日経ビジネス電子版 Special

物流は新たなステージへ 日本GLPが目指す創造連鎖する物流プラットフォーム

雇用確保、生産性向上、BCP対策など、物流を取り巻く課題は年々複雑さを増している。これらの課題解決に取り組むのが、物流施設と関連テクノロジーに特化した不動産デベロッパーの日本GLPだ。
同社はこれまでの物流施設の常識を変え、創造連鎖、Open Hubなど未来志向の物流プラットフォームを目指す新施設「ALFALINK」(アルファリンク)の供用を開始した。日本GLPとALFALINKについて、同社代表取締役社長の帖佐義之氏に聞く。
リング構造の共用棟が目を引く「GLP ALFALINK 相模原1」

施設稼働率は、ほぼ100%
高く支持される理由とは?

 EC(電子商取引)の急速な普及もあり、物流倉庫は様々な商品をストックする“多品種少量型”へスタイルが変わり、求められている役割も様変わりした。就労環境の改善、人材確保、生産性向上、事業継続計画/地域継続計画(BCP/DCP)への対応、自動化・ロボット化、環境対策など、日本経済を支えるインフラとして、物流業界には解決すべき課題が山積している。

 これらの物流業界の課題解決に取り組むのが、全国で約130棟、延べ床面積約980万m²の物流施設を管理・運営する日本GLPである。同社の物流施設は約190社のクライアントが利用しており、物流会社のみならず、製造や流通など、クライアントの業種も様々だ。

帖佐氏
日本GLP
代表取締役社長
帖佐義之
1969年、東京都出身。2003年、プロロジス入社。07年7月よりシニア・ヴァイス・プレジデント運用事業部長。09年3月のGLプロパティーズ設立以来、日本国内におけるオペレーション全般を指揮。12年、GLプロパティーズの代表取締役社長に就任。18年1月、日本GLPに社名変更。

 「単に保管する倉庫から、マテリアルハンドリングや配送の準備を行う物流基地、加工や組み立てを行う工場など、物流施設の用途は広がっています。ニーズの変化に合わせて、汎用性の高い施設づくりに取り組んできました」と語るのは、日本GLP代表取締役社長の帖佐義之氏だ。

 その目指すところは、サプライチェーンの短縮だ。荷物の翌日配送といったリードタイムの短縮が企業のサービス競争力を決定づけるようになった今日、多くのクライアントは製造、保管、配送の拠点をできるだけ集約し、無駄な移動を減らそうとしている。移動距離が短くなれば、CO₂削減などのメリットも大きい。

 「1つの施設であらゆる業務を行えるようにすれば、タイムリーな配送やSDGs対策など、様々な価値が生み出されるのです」と帖佐氏は説明する。

 同社は2009年の設立以来、10年以上にわたって、そうした汎用性の高い物流施設づくりに取り組んできた。全国に展開する物流施設はほぼ100%稼働しており(20年9月時点)、継続利用意向も97%(同3月末時点)と高い水準を誇る。

物流のあらゆる課題に
対応する施設を開発

 クライアントの満足度の高さは、どのような用途にも使える利便性だけが理由ではない。日本GLPは、物流が抱えるあらゆる課題を解決する施設のあり方を追求してきた。その取り組みが、多くのクライアントから高く評価されているのだ。

 例えば、事業継続性の担保。11年3月の東日本大震災をきっかけに、多くのクライアントは保管した貨物が崩れない免震構造の物流施設を求めるようになったが、日本GLPは震災前から免震装置を備えた施設を開発してきた。

 また、施設内の人々が快適に働けるように、換気扇や大型ファンを設置して室温を下げ、周りに飲食店が少ない立地を考慮して施設内にレストランや休憩スペースを設けるなど、働く人に優しい施設づくりにもいち早く取り組んできた。

 「物流業界では慢性的な人手不足が続いていますが、働きやすい環境を整えればより多くの人材を確保できるはずです。蒸し暑い倉庫で働くより生産性が上がり、利益創出にも結びつきます」(帖佐氏)

 さらに近年、物流業界で脚光を浴びている業務の自動化・ロボット化のための設備も、いち早く利用できるようにした。

 「グループ会社のmonoful(モノフル)が業務効率改善のためのアプリやシステムを開発し、合弁会社の+Automation(プラスオートメーション)がサブスクリプションモデルで各種ロボットを提供しています。施設だけでなく、サービスやソリューションを充実させることで物流業界の抱える課題をトータルに解決していきます」と帖佐氏は語る。

GLP ALFALINK 相模原1 俯瞰図
「GLP ALFALINK 相模原1」は総敷地面積約30万m²。すべて完成すると総延床面積約68万m²(東京ドーム約15個分)に及ぶ。中央には「リング」と呼ばれる象徴的な共用棟が設置され、各施設は地域の人々にも開放される。物流施設の概念を覆す地域共創型施設だ

地域との共生を通じて
物流への理解を促したい

 日本GLPが集大成として21年9月から供用を開始した物流施設が、「創造連鎖する物流プラットフォーム」を目指す「ALFALINK」(アルファリンク)だ。

 「Open Hub」「Integrated Chain」「Shared Solution」の3つをコンセプトとするこの施設は、入居するクライアント同士や、地域の人々との共生によって、物流の新たな価値を共創するという新しい発想に基づいて生まれた。

 「Open Hub」とは、従来閉じられた空間だった物流施設に地域の人々を迎え入れるための空間づくりだ。「縁の下の力持ちである物流をもっと身近に感じてほしい」(帖佐氏)という同社の強い思いがある。多くの人に物流の仕事を魅力に感じてもらえれば、雇用確保にもつながる。

 また、「Integrated Chain」は、サプライチェーンをさらに短縮するための工夫である。「ALFALINK」には運輸会社のターミナルが設置されており、入居企業が施設内で加工・保管した貨物がそのまま配送できる。「ターミナルが併設されていることが入居の決め手になったという声もあるほど、クライアントから高く評価されています」と帖佐氏は語る。

 そして「Shared Solution」は、入居企業同士による施設内のハード・ソフトの共有や、ビジネスでのコラボレーションを促す仕組みだ。ビジネスマッチングを支援するためのコンシェルジュサービスや、共同利用できるレストラン、カフェテリア、託児所なども用意されている。

 「ALFALINK」は、すでに千葉県流山市、神奈川県相模原市で稼働しており、24年には大阪府茨木市でも竣工予定。その後、全国展開も視野に入れているという。

 「ターミナル併設によるサプライチェーン短縮は、製造業の生産性向上にも結びつきます。メーカーからの入居に関する問い合わせも多数頂いています。ALFA LINKの働く人の満足度を上げる工夫や地域共生の取り組みは、物流施設に限らず、工場など本社オフィス以外の“現場”を持つ多くの業種業界において、今後重要になってくる課題だと捉えています」(帖佐氏)

 単なる物流施設を超え、入居企業や地域に新しい価値を提供する。それが日本GLPの取り組みだ。

「入居企業同士や地域の人々との共生を通じて、創造連鎖を生み出したい」

創造連鎖する物流プラットフォーム「ALFALINK」

日本GLPが千葉県流山市や神奈川県相模原市で供用を開始したターミナル併設型の大型物流施設「GLP ALFALINK」。同施設の特徴の一つが、コンビニエンスストアやレストラン・カフェテリア、託児所などを設けた施設内の共用棟である。

各施設は公園や大学のキャンパスのように、入居企業や働く人々だけでなく、地域の人々にも開放されている。まさに「ALFALINK」のコンセプトの一つである「Open Hub」を具現化したものだ。

ALFALINKの各施設