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ファーストリテイリングの飛躍を支える世界最高の「仕組み」をつくるIT集団ファーストリテイリングの飛躍を支える世界最高の「仕組み」をつくるIT集団

ユニクロやジーユーなどを展開するファーストリテイリングは、前例のないビジネスモデルを構築し、購買体験や価格など新たな価値を「衣服」という形で世界中に届けてきた。同社が、躍進を遂げてきた背後には、経営の意思決定からお客様が商品を手にする瞬間まで、そのすべての過程をデジタル技術で支えるIT集団がいる。

「お客様のために」を軸に据えて 「お客様のために」を軸に据えて

「ITやデジタルというと、システム開発に終始し、お客様との接点がないイメージがありますが、当社におけるITの業務は、『お客様のために』が大前提です。最も大切にしていることは、お客様に良いものを、お客様が欲しい時にお届けするための仕組みを検証・実装、そして改革し続けること。一度できあがって終わりではありません。デジタル技術はそれをスピーディにドライブし、より良くするためのエンジンであると考えています」と、CIOの丹原崇宏氏は語る。

同社において、こうしたお客様起点での経営の意思決定と、デジタル戦略は一体化しており、不可分だ。したがって、情報システムに関わるIT部門も経営的な視点に立ち、一般的な情報システムプロセスよりもさらに上のレイヤーである業務改革やビジネスモデル策定などの段階から参画する点が、特長である。その姿勢についてCTOの大谷晋平氏は以下のように説明する。

 「開発のメンバーも、R&D、生産・物流、販売など業務部門ごとに担当しています。現場に出向いたりしながら、日常的に課題を吸い上げ、新たな業務とシステムをつくり、改革し続けています。すべてが『お客様のために』 ですから」

グループ執行役員
デジタル業務改革サービス部
CIO

丹原 崇宏氏(41歳)

大手システム開発会社での開発・コンサルティング経験、地方自治体勤務を経て、2012年同社入社、2019年1月より現職

グループ執行役員
デジタル業務改革サービス部
CTO

大谷 晋平氏(43歳)

大手システム開発会社でのシステム開発・アーキテクト、外資系プラットフォーマーを経て、2016年同社入社、2018年9月より現職

リアルな市場ニーズの変化に対応するために リアルな市場ニーズの変化に対応するために

ファーストリテイリングは、あらゆる人の生活を豊かにする、生活ニーズから考え抜かれた究極の普段着"LifeWear"を追求している。その実現のために、情報を商品化する「情報製造小売業」に業態を変革させる「有明プロジェクト」を進めている。これは、世界中の店舗やECサイトなど、お客様との接点(フロントエンド)において市場動向をリアルタイムで把握し、そのデータを商品企画から研究開発、マーケティングやクリエイティブにまで反映し(VCP:Value Creation Planning)、生産から物流を貫くサプライチェーン改革(SCM:Supply Chain Management)へと連動させるものだ。

また、VCPやSCMのデータを、再度フィードバックすることで「欲しい商品がいつでもそろっている」品ぞろえや、「来店のたびに新鮮な発見がある」売場・ECサイトをつくっている。

あらかじめ決められた全体図に基づいて段階的に進める旧来のシステム開発手法では、常に変化し続けるお客様のニーズに応えきれないため、クイックなローンチ後は、ビジネスとシステム双方を見定め、何度もつくり変えながら完成度を高めていくのだ。

「絶えず実際のビジネスの状況と照らし合わせながら、短いサイクルの開発を繰り返すアジャイルな姿勢を徹底しています」(丹原氏)

「常に最新の技術動向を把握するため、世界中のIT系トップ企業との意見交換を行うとともに、そこで得られた知見や新技術は、ビジネスのいたるところに当たり前のように反映されています」(大谷氏)

有明プロジェクトの概念
有明プロジェクトの概念
企画

お客様の声、購買傾向や潜在ニーズ、トレンドなど世界中の様々な情報を機械学習・AI・画像解析技術で分析、お客様の想像を超える新しい価値をもつ商品づくりを実現

販売

店舗とECのサービスを融合したO2O、RFIDを活用したセルフレジ等、お客様の購買体験を刷新。複雑なシフト管理など店舗経営の効率化にはアルゴリズムを活用

生産・物流

RFIDでの生産・在庫情報の把握、自動倉庫による高速物流、機械学習・AIによる高精度な需要予測等、計画と実績データを連動させ、お客様の欲しい商品をタイムリーに過不足なく生産、届ける

グローバルワンの実現に向かって グローバルワンの実現に向かって

現在26の国と地域 (2021年2月15日現在)に出店し、グローバルでの事業展開を加速する同社にとって、世界中どこで事業を行う場合でも統一の基準が必要となる。そこで大切にしているのが、世界で最も良い方法を考え、全員で実行する、「グローバルワン・全員経営」という考え方だ。

「何よりも重要なのは『世界で一番良い仕組み』を自前で築き、それをベースに世界中で標準化されたビジネスを進めることだと考えています」(大谷氏)

「国や地域ごとに、商習慣や購買行動は違います。しかし、その背後で動く仕組みは、そうした違いを吸収し、統合できるものであるべきです」(丹原氏)

"LifeWear"を追求し、時代を先見する同社の業務やサービスの背後には、常にIT部門が存在している。グローバルのビジネス全体を見渡し、同時にその各プロセスを丁寧にカバーしながら、リアルタイムな変化を先取りして実装しようと、日々、試行錯誤を繰り返している。

IT部門は30~40代の中途入社者が中心で、外国籍のメンバーも多く、「多彩な顔触れが切磋琢磨している」 と丹原氏は言う。年齢や入社年次を問わず、能力や意欲の高い人材は高度なプロジェクトに挑戦する機会を得られる。チャレンジングだが、やりがいの大きい職場だ。

「最新技術を活用する目利きと、それをビジネスで活用・応用し、成果を出す実践・実行こそが重要。"LifeWear"の企画からお客様が商品を手にするまで、End to Endで自分が関わったシステムや仕事が息づいていて、そのリアルな反応・手触り感があることが、私たちの仕事の醍醐味です」(大谷氏)

「私たちの姿勢に共感してわくわくするような方、難易度の高い仕事の中にこそ喜びを見いだす方にとって、当社は最高の環境だと確信しています」(丹原氏)

グローバルに躍進するファーストリテイリングの背後には、まだ世界中のどこにもない、唯一無二のデジタルテクノロジーを日々進化させ続けるIT集団の活躍があるのだ。