国を挙げてのデジタルトランスフォーメーション(DX)推進が思うように進まない理由の一つに、人材の不足が挙げられる。そこで電通デジタルは、DX人材の創造・育成を目的とした実践的なDX講義を東西3大学で開設。大阪大学でも、全15回の講義が大好評のうちに終了した。その取り組みの意義と成果について、教授陣と共に振り返る。
——大阪大学の経済学研究科・経済学部における教育の方針と課題、また実社会で必要とされるDXの学習環境について教えてください。
大阪大学・開本浩矢教授(以下、開本)経済学は数学をベースとしており、文系というより理系に近い学問。ですから数学的な思考や統計は必修授業としてやっているのですが、一方で、その知識が実社会でどう活用されるのかを体感する機会がない、というのが課題としてありました。
大阪大学・ウィラワン ドニ ダハナ教授(以下、ドニ)DXについては、戦略的な観点ではなく、断片的な知識として学生たちは会得していると思います。例えば、私の授業でも、オンラインショップで集められたデータを実際に触って、分析をして、マーケティング課題を探るといったことはやっていますが、あくまでも部分的な概念でしかない。より実務的、体系的にDXを教えるというのは大学教育では難しく、カリキュラムも存在していませんでした。
開本そうした中、電通デジタルからご提案いただいたのが、今回のDX講義です。大学ではいったん構築したカリキュラムを変更できないのに対し、DXは日進月歩の世界。そのスピード感のギャップを埋めるものとして、最先端の実務事例を踏まえたDX講義の実施は、大阪大学にとっても渡りに船でした。本日全15回の講義を終えたところですが、最後まで学生たちの食いつきは非常に良く、その潜在需要の大きさに改めて驚いています。
ドニDX講義では具体的な事例を基に授業が展開されていくので、抽象的な理解だけで終わらないんですね。だから学生たちも熱心に参加する。経済学部だけでなく、他学部からも受講希望者が殺到したほどです。

開本 浩矢教授
大阪大学大学院経済学研究科長
経済学部長
大阪大学 教授
1991年大阪大学経済学部卒業、93年神戸大学大学院で経営学修士、2006年経営学博士。95年神戸商科大学(現兵庫県立大学)助手、講師を経て、07年同大学経営学部教授。経営学部長・経営学研究科長等を歴任し、17年に名誉教授、大阪大学大学院経済学研究科教授に就任。22年より現職。

ウィラワン ドニ ダハナ教授
大阪大学
経済学研究科 教授
1976年インドネシア・ジャカルタに生まれる。2006年東北大学大学院経済学研究科博士課程修了。06年大阪大学大学院経済学研究科講師、14年准教授、18年教授就任。経営学博士。専門はマーケティングと消費者行動。共著に『マーケティングの統計分析』(朝倉書店)。
——企業のDX支援を推進する立場の電通デジタルが、こうした産学連携の取り組みを始めた理由をお聞かせください。
電通デジタル・髙山隼佑氏(以下、髙山)新卒採用の面接官をしていると、学生さんたちからマーケティングや経済学という話は出てきますが、なかなかDXという言葉が出てこない。世の中全体が大きく変化し、これから企業も変わっていく必要がある中、それをけん引していく若者たちが少ないことは大きな社会課題だと感じていました。そこで、学生のうちからDXへの理解を促すことで、将来の人材創出に寄与し、日本社会の活性化につなげたいという想いから、今回の取り組みを実施しました。