日経ビジネス電子版 Special
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Next Working Style Day Review

アフターコロナの
働き方を見据え

今考えたい「ハード」「ソフト」両方の
整備の重要性
近年、国を挙げ推進されてきた働き方改革。未曽有のパンデミックが、遅々と導入が進まなかったテレワークを新たな“標準”に変えた。だが、その水面下では、オンラインでも事業活動を止めないためのITインフラ整備や、新たな脅威への情報セキュリティ対策など間断なく試練が続く。さらに、“非日常”の長期化に伴うメンタルケアや組織マネジメントなど、新たな課題も顕在化する。経営トップのみならず、人事・総務・事業部門など全マネジメント層による総力戦で、ワークスタイル変革が求められている。そのヒントを探るべく開催されたのが「Next Working Style Day」(主催:日経ビジネスオンライン)だ。その内容を振り返りたい。

基調講演

キリンホールディングス
働き方改革から「働きがい改革」へ
CSV先進企業を目指すキリンの挑戦
キリンホールディングス株式会社
執行役員
人事総務部長
濱 利仁
 長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」で、CSV経営を強く打ち出しているキリングループ。食・医・ヘルスサイエンスの領域で新たな価値を創造し、世界のCSV先進企業となることがグループ共通のビジョンだ。実現のために欠かせないのが人材であり、社員と会社はイコールパートナーと位置付けた上で、働き方改革を発展させた「働きがい改革」に取り組んでいる。

 「従来の働き方改革は“How”の見直しが中心でしたが、これからは仕事そのものを見直すべき。一人ひとりが仕事の意義を継続的に見直し、『働きがい』を実感することにより、『生産性』『創造性』『個の充実』を高める。そして、個の成長を会社の持続的な成長につなげるのが狙いです」と、キリンホールディングスの濱 利仁氏は語る。

 働きがいを醸成する施策には「働く場所の選択「」システムI・T ツールの拡充「」働き方に関する制度の拡充」「新たなコミュニケーションスタイル」が挙げられた。「働く場所の選択」に関しては、自宅、会社、シェアオフィスなどを社員が目的に合わせて選択、使い分けられるようにした。背景にあるのがオフィスの再定義だ。

 「イノベーション創発を目的とした共創の場。仲間との信頼関係を築くためのリアルな接点・つながりを生む場。同じ場所で働くことで所属意識=企業ブランドを感じる場。こう再定義し、物理的にリニューアルすることで、より柔軟な働き方を後押しします」(濱氏)

 同時に、システム整備、ITツールの拡充を行い、在宅勤務制度改革、育児・介護支援など、制度の改革や拡充も進めて、新しいコミュニケーションの在り方にも工夫を凝らしている。

 人材こそが競争力の源泉であり、生産性・創造性、そしてエンゲージメントを向上させることで、イノベーションを実現する組織へ。キリングループの改革は、着実に成果を上げつつあるようだ。

特別講演

リクルート
リモートワークを前提に
新しいマネジメントスタイルを
確立する
株式会社リクルート
リクルートワークス研究所
所長
奥本 英宏
 この1年半ほどの間に一気に進展したリモートワークは、コロナ禍が収まった後にも、新しい働き方の1つの柱になるだろう。リクルートの奥本 英宏氏は、「これまでの緊急事態宣言解除後にも、多くの企業は何らかの形でリモートワークを継続しています」と語る。

 ニューノーマル時代、企業はリモートワークを組み合わせたハイブリッドワークを前提に様々な仕組みを考える必要がある。同時に、マネジメントスタイルの変革も求められている。

 「リモートワーク中の部下がきちんと仕事をしているのか、多くのマネジャーが気にしています。一方、適正に評価されているのかと不安な部下も少なくありません。リモートワーク環境におけるマネジメントは大きな課題です。従業員の『自律』を支援し、上司・部下間、チーム内の『信頼』を育むマネジメントが欠かせません」と奥本氏は話す。

 リモートマネジメントにおけるポイントは大きく2つ。ジョブアサインメントとチームマネジメントである。

 「従来、マネジャーが部下に伴走しながら問題点を指摘し、徐々に仕事の質を高めるという方法が一般的でした。職場で長く一緒に過ごす場合にはよかったかもしれませんが、リモートワーク前提では機能しにくい。これからは、目標設定や計画立案といった前工程に注力することが重要でしょう。いわば、フロントローディングです」と奥本氏。その上で、適切な権限委譲やモニタリングが求められる。

 また、チームマネジメントについては、リモートワーカーの疎外感が課題になる場合が多い。奥本氏は「緊急事態宣言下の経験を生かして、思い切ってバーチャルの場をチーム運営の主軸に据えるのも1案でしょう」と言う。コロナ禍をきっかけに新しい働き方とマネジメントスタイルを確立すれば、次の成長のための土台をつくることができるはずだ。

基調講演

慶應義塾大学大学院
会社組織を活気づかせるカギは
社員個々の「幸福感」にある
慶應義塾大学大学院
システムデザイン・
マネジメント研究科 教授
前野 隆司
 経営や働き方改革を考えるとき、組織の成長を前提に生産性や効率ばかりを重視してしまいがちだ。それに異を唱えるのは、エンジニア出身で科学的な視点で“幸せ”を分析する幸福学に取り組む、慶應義塾大学の前野 隆司氏だ。

 働き手のパフォーマンスを考える上で大きな影響を持つのは、肉体的・精神的・社会的に満たされた良好な状態を指す「ウエルビーイング(幸福)」という。

 「欧米の研究では、幸福感の高い社員はそうでない社員より高い創造性や生産性を発揮し、離職率も低く、業務上の事故も少ないという報告があります。また、幸せを感じている人はそうでない人に比べ7.5 ~ 10年も寿命が長いといったデータもあります」と前野氏は言う。

 では、どのような幸福を追求すればいいのか。前野氏は、3つの要素を挙げる。1つ目が安全などの「環境」、2つ目が健康などの「身体」、最後の3つ目が「心」の状態だ。

 「心は特に大事です。例えば、心が主体的な状態であれば、働く上で成長しやすく、成長すれば強みや幸福感が生まれ、さらに主体的になる好循環が起きます。逆に、従属的な場合、やらされ感が募って成長しにくく、幸福感も下がるでしょう」(前野氏)

 「自分らしさ」や「前向きと楽観」も重要だ。「人と比べすぎる人は幸福感が下がります。人に勝ち続けることは難しく、勝っても幸福は一時的で長続きしないからです。自分らしさが大事です。また、前向きと楽観なしには幸福感を得る新たな挑戦もできません」と前野氏は話す。

 社員一人ひとりの幸福感が職場を活気づかせ、会社組織全体を上向きにする。「裏を返せば、会社や管理職は社員の幸福感を支える環境づくりが重要ということです」と前野氏。「いかに会社の収益を高めるか」から「いかに社員一人ひとりの幸福度を高めるか」――。根本的な転換が求められている。

特別講演

アイシン
社員の“働きがい”が会社を強くする
アイシン流人材マネジメント改革
株式会社アイシン
グループ人事本部
人事部企画・統括室 室長
佐野 智弘
 100年に1度の変革期にある自動車産業。グローバルで競争力を発揮し続けるには、新たな価値を創造するイノベーティブな組織作りが欠かせないという。こうした中、社員の“働きがい”に焦点を当てた「働きがい改革」に取り組むのが、自動車部品大手のアイシンだ。

 「社員の働きがい向上が仕事における新たな価値創造につながるとの発想のもと、社員と会社がウィンウィンの状態になる改革を目指しました」と同社の佐野智弘氏は語る。

 働きがいを高めるには、仕事のやり方を変え、質を向上させるとともに効率化を図り、生まれた時間でワークライフバランスを整える必要がある。そのため、初年の2019年度には、会議やメールといった付帯業務の削減に着手し、改革の士気を高める職場づくり・教育などを推進した。

 2年目の2020年度には「ATBA(AisinActive team Building Activity)」と呼ぶ独自のマネジメント手法を導入。各職場のチームで「ありたい姿」を設定し、業務分析を通じ、目標とのギャップを確認、解決策を実行していく。このサイクルを約850チームで回しながら、社員は改善を日々重ねた。同時に会社側もIT環境や人事制度の拡充で後押しした結果、業務全体の約半分が付帯業務に費やされていた状況の改善も進んだ。

 「各職場のリーダーからも『着実に職場が変化しており手応えを感じる、この動きを新たな価値創造につなげていきたい』との声を聞く」と佐野氏。

 「もちろん、すべての職場で最初からスムーズに受け入れられたわけではありませんし、21年4月の経営統合により土台作りから始める職場も多くあり、まだまだ道半ばです。信じて諦めず活動を継続していきたいと思います」と佐野氏は続けた。
NTTデータ
NTTデータ
ビジネスレジリエンスを高める
デジタルワークスペースをどう築くか
シュア・ジャパン
シュア・ジャパン
オンライン会議の音声に関する
7つの課題の解決法とは
シトリックス・システムズ・ジャパン
シトリックス・システムズ・ジャパン
リモートワークをより快適にする
ワークマネジメント・プラットフォーム
セールスフォース・ドットコム(Slack Japan)
セールスフォース・ドットコム(Slack Japan)
リモートワークの課題に向き合い
理想のハイブリッドワークを目指す
富士通
富士通
快適で安全なテレワーク実現のために
高めるべき2つの環境の“質”
ワークスモバイルジャパン
ワークスモバイルジャパン
「会えない」逆境を乗り越える
“ビジネス版LINE”の利点とは
横河レンタ・リース
横河レンタ・リース
テレワーク時代のPC調達・運用は
“レンタル”が最適な選択肢となる