日経ビジネス電子版 SPECIAL
JSR×電通デジタル

「ありたい姿」からスタートするデジタルマーケティング成功の要諦

日本企業の多くが喫緊の課題としてDXを推進するも、なぜその試みは失敗しがちなのか。その理由と成功の要諦を探るべく、デジタルマーケティングの実現に取り組む大手化学メーカー・JSR、同プロジェクトを支援する国内最大規模のデジタルマーケティング会社・電通デジタルのチャレンジを紹介する。

自社にとっての
「デジタルマーケティング」の定義が大前提

――JSRと言えば半導体材料や液晶表示材料などで世界トップレベルの技術力とシェアを擁す化学メーカーとして、高い認知度と支持を得ています。なぜデジタルマーケティング推進に至ったのか、当時の課題、経緯についてお聞かせください。

当社は合成ゴム・樹脂などの石油化学系分野に端を発し、情報電子材料、ライフサイエンス分野にも市場を広げ、研究開発分野ではイノベーション創出、デジタル化を進めてまいりました。

お客様へのアプローチは技術のすり合わせなどの観点から対面型を軸に展開してきました。しかし近年、当社のようなBtoB分野でもお客様がWebサイトで事前に製品・サービスの選考をするなど購買行動のデジタルシフトが進行。マーケティング分野においてのデジタル化の推進が課題となっていました。

そこに新型コロナウイルス感染症拡大の影響も加わったことで、デジタル化の推進はさらに喫緊の課題に。そこで経営トップからの要請があり、私がプロジェクトリーダーの任を受け、2020年7月を基点にデジタルマーケティング実現に舵を切ることとなりました。

私もマネジャーとしてチームメンバーと議論を進めるとともに、個人でもDX(デジタルトランスフォーメーション)に関する講演会やメディアの事例記事などを通じ情報収集を進めてきました。しかし、何が当社にとって正解なのかが見えてこない。議論を進めていけばいくほど方向を見失い、4カ月間ほどは迷走状態でしたね。

そこではたと気づいたのは「我々は一体何をやろうとしているのか」と。気づけば「どのツールが便利なのか」といったツール導入を基点に発想してしまっていたんですね。では、大前提となる戦略コンセプトをどう構築するか。そこには従来の業務スタイルや企業文化をも否定していく作業を避けては通れません。ならば公平、中立的な第三者の視点を入れるべきではと判断したのが、電通デジタルさんとの出会いにつながりました。

藤谷 智浩氏
JSR株式会社
デジタルソリューション事業企画部 部長
藤谷 智浩
後藤 健太郎氏
JSR株式会社
デジタルソリューション事業企画部 主査
後藤 健太郎
――相談を受け、電通デジタル側ではどのように状況を理解し、最初の提案を実施したのでしょうか。

プロジェクトを進める上で最も大事な「自分たちがやりたいこと」からどんどん離れてしまっている状況と理解しました。ですから、まず「JSR様にとってのデジタルマーケティングとは何か」といった再定義からスタートしましょうとお話ししました。変哲のない当たり前のことのようですが、このプロセスなくして前に進むことはできません。

さらにデジタルマーケティング、DXと一言で言っても、人によって捉え方や認識は様々。社内で認識のすり合わせを行い、共有する作業も必要不可欠です。

これはどのような業務でも共通して言えるのですが、トップダウンで言われたから仕方なくやるのではなく、会社や自分自身にとって今何が必要なのかを考え抜き、自分たちが主語となり、やるべきこととやりたいことをしっかりと持つことがプロジェクト成功の要だと考えます。

お話を受け、ゼロの状態から当社の課題に寄り沿っていただける印象を持ちました。そして、当社の課題をしっかり評価した上で、適切な提案や実行支援をしていただけると確信できたのが決め手となりました。また、自分たちが何を発信するかではなく、顧客視点を取り込むアプローチとして、CX(顧客体験)の概念をご提示いただいたことも新たな気づきにつながりましたね。

最初のプレゼンから熱量が違うというのでしょうか。目の前の霧がスッと晴れたような安心感を得たのは大きかったです。

谷米 竜馬氏
株式会社電通デジタル
プラットフォーム&データ本部
プラットフォームコンサルティング部 データデザインユニット
シニアデータマーケティングコンサルタント
プロジェクトマネジャー
谷米 竜馬
加藤 淳氏
株式会社電通デジタル
CXストラテジー本部 CXストラテジー1部
プランニングディレクター
加藤 淳
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