に使うかが重要です。一言で「Afterワクチンの消費行動に対応した、最適な顧客体験」と言っても、それは企業ごと、さらには一人ひとりの顧客ごとに異なるわけで、ツールやソリューションを導入すればそれで万事解決というわけではないんですね。最適な顧客体験を提供するために、どのようなデータが必要で、どのようなコンテンツを作って、どのように運営するかという「絵」を描くことが必要なのです。この部分を戦略構築力に長けている電通デジタルさんにサポートいただくことで、当社のプロダクトもより良い形で活用されると考えています。
小林今後はオムニチャネルに対応するため、個人データとデジタルアセット、それぞれのマネジメントが必須になってきます。アドビプロダクトは、こうしたビジョンをベースに、クリエイティブ制作からコンテンツ配信までを一気通貫で提供できる強みがあるので、私たちにとっても、絵を描きやすいんです。
——両社の連携でどのような顧客体験を実現できるとお考えでしょうか。今後の展望なども含めてお話しください。
小林リアルとデジタルの融合はあくまでも手段であり、重要なのは「顧客にとって価値のある体験になっているかどうか」です。例えば、アパレルブランドの会員が既にサイト上で自分のサイズを記入しているなら、店舗でそのデータを基に接客をしてもらうことが価値になりますし、直近の消費行動の情報が反映されていれば、満足度はさらに上がります。
安西BOPISの例としては、位置情報を使って顧客の来店時間を予測し、お渡しする商品を準備しておくといったことが既に実現していますし、私たちの調査では、顧客の側も、データを使ってより良い体験を提供してほしいと考えている、という結果が出ています。つまり、まずは絵を描く、つまり体験を設計することが先決なのです。そこで初めて必要なデータが分かってくる。過去のマーケティングでは、設計がないままデータを集めていたので、解像度の低い活用がしにくいデータばかりになってしまいがちでしたが、必要なデータを管理することで、こうした課題も解決できます。
小林顧客接点横断での体験を提供できるかどうかというのは本当に重要で、この部分をアップデートできていないと、顧客の支持を失いかねません。企業の成長を支える新しい経営イシューになり得るポイントだと思います。
安西私も同じ考えです。企業の差別化は、以前は売っているモノ自体でしたが、そこにサービスが付加され、さらに現在は顧客体験が重要な要素になりました。電通デジタルさんとのパートナーシップで、日本企業のアップデートに貢献できればと思っています。