コロナ禍で観客減・グッズの売り上げ減という苦境に立たされる中、オンラインショップを強化した阪神タイガース。構想から実装までを伴走する電通デジタルと共に、どのようにデータを活用し、業績を改善したのか。そしてこれからのファンの体験価値向上に向けて、どのような施策を描いているのか。その取り組みを紹介する。
——阪神タイガースのオンラインショップ「T-SHOP」では、2022年度からSalesforce Marketing Cloud Engagement(以下、Engagement)を活用したEC強化の取り組みをされています。Engagement導入のきっかけや理由はどのようなものだったのでしょうか。
阪神タイガース・湯川知子氏(以下、湯川)T-SHOPは、会員登録制度のため顧客データ自体は集まっていたのですが、データの有効活用という点でのノウハウがないという課題がありました。また、20年から新型コロナウイルス感染症の影響で球場の入場制限があり、球場でのグッズの売り上げが落ちる中、オンラインショップでカバーする必要があったことから、既存会員のOne to Oneマーケティングを強化するため、Engagementの導入を決めました。
球団公式オンラインショップのT-SHOPでは、人気商品ランキングや新着商品だけでなく、マスコットのトラッキーや選手がグッズを紹介する動画コンテンツ「ToraTube」、OBを起用したライブコマースなど、充実した内容となっている
——Engagement導入後、パートナーとして電通デジタルを選んだのはなぜですか。
湯川顧客データを効果的に活用するには、適切なシナリオが必要です。コロナ禍が長引く中で、早急に売り上げを伸ばしたいという気持ちはありつつ、当時の私たちにはシナリオを作る経験値がなかったため、なかなか実装にこぎ着けられないという悩みがありました。そこで、実績のあるパートナーさんにお力添えをいただく必要があると感じ、数社から提案を受けた中で、提案力が突出していた電通デジタルさんにお願いすることになりました。

湯川 知子氏
株式会社阪神タイガース
事業本部 事業統括
営業部(メディアプロモーション担当)
入社以来、一貫して球団営業部に所属し、チケット販売やファンクラブなどのセクションを経験。2019年にEC担当となり、T-SHOPへのEngagement導入やデータを活用した顧客体験価値向上に携わる。23年から現職となり、顧客データを活用したマーケティング、また、球団メディア(HP・SNS)での情報発信業務に従事。
——電通デジタルとしては、どのような観点で提案したのでしょうか。
電通デジタル・西田健太朗氏(以下、西田)球場での観戦ができなくなったことで売り上げが落ち込んだという課題にも向き合いつつ、私たちとしてはもう一点、タイガースファンの視点も重視しました。球場に行き、好きな球団を応援して盛り上がるという顧客体験を奪われたファンの気持ちは非常に重要な要素です。これまでも施策自体はいろいろと取り組まれていましたが、これらを点ではなく線や面に広げ、顧客体験にしっかりつなげていくという意識でシナリオを考えました。
電通デジタル・小林冴基氏(以下、小林)主に構想部分を西田、実装部分を私が担当しましたが、実現まで一気通貫でできるのは電通デジタルの強みだと思っています。また、阪神タイガースさんとのコミュニケーションも重視した上で、ご提案に対してフィードバックを頂き、ブラッシュアップしながら方針を固めていきました。
湯川いろいろな要望も出させていただいたのですが、丁寧に反映していただきましたし、目先のことだけでなく長期的なビジョンも明確にしてもらえたことで、私たちとしても先を見通せるようになりました。球場でもリアルのグッズショップでも販売が止まるというのは、球団としても初めての難局だったので、救いの手を差し伸べていただいたという思いです。