荏原製作所

水害リスクから水不足まで縦横無尽に対応
インフラの強靭化を技術で支える
社会貢献を続ける
老舗メーカーの挑戦

河川の氾濫を防ぐため、高度経済成長期に多く設置された排水機場が、老朽化の危機に瀕(ひん)している。温暖化などにより集中豪雨は急増しており、低コストかつ迅速な更新が急務だ。来年で創業110年を迎え、世界有数のポンプ技術を持つ荏原製作所。広範囲の課題をまとめて解決に導く同社の手腕に期待が高まる。

温暖化などで雨量上昇、
河川氾濫による災害危機が広がる

温暖化などの影響で年間の平均気温が上昇し、雨量が増えている。気象庁によれば、1時間に50mmを超える雨の発生件数は30年前の約1.4倍、80mm以上の「猛烈な雨」は約1.7倍に増えた。2013年以降、全国にある観測所の約3割で1時間当たりの最高降雨量を更新している。

集中豪雨による災害リスクが高まる中、国土交通省の諮問機関である社会資本整備審議会は、史上初めて排水ポンプやゲートの老朽化対策を扱う「河川機械設備小委員会」を設置した。ポンプで川の水を排出し、河川の氾濫を防ぐ排水機場。荏原製作所納入分のみでも全国に1000カ所以上ある。これらの多くは、1970~90年代に建設されたため、老朽化が進み、設備のリニューアルが急務になっているからだ。

全国の排水機場・ポンプ場で活躍する荏原製作所のポンプ支川や雨水幹線の増水時に内水を本川や海に排水するポンプは、水害対策に重要な役割を果たす

荏原製作所 執行役 風水力機械カンパニーシステム事業部長の喜田明裕氏は「国がここまでポンプに焦点を当てるのは初めてです。老朽化した排水機場を低コストで更新できる方法を模索しています」と語る。

様々な対策が検討されている。その柱の1つは、多くの排水機場に共通して導入できるマスプロダクツ型ポンプ設備の開発だ。一品ごとにカスタムメイド生産してきたポンプ設備を大量生産型にすることで、低コストの実現を目指す。ポンプの動力として使用している船舶用エンジンを自動車用エンジンに替え、コストダウンを図る研究も進む。河川ポンプ施設技術協会の会長も務める喜田氏は小委員会のメンバーであり、同社は国土交通省の実証実験に向けたポンプの開発を急いでいる。

ポンプ製造で100年以上の歴史を持ち、日本のトップシェアを維持してきた同社への期待は大きい。

都市部の地下に巨大な放水路、
大型の排水ポンプを設置

舗装が進む都市部では、雨が降るとすぐに雨水があふれ、災害につながる危険性が高い。そのため地下に巨大なトンネルを設け、雨水を集めるための大型放水路を作る動きが各地で進んでいる。様々な経路から雨水を集め終着点まで運んだ後、巨大なポンプで水を地上に押し上げ河川に流す。こうした大規模排水機場を「大深度地下排水機場」と呼ぶ。

荏原製作所が納入した大深度地下排水機場は、全国に数カ所ある。中でも今年3月にポンプ設備の増設工事を終えたばかりで、国内有数の規模を誇るのが、広島市の新千田ポンプ場だ。この増設により新千田ポンプ場の排水能力は以前の1.4倍にまで高まった。

新千田ポンプ場(広島市中区)大型ポンプを地下約30mに増設する難易度の高い施工を、優れた技術力で実現した

同社の強みは、システムの提案から設計、調達、工事、アフターサービスまでをワンストップで提供し、広範囲の課題をまとめて解決できることだ。新千田ポンプ場では、3620kWの高出力ディーゼルエンジン駆動の大型ポンプが地下約30mに設置されている。同型式のポンプでは国内最大級となる「全速全水位先行待機型」の技術が採用されている。

豪雨時は、短時間で急激に雨水が排水機場に流れてくる。「全速全水位先行待機」とはポンプの始動、排水が間に合わないというリスクに対し、水位を問わずポンプを始動できる特殊な技術を指す。

また、インフラ設備としては、生活用水や工業用水などを供給する揚水設備もある。全長約100kmに及ぶ千葉県の房総導水路にある横芝揚水機場では、老朽化したポンプ設備の大改修を行った。機械、電気、制御設備を含むシステムの設計、製造、据え付けまでを同社が担当。この事業の難点は、365日稼働している設備を通常通り運用しながらポンプを更新しなければならないことだ。

揚水機場に対する工事の影響を最小限にすべく、仮設設備を設置しポンプ1台ずつの更新とした。更新にあたっては、既設ポンプと比べ性能が高い新型ポンプとしている。また、今後の維持管理に配慮した「状態監視保全」の監視システムも導入。部品交換や整備のタイミングを最適化し、維持コストを低減する。

このような高難度の設備更新を、全国のインフラ施設が必要としている。同社は、信頼性・経済性に優れた技術の開発に日々取り組み、これからもインフラの強靭化に貢献していく。

「E-Vision2030」で
打ち出す社会貢献への使命

2020年、荏原製作所は約10年後の2030年に向けた長期ビジョン「E-Vision2030」を打ち出した。「技術で、熱く、世界を支える」のスローガンのもと、5つのマテリアリティ(重要課題)のトップに掲げたのは「持続可能な社会づくりへの貢献」だ。具体的なテーマとして「自然災害の激甚化に対応するインフラの強靭化に貢献する」や、「世界中に水を届ける」などを明記した。

「ESG経営やSDGsへ向かう流れを受け、社会貢献の重要性を経営方針として明確に打ち出しました。中でも社会インフラ向けポンプに関わる事業部門は最も直接的に関与しているところです。インフラの建設・維持管理は目に見えにくい仕事ですが、日本の将来の安全・安心を担った仕事ですから、社員のモチベーションも高揚しています」(喜田氏)

水害リスクが高まる中、河川の氾濫や都市部の洪水を防ぐには排水機場のさらなる機能向上が欠かせない。行政もあらゆる手を打とうとしている。業界を代表する企業の1社として、重大な責任を感じていると喜田氏は言う。

同社は他にも「E-Vision2030」を通し、安全・安心な暮らしの実現に向け、国ごとのニーズを的確に把握し世界中の人に水を届ける事業を進めている。2020年から海外グループ会社のEBARA BOMBAS AMÉRICA DO SUL LTDA.(本社ブラジル)を通じてソーラーポンプの海外展開をスタートした。

ソーラーポンプ 「 ÉCAROS 」シリーズブラジルでソーラーポンプの販売を開始。電気が通っていない地域で取水が可能に

太陽光発電で動かせるポンプ設備で、電気が通っていない地域に水を届ける。技術力はもちろん、多数の設備を手掛けてきた経験とノウハウで、人々の生活や産業を支える仕組みだ。

今日、社会貢献はあらゆる企業にとって重要なテーマになりつつある。日本の水ビジネスが貢献できる分野は国内外に多数ある。世界有数のポンプ技術を通じて、同社はこれからも社会の様々なニーズに応えていく。

株式会社荏原製作所

URL:https://www.ebara.co.jp/ E-mail:ebr-pr@ebara.com (IR・広報課)

TEL:03-3743-6111(大代表)

Contents