日経ビジネス電子版 Special
日経ビジネス電子版 Special 日経ビジネス電子版

2度の緊急事態宣言を経て、企業の間に広く浸透したテレワーク。クラウドツールが業務に欠かせないものとなるなど、2020年以降、人々の働き方は大きく変化した。今後、コロナ禍が収束しても、「リアル」と「デジタル」を適材適所で組み合わせるワークスタイルは、不可欠なものとして残るだろう。働き方が変われば、それを取り巻く人事制度や組織体制の見直しも必要になる。“緊急時対応”から、“恒久的な施策”へ――。自社にとってベストな仕組みとはどのようなものか、手探りを続ける企業は多い。そこで今回は、先日開催されたオンラインセミナー「Next Working Style Day」の概要を紹介する。各社の講演内容から、そのヒントを得てもらえれば幸いだ。

基調講演

カゴメ
働き方改革を超え“生き方改革”へ
カゴメが挑む人事制度改革
カゴメ株式会社
常務執行役員
CHO(最高人事責任者)
有沢 正人

2013年度から
大規模な人事制度改革を実施

 食品大手のカゴメグループは、2013年度から職務等級を中心とした「ジョブ型人事制度」をグローバルに導入した。硬直化した人事制度を改め、メリハリの利いた評価で社員のやる気を引き出すためだ。

 制度改革は2つのステージに分けて進めた。第1ステージでは、ジョブ型人事制度をグローバル展開するための基盤づくりを推進。初めに役員、次に部長・課長の評価報酬制度を再構築し、これを海外主要拠点にも展開していった。「上層部が変わらなければ社員は付いてきません。人事制度改革は上から行うのが定石だと私は考えています」とカゴメの有沢 正人氏は述べる。

 第2ステージでは、グローバルな人材を経営に生かすための戦略人事施策を実施した。具体的には、グローバルレベルで人材を見える化し、ポジション別スキルマップを作成。必要なとき、必要な人材を供給できる仕組みを確立したのだ。

 「同時に、人材の能力を数値化し、グレードを全社に公開しました」と有沢氏。仕事の成果・価値を明確化したことで「次にこの仕事をしたい」「このポジションに就きたい」というキャリアを社員自身が描けるようにした。結果、健全な競争意識の醸成と抜てき人事が進み、組織と個人の成果を最大化できるようになったという。

持続的成長に向け
ダイバーシティを推進

 ジョブ型人事制度を軌道に乗せたカゴメグループが、次に見据えるのが“生き方改革”だ。企業の働き方改革と社員個々の暮らし方改革、その両方を支える人事施策を展開し、すべての人が生き生きと働けるようにする。

 「中でもダイバーシティの推進は持続的成長に向けた重要な戦略です。会社と社員の対等な関係性を構築し、異なる価値観を持った社員が、多様な働き方のオプションを自ら選択できる状態を目指します。これが、ニューノーマル時代の働き方だと位置付けています」と有沢氏は語る。

 施策の一例が副業制度だ。カゴメでの残業時間と合算して月45時間以内なら、副業内容に大きな制限を設けないルールにしている。また、コアタイムを撤廃したスーパーフレックス勤務制度を導入し、テレワーク勤務制度の利用制限を緩和。勤務地を選べる制度も新設し、転勤回避などを希望できるようにした。

 「人に投じる費用は、人件費やコストではなく“投資”です。自社のカルチャーに即した人事戦略で、多様な価値観の人材をマネジメントする。それが企業成長の原動力になるのです」(有沢氏)。働き方改革を超えたカゴメの“生き方改革”に、多方面から注目が集まっている。

特別講演

竹中工務店
デジタルプラットフォームを軸に挑む
竹中工務店のDXに向けた取り組みとは
株式会社竹中工務店
グループICT推進室・プロジェクトデジタル化推進グループ長
森 康久

竹中工務店が推進する
業務のデジタル化

 深刻な人手不足や長時間労働の是正が課題となっている建設業界。ゼネコン大手の竹中工務店では、2024年の所定外労働時間上限規制の適用を控え、デジタル活用によるワークスタイルや業務プロセスの変革を加速させている。「技能労働者の不足・高齢化を補って生産性を向上させるため、当社でも数年前より社内のデジタル変革を推進してきております」と同社の森 康久氏は話す。

 タブレット端末の利用や、ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング:時間と場所を自由に選択できる働き方)の導入、Web会議システムの活用はその一例だ。これにより、PCで行う業務の大半は自席以外でもできるようになり、ペーパーレス化も進んだ。「しかし、それだけでは真の生産性向上は実現できないと考え、抜本的なデジタル化を模索するようになりました」と森氏は述べる。

 同社のイメージする“抜本的なデジタル化”とは、データを用いた業務支援・自動化レベルを継続的に向上し、高付加価値業務へ注力できる業務スタイルへの変革を指す。

取り組みの目的は
事業価値の向上にあり

 旧来のように業務データがそれぞれの業務システム内に分散していたのでは、データをフィードバックして活用するというサイクルをスムーズに回すことはできない。そこで同社が構築を進めているのが「建設デジタルプラットフォーム」だ。これは建設事業に関わるすべてのデータを一元的に集約・蓄積するとともに、IoT、AI、ロボット技術などを自在に駆使したデータ活用を可能にするプラットフォームだ。

 「建設業界でこうしたデータドリブンを実現すれば、設計・施工計画・施工・アフターケアと、あらゆる業務プロセスでシームレスにデータを利用できるようになり、建築生産の自動化・リモート化にもつながります。私たちは、こうした新しい建設プロセスをBuilding4.0と名付けました」(森氏)

 Building4.0では、クラウド上で一元的に管理される業務データと、BIM(Building Information Modeling)が有機的に結び付く。そのため、建物に関するありとあらゆるデータにいつでも容易にアクセスでき、これまで技術者の経験や勘に基づいて行われていた高度な計画や将来予測なども自動化。多様なアフターサービスもよりスピーディーに提供できるようになるという。

 「Building4.0への転換は建設業界に大幅な生産性向上をもたらすことが期待されます。しかし、デジタル化によって我々が目指すべきは、さらにその先にある事業価値向上や、新たなビジネスモデル創出であるべきだと考えています」と森氏。同社では、今後もこうしたデジタル変革を加速させていくことで、サステナブル社会の実現に貢献していく考えだ。
日本マイクロソフト
日本マイクロソフト
自らもMicrosoft 365を活用し
事業継続性、生産性を大幅に向上
ヤプリ
ヤプリ
社員が幸福だと組織は強くなる
カギになる自社アプリの活用法
NTTコミュニケーションズ
NTTコミュニケーションズ
生産性向上と企業の成長のカギは
「社員が自律的に働き方を選ぶ」こと
レコモット
レコモット
組織の価値向上と企業の成長に向け
必要なテレワーク環境を考える
e-Janネットワークス
e-Janネットワークス
テレワークの環境整備こそ
ウィズコロナ時代の経営課題