日経ビジネス電子版 Special

健康診断を軽視せず、生活習慣の改善と肥満解消で糖尿病予防を/世界糖尿病デーに考える 食による血糖対策最前線

インスリンの発見者・バンティング博士の誕生日である11月14日は、世界糖尿病デー。それに先立ち、11月10日に配信された本ウェビナーでは、意外に知られていない糖尿病のリスクや日本の現状、対策について説明した基調講演、すぐに取り入れられる糖尿病の予防として、食生活の工夫についてのパネルディスカッションを実施。その模様を紹介する。
Keynote speech

最大要因は放置すること。早めの対処でリスク軽減を

 基調講演のテーマは「日本の糖尿病対策のこれから」。講師の国立国際医療研究センターで糖尿病情報センター長を務める大杉満氏はまず、糖尿病について、「インスリンが出にくい・働きにくいことで、肝臓や筋肉などでブドウ糖の調節がうまくいかず、血糖値が上昇してしまう病気です」としたうえで、糖尿病の課題や合併症のリスクを以下のように解説した。

 「血糖値が高いだけでは大きな症状が出ないため、健康診断で高めの数値が出ても、忙しさを理由に放置したり、治療を中断したりするケースが目立つのが、糖尿病の厄介な点です。これを放置すると、合併症のリスクが高まり、神経障害や視力を低下させる網膜症、さらには腎臓障害で人工透析が必要になるケースも知られています。高血圧や喫煙などの要因が重なると、脳梗塞や心筋梗塞のリスクも高まりやすく、新型コロナウイルス感染症に感染すると重症化しやすいというデータもあります」(大杉氏)

 糖尿病は放置される期間が長く、糖尿病患者の健康診断のデータを遡ると、治療を始める8~10年前には血糖値が高い状態だったケースもあるという。

 糖尿病になりやすい人の条件について、大杉氏は図を示しながら解説し、糖尿病予防で効果的なのは肥満解消。通常の健康診断のほか、特定健康診査や特定保健指導も活用してほしいと説く。

 大杉氏は、「今年はインスリン発見から100年の節目です。糖尿病を軽く考えず、11月14日の世界糖尿病デーを機に、生活習慣を見直す機会にしてほしい」とのメッセージで講演を結んだ。

糖尿病の予防 こんな人は糖尿病に気をつけて!
健康診断などで血糖値やHbA1cの値がやや高く出た人は、日頃の食生活や運動、飲酒・喫煙などの習慣を見直してみよう。運動量を増やし、適正な体重を維持すれば、糖尿病の発症リスクを抑えることができる。
※HbA1c(ヘモグロビンエーワンシ―)は糖尿病の指標
Panel discussion

余分な糖分を見直して、おいしく楽しく対策を継続

 大杉氏の基調講演に続いて、より食生活に着目した「みんなに必要な糖質・血糖値を意識した食生活とは」をテーマとしたパネルディスカッションを行った。モデレーターの日経BP 総合研究所の西沢邦浩が司会を務め、パネリストには、大杉氏のほか、管理栄養士の浅野まみこ氏とフリーアナウンサーの木佐彩子氏も加わった。

西沢 ここからは食生活、特に糖質や血糖値について話を進めていきたいと思います。糖質の種類について、まずは浅野さんから解説をいただけますか。

浅野 糖質には、多くの糖が鎖状につながった多糖類、2つの糖がくっついた二糖類、糖そのままの単糖類といった種類がありますが、構造が単純な後者ほど吸収されやすい性質があります。ジュースの成分表示で果糖ブドウ糖液糖と書かれているものは単糖類。果物は搾ってジュースにすると食物繊維が失われますが、食物繊維は血糖値の上昇を抑える働きがあるので、なるべくそのまま食べて、上手に食物繊維を取るのがおすすめです。

西沢 日々の生活で糖質を抑えるには、どうすればいいでしょうか。

浅野 糖質制限と聞くと大変に思いがちですが、無理に全部減らすのではなく、余分な糖質を見直せばいいと思います。その際に有効なのが定食スタイルです。ラーメンライスのようなダブル炭水化物では糖の取りすぎなので、おかずや野菜、汁物を組み合わせると、バランスがよくなります。順番も、炭水化物を最後にすると調整がしやすくなります。

木佐 私はラーメンを食べるときに麺を少なめにしたり、和食の煮物などは意外と砂糖を使うので、控えめの味付けにしたりといった工夫はしていますが、食事全体のバランスで考えるといいんですね。デザートは別腹で食べてしまうんですけど、対策はありますか。

大杉 高級料理店のように、おしゃれな皿に少ない量を盛ってみるのはいかがですか。それから、テレワーク中、目に付くところにお菓子を置いておくと、つい手が伸びてしまうので、立って行かないといけない場所に置くのも手です。

パネルディスカッション1

浅野 小腹が空いたときは、糖質が低めのお菓子を選んだり、チーズなどの代用食を用意したりするといいですね。たんぱく質系の食品なら食欲を抑える効果もあるのでおすすめです。

西沢 最後に、それぞれのお立場からアドバイスとメッセージをお願いします。

大杉 食事は皆さんの幸せと結びついているので、楽しみながら続けられるといいなと思います。食事そのものだけでなく、食後に散歩をするだけでも血糖値を下げる効果はありますので、上手に続けていってください。

浅野 食事は1日3回、1年で1000回もあるので、ほんの少しの変化でも、1年後にはものすごく変わるはずなんですね。賢い選択をちょっとずつ積み重ねていくということを、ぜひ今日から始めていただければなと思います。

木佐 ちょっとした対策や努力でおいしくずっと食べられることがわかりました。私も教えていただいたことを生かしたいと思うので、皆さんもいい習慣をつけて、一緒に長生きしましょう。

パネルディスカッション2
Closing remarks

健康に寄与する様々な取り組みで糖尿病の理解促進

木村氏
江崎グリコ株式会社
執行役員
健康事業マーケティング部
カテゴリーマネージャー兼クロスリージョナル・ブランドリーダー
木村 幸生

 最後に、江崎グリコの執行役員 木村幸生氏が閉会のあいさつを行った。同社の創業の商品である栄養菓子「グリコ」は人々の健康に貢献したいという創業者の想いから生まれた。現在も「おいしさと健康」を両立する様々な商品を開発している。

 木村氏は、江崎グリコが実施している糖尿病を正しく知り、予防や治療の大切さを広める様々な取り組みについて紹介するとともに、「これからも人々の健康に寄与する商品・サービスをお届けします」との言葉であいさつを締めくくった。