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DXがもたらすサブスクリプションビジネスの新潮流~BtoBビジネスの変貌~ DXがもたらすサブスクリプションビジネスの新潮流~BtoBビジネスの変貌~

サブスクリプションビジネスの最新事情と、
その取り組み事例を語るオンライン配信セミナーが開催された。
ここでは、サブスクリプションビジネスに精通したデジタル戦略コンサルタントの紣川 謙氏による基調講演と、
製造業が取り組む新たな顧客向けサービスとして日野自動車 松本 兼司氏の特別講演を紹介する。

基調講演

顧客視点で実現するサブスクリプションの成長とB to B分野でのイノベーション

CustomerPerspective
代表取締役

紣川 謙Ken Kasegawa

紣川 謙 氏

Profile

デジタル戦略・マーケティングコンサルタントとして、スタートアップから上場企業まで幅広く支援する。武蔵野大学データサイエンス学部の客員教授も務める。

 サブスクリプションには様々な形態があるが、その本質は、サービスの利用者と提供者の継続的な関係にあると、紣川謙氏は語る。「継続的関係という本質的な特徴に加え、BtoCを含むサブスクリプションの多くの成功モデルには『定額制』『使い放題』『体験プログラム』『月額制』という4つの共通点があります。これを私は『定番レシピ』と呼んでいます」

 だが、この定番レシピの通りにすれば、どんな商材でもサブスクリプションとして成功できるかといえば、そうではない。「いつも使うと限らないものに、定額を払いたくない」「元が取れるか分からない」などという意見が出てくるからだ。

 より重要なのは、顧客視点に基づくサブスクリプションのサービス・顧客体験設計だ。紣川氏は、成功しているBtoBサブスクリプションに共通しているのは、企業が直面する問題点やニーズを、技術によるイノベーションで解決し、他社が真似できないユニークな顧客体験を提供していることだという。

 紣川氏は、BtoBサブスクリプションの成功事例として、3社の取り組みを紹介した。アドビは、2013年にいち早くソフトウェアライセンスをサブスクリプションに一本化したことで有名だ。「サブスクリプションへの変革で同社の企業価値は、13年当時の約220億ドルから、現在は10倍の約2300億ドルに成長しました。アジャイル開発や、DDOM(Data Driven Operating Model)というデータを基にした独自のビジネスオペレーションによって、これを成し遂げたといえます」

 他にも、ブリヂストンの業務用タイヤのTPP(トータル・パッケージ・プラン)、ソフトバンクロボティクスとアイリスオーヤマが提供する業務用ロボット掃除機Whizのサブスクリプションも挙げた。いずれも顧客が直面する問題点をイノベーションで解決したことに加え、導入の敷居を下げるサービスや、データ活用によるユニークな付加価値の提供などが成功の背景にあると、紣川氏は分析する。

 こうした企業に続くためには、顧客価値の提供、獲得、関係構築、退会抑止などのステップを管理して、成長が持続する仕組みを作るべきだとする。

 「顧客は、そのサブスクリプションサービスで得するかどうかを、導入時に頭の中で計算しています。かろうじて元が取れるぐらいでは利用しません。本当にお得であると同時に、それを分かりやすく伝える工夫が必要です」と紣川氏は説明する。

 また、サブスクリプションビジネスの成長には、顧客の成功=カスタマーサクセスの実現が重要だという。顧客が成功していれば、生涯価値が高まり、他者へ推奨もしてくれる。そのためには、サブスクリプションの日々の活用状況や、サービスメニューごとの利用率など成功する要因(インプット)を指標により評価することが大切。加えて満足度、生涯価値など成功したかどうか(アウトプット)も実践的(アクショナブル)な指標で評価し、継続的に改善することが欠かせない。

 「顧客視点とそれに基づく仕組みを持った企業が、ソリューションプロバイダーへと変貌し、イノベーションと長期的な成長を遂げることができるでしょう」と、紣川氏はアドバイスした。

特別講演

HINO CONNECT~車両稼働情報を活用したサービス化の取り組み~

日野自動車
情報企画部 兼 TS地域担当部

松本 兼司Kenji Matsumoto

松本 兼司 氏

Profile

日野自動車の情報企画部として予防整備提案モデルを構築し、販売会社向け業務支援アプリを開発。お客様向けWEBの立ち上げにも携わる。

 トラック、バス専業メーカーの日野自動車では、車両情報、稼働情報を活用したサービス「HINO CONNECT」を開発した。

 同社では人と物の移動を支え、社会に貢献するために、製品とサポートの品質向上を目指してきた。情報企画部の松本兼司氏は「製品サポートをICTによって深化させることを考えたとき、すでにコマツ、日立建機などの先行事例があり、それらを参考に自社システムの開発に臨みました」と語る。

 松本氏は、「トラックやバスは、1台の車両が寿命を迎えるまでに走る距離が、乗用車の数十倍も長く、積載量も非常に多い。“生産財”として非常にタフな使われ方をします。その一方で、社会生活の基盤である物流、輸送を支える機能として、稼働中は止めることができず、しかも故障は許されません」と語る。

 しかし実際は、車検・定期点検を受けているにもかかわらず、車両の突発的な故障によるコールセンターへの入電は月間4400件に上っていた。この突発故障による稼働停止を減らすために同社が考えたのが「車両の稼働を止めない予防整備」の実現である。

 この目標達成に向け、まず取り組んだのがデータ統合基盤の構築だ。2017年から大・中型トラック、大型観光バスに通信機能とGPSを搭載。車両の稼働情報、位置情報を遠隔で取得できるようにした。そこに販売会社業務システムのユーザー情報、車両情報をつなぎ、データ統合基盤を構築した。

 車両の情報はリアルタイム処理、24時間処理に加えて、7日間ごとの全データ取り込み処理を行い、各アプリケーションへオンラインやバッジ処理で提供する。「統合基盤では、取得したデータの不正処理や構造化、正規化を段階的に進めています。アクセス制限を加えて、各アプリケーション、ユーザーが利用できる形に整えています」と松本氏は説明する。

 目標である予防整備実現のため、車両のメンテナンスノートの情報と車両稼働情報をデータ統合基盤に集め、走行距離や経過時間以外のデータで、装置部品の交換に関連する情報を調査、分析し、予測モデルを作成した。

 予測モデルによって、車検・定期点検時に異常がない箇所でも装置部品の交換を先回りして実施し、突発故障を未然に防ぎ、稼働を止めない運用を目指している。

 「車検・定期点検を受けていても車両が突発的に止まれば、お客様の信用を損ねたり、支払いがスムーズに行われないなど、当社にとっても悪いことばかりでした。予防整備の提案によって、稼働を止めず、整備計画の平準化も可能になりました」とメリットを明かす。

 そして、この統合基盤を販売会社向け、さらにユーザー向けに提供をするサービスが「HINO CONNECT」である。車両の位置データによる緊急対応の迅速な対応支援と、顧客に対して、車両の安全装置の作動や燃費情報などを無償で提供するWebサービスの提供を開始している。

 今後は、ユーザーに向けた車両位置情報の提供など、サービスの拡充を図るとともに、社内専任組織の構築や研修の実施によって、データ活用をさらに進める計画だ。

アラスジャパン

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