日経ビジネス電子版 SPECIAL

激変の時代に顧客に選ばれ続けるためのDX“Alwaysオンライン”を
前提とした
顧客体験のリデザイン

笹氏 小林氏笹氏 小林氏
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大により消費行動はインターネットに大きくシフトし、企業は対処に迫られている。Eコマースなどのデジタルチャネル強化にとどまらない、真の顧客体験変革の必要性を、日本のデジタルマーケティングをけん引してきたセールスフォース・ドットコムの笹俊文氏と電通デジタルの小林大介氏が語り合った。
chapter01

COVID-19によって一気に本格化した
日本企業のOMOへの取り組み

――日本企業のデジタルマーケティングは、どのように進化してきたのでしょうか。また、それが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大によってどう変化しましたか。

COVID-19拡大前から、OMO(オンラインとオフラインの融合)という言葉が注目されていました。例えば日本の小売業界はリアル店舗を重視してきましたが、スマホの登場によって1人1デバイス時代が訪れ、消費者はオンラインでの購買体験の便利さを知りました。そのオンラインの心地よさが、企業が提供する体験に対する期待値として定着し、リアル店舗でも同じ水準の便利さや心地よさを求めるようになった。これが、企業がOMOに向かわなければいけない理由だと思います。

とはいえ、日本はリアルのサービスインフラが整っていてサービス品質が高かったこともあり、中国のように「OMO型体験が一気に普及浸透する」という現象は起きず、OMOという言葉は知られても、まだ概念先行の感がありました。

しかしコロナ禍によって、多くの小売企業がリアル店舗の売上激減に直面し、金融や自動車のような高関与商材においても対面接客の機会が激減するなど、顧客との関わり方の抜本的な見直しを迫られています。顧客はリアルの何倍もの時間と頻度でオンラインによって企業と接触するようになり、しかも来店などのリアル接触時にもスマホによってオンライン状態であり続けているので、「“Alwaysオンライン”を前提として、リアル接点も含めた顧客体験全体をいかにリデザインするか?」が強く問われています。

企業がこのような状況に置かれていることから、当社が相談を受けるプロジェクトの「本気度」も劇的に高まっています。かつて「PoCごっこ」と揶揄されたような雰囲気は消え、初期段階から経営陣が深くコミットするケースが増え、スケール感、スピード感も格段に高まりました。本質的DXに踏み出さないと顧客をつなぎ止めることはできないと分かり、多くの企業が動き出しています。

企業経営者は、「やらなければいけない」と気づいていると思います。ですが、単にオンラインのチャネルを作ればOMOが実現できるわけではありません。消費者がオンライン、オフラインのどちらに現れても、同じように優れた体験を提供するためには、顧客情報を統合する基盤と、それをリアルタイムに活用できるアプリケーションが揃っていなければいけないのです。商品やサービス購入後のサポートや、次の買い換えアドバイスまでのすべてを、一気通貫に提供することが重要です。

その全体をデザインするのが今日のマーケターであり、社会状況やテクノロジーが変わっても企業と顧客の良好な関係を維持できる存在、つまり、何が起きても心地よい音楽を流し続ける指揮者のような存在でなければいけません。

まさにその通りです。マーケティングというと、どうしても広告、宣伝などの「コミュニケーション」に狭く捉えがちですが、本来は商品やサービスのデザイン、プライシング、チャネル戦略などを包含した非常に広い概念です。

2016年に設立された当社「電通デジタル」の「デジタル」には、狭義のマーケティングにとどまらず、デジタルによる企業全体の変革によって新たな顧客体験創出を支援する企業になる、という思いを込めています。当社の使命は、クライアント企業と顧客との触れ合いのあらゆるポイントにおいて一貫性のあるパーソナルな顧客体験の実現を支援することだと考えています。

笹氏
PROFILE
セールスフォース・ドットコム
専務執行役員 ジェネラルマネージャ
デジタルマーケティング・ビジネスユニット
笹 俊文
コンサルティング企業、複数の外資系IT企業を経て、2011年セールスフォース・ドットコムに入社。公共・金融業界を担当する営業技術部を統括し、2014年6月よりMarketing Cloud本部を立ち上げる。現在はすべてのB2C企業向け製品の営業を統括する。
chapter02

プラットフォームの進化が
顧客体験変革の実行スピードを高める

――電通デジタルとセールスフォース・ドットコム(Salesforce)は、マーケティング分野でパートナーシップを強化しています。その理由をお聞かせください。

両社の協業の開始は、2014年にさかのぼります。この年、Salesforceはマーケティングソリューションを日本でリリースしました。当時の日本には、Eメールを送るだけの製品など、機能別のアプリケーションはありましたが、統合的なマーケティングソリューションは存在しませんでした。当社としても新しいジャンルの製品です。一緒に導入を支援してくれるパートナー探しもスタートしました。

2014年は、顧客や見込客とのOne-to-Oneマーケティングを実現するクラウドソリューションが相次いで日本市場に進出した年で、有力と思われるソリューションはすべてリサーチしたのですが、日本でもCRM(顧客関係管理)ソリューション分野で圧倒的なシェアを持つSalesforceの「Marketing Cloud」に優位性と将来性があると考え、そのリリースと同時に導入パートナーとして電通グループは手を挙げたのです。

当社は日本のマーケティング製品の事業を立ち上げるタイミングで、部門の人数がまだ10人程度という状況でしたが、電通グループのようなマーケティングに精通した企業をパートナーに迎えられたことは非常に幸運でした。そこから現在に至るまで、両社の協業はさらに深くなっていきました。

――「Salesforce Partner Summit 2020」で、「Marketing Cloud Partner of the Year」を受賞したことからも、両社の強固な関係がうかがえます。

前年に続き、2年連続の受賞となりました。この賞は「Marketing Cloud」の導入・活用のパートナーとして当社が最も多くのクライアント企業に選ばれていることの証であり、大変うれしく、これまで進めてきた方向性が間違いでなかったことを確信しています。

また、消費のECシフトを受けてSalesforceの「Commerce Cloud」の導入も急速に増えていますが、当社は「Commerce Cloud」の国内トップクラスの導入・運用実績を持つ電通アイソバーと2021年7月に合併します。これにより、「Marketing Cloud」と「Commerce Cloud」をワンストップで提供可能な体制となります。

さらにはコンタクトセンターを支える「Service Cloud」、営業管理の「Sales Cloud」なども連携させることで、一元管理された顧客データに基づく、あらゆる顧客接点にわたって一貫性のある顧客体験が実現できます。最近は、このようにSalesforceの複数プロダクトを組み合わせた、いわゆる「マルチクラウド型」のプロジェクトが増えています。

私は電通グループで20年以上にわたって「一人ひとりにパーソナライズされた体験の実現」に取り組んできましたが、Salesforceのソリューション拡張により、フルクラウドでスピーディーにそれが実現できる時代がやっと到来したと実感しています。

小林氏
PROFILE
電通デジタル
副社長執行役員
小林大介
1996年、電通国際情報サービス入社。2004年の電通イーマーケティングワン設立に参加、2014年より同社取締役。2016年電通デジタル設立、執行役員に就任。2020年より現職。2021年5月に設立された一般社団法人「UXインテリジェンス協会」の副理事長を務める。
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