データ分析とAIを活用し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現する。今や、すべての企業にとって事業戦略の要(かなめ)であるDXだが、日本企業は世界と比べて遅れているという指摘も多い。この現状をどう打破すれば良いのだろうか。書籍『データ分析・AIを実務に活かす データドリブン思考』(ダイヤモンド社)の著者であり、滋賀大学 データサイエンス学部 教授の河本薫氏に、電通デジタルの大木真吾氏が、課題克服の秘訣を聞いた。
電通デジタル・大木真吾氏(以下、大木)最初に河本先生とお会いしたのは、確か7、8年前ですね。河本先生が大阪ガスにいらっしゃったころで、その後も時折、対面で意見交換をさせていただいてきました。このたびは、電通デジタル ビジネストランスフォーメーション部門のデータビジネスアドバイザーに就任いただき、ありがとうございます。
滋賀大学教授・河本薫氏(以下、河本)大木さんには、2020年に半年間ほど、私のゼミ生12人の指導にご協力いただきましたよね。実データを使って事業課題を解決するというテーマで、小売店舗のスマホアプリデータを分析しました。私は、マーケティング的な観点からの指導はできなかったので、非常に助かりました。
大木今、企業には、様々なデータが蓄積されるようになってきましたが、そのデータをうまく事業に生かしている企業もあれば、その手前で悩みを抱えている企業も多いと感じています。うまくデータを活用し切れていない企業の共通項は何だと考えますか。
河本それは、データ基盤が整っているか/データサイエンティストがそろっているかの違いではなく、その企業が“「Why」にどれだけ執着して考える風土を持っているかどうか”に尽きると思っています。例えば、前例を覆すような結果がデータから得られたとしても、社内の忖度でWhyがかき消されてしまうような風土では、どんなにデータを活用する機運があってもうまくいかないですよね。

河本 薫氏
滋賀大学 データサイエンス学部 教授 兼
データサイエンス教育研究センター
副センター長
1991年、京都大学応用システム科学専攻修了。大阪ガスに入社。98年、米国ローレンスバークレー国立研究所でデータ分析に従事。2011年、ビジネスアナリシスセンター所長に就任、大阪ガスにおいてデータ分析組織を定着させた。初代データサイエンス・オブ・ザ・イヤーを受賞。18年4月より現職。博士(工学、経済学)。
大木確かに、課題を解決したいという意識が高いほど、現れた結果に対するWhyに執着しますし、その解明にはデータの力が重要になります。そういうマインドを持つためには「当事者意識」が大事になってきますよね。
河本ビジネスの当事者が常々Whyを追求できていれば、おのずとデータを使いたくなるはずなのです。「モノづくり」において、工場で不良品が出るとWhyに執着し、その改善マインドが強いのは日本の良いところなのですが、一方で「コトづくり」になると日本人はWhyの意識がすごく弱くなってしまいがちです。
大木「モノからコトへ」は、様々な観点でキーワードとなる言葉です。我々電通デジタルも、多くの企業に対し、データに立脚した、ユーザーの新しい体験づくりのお手伝いをしているところです。
河本ただ、外部からWhyを追求しましょうと言っても、そう簡単には変わらないですよね。目指すべき理想は忘れずに、現実的に足元でできることは何かを考えなければなりません。
大木その理想と現実をどう埋めていくかも、私たちがお手伝いするポイントなのかもしれないですね。