合同産業

ビルメンテナンスのプロとリコーが挑む
水道の力で電気を生む
マイクロ水力発電を
脱炭素・災害対策の切り札に

山間部での、水道設備の維持が困難になっている。また、都市部のビルが災害で停電すると、ライフラインが完全に止まってしまう。こうした問題を解決する一助として、マイクロ水力発電に注目が集まっている。合同産業とリコーは協業開発に取り組み、全国展開を開始した。

どこにでもある水道を活用
水力発電の“常識”を変える

(左)合同産業株式会社
取締役 事業開発部長
市野 英二 氏

(右)株式会社リコー
環境・エネルギー事業センター
事業推進室 地域プロジェクトグループ
齊藤 達郎 氏

「30キロワット(kW)以下の水力発電は、絶対に採算が取れない」。この言葉を専門家から何度も聞かされてきたと、リコー 環境・エネルギー事業センターの齊藤達郎氏は語る。その“常識”が、いま合同産業とリコーの協業によって変わろうとしている。

きっかけは、ビルや設備の総合管理業を専門とする合同産業の2つの問題意識だった。1つは、災害時に停電が起きるとビルのライフラインが完全に止まってしまう問題だ。同社は解決方法を模索してきたが、試行錯誤の結果、やはり建物が独自に発電する仕組みが将来的に不可欠という結論に至った。

2つ目の問題は、脱炭素だ。ビル建物内の照明を電球からLEDに替えるなど、様々な省エネ施策を進めてきたものの、省エネだけでは限界がある。さらなる脱炭素を進めるには、やはり再生可能エネルギーによって自らエネルギーを生み出す仕組みを建物自身が持つ必要がある。

合同産業は千葉県大多喜町に15メガワット(MW)級の大規模ソーラー発電設備を開発・運営するなど、独自に再生可能エネルギーの研究を進めてきた。土地に余裕のある郊外ならば様々な可能性を模索できるが、都市部やビルで利用できる再生可能エネルギーは限られる。

そこで、同社は水に注目した。「どんな建物にも、水道は必ずありますから」と合同産業 取締役 事業開発部長の市野英二氏は語る。

同じころ、静岡県御殿場市のリコー環境事業開発センターでも、マイクロ水力発電を研究していた。1kW級の超小型発電装置から様々なレベルの開発に取り組み、「20kW級であればビジネスプランを描けるところまで研究が進んでいました」(齊藤氏)。

両社の思惑は一致し、アライアンスを組んでマイクロ水力発電の実用化に着手することになった。

マイクロ水力発電を全国展開
その第1号を山梨県大月市内に設置

両社はマイクロ水力発電を全国へ展開するプランを掲げている。その第1号として、今年6月に「東部地域広域水道企業団施設内小水力発電所」(山梨県大月市)が誕生した。上水道の水力を再生可能エネルギーとして活用し、20kW級の発電と送電を実現している。

水道水の送水所内に設置されたマイクロ水力発電設備 (施工:株式会社和田電業社)

どの地方自治体でも水道は止めるわけにはいかない。そこで、全国に散在するそうした水道設備では、何らかの効果によって設備の付加価値を高めたいという思惑がある。そんな思いから、今回は、この地域の水道事業者で、大月市と上野原市を構成市とする東部地域広域水道企業団が賛同した。

上水を山の上までポンプで押し上げ、自然の落差を用いて一般家庭の隅々まで水を届けている。その中継地点となる送水所を利用して、両社はそこに「ポンプ逆転水車方式」と呼ばれる20kW級のマイクロ発電施設を設置した。

通常のポンプは電気で羽根車を回して水を押し出すが、同じポンプを逆向きに設置すると、水流の力で羽根車を回して発電できる。「発電効率は専用の発電機より若干劣りますが、もともと製品として存在しているポンプを利用するためコストが安く、納期も早いメリットがあります」(齊藤氏)。低コストなポンプ逆転水車方式だからこそ、20kW級のマイクロ発電でも採算ラインに乗る可能性が出てくる。

また、上水を使って発電するには、飲料水の品質を絶対に下げない衛生面の技術と、水流を発電に利用しても水圧を落とさない送水技術の両面が必要になる。ライフラインである水道に発電という価値を付加することで、様々な可能性が出てくる。

「いまは発電した電気を利用しているだけですが、今後は蓄電池と組み合わせて可能性をさらに広げていきます。例えば、平時に電気をためておき、災害時に緊急電源として活用する案です。当社が管理している多くのビルや施設において、こうした施策が大きな意味を持つことになるでしょう」と市野氏は語る。

山間部や高層ビルのエネルギー事情を
根底から塗り替える

「再生可能エネルギーと脱炭素は大きな視野で見ていかないと、世の中に根付いた事業展開にはなりません」(市野氏)。合同産業は今回のマイクロ水力発電を施設管理という大きな枠組みの中でとらえ、様々なビルや施設に容易に導入できる身近な再生可能エネルギーにしていこうと考えている。いまは単独事業としてスタートしたところではあるが、今後は発電設備の数を増やし、より身近なものにしていけば、いずれ利益率の高いビジネスへの転換が訪れると市野氏は考えている。

リコーは2017年4月、「RE100」に日本企業として初めて参加した。RE100とは、エネルギーを100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げる国際イニシアチブだ。英国の非営利組織クライメイト・グループが2014年に創始した。

合同産業も同様に、グループ全体の事業活動を100%再生可能エネルギーで行う「再エネ100宣言 RE Action」に参加している。

両社はともに2050年までに炭素排出量をゼロにすることを宣言し、再生可能エネルギーを積極的に推進する立場にある。両社に共通するそうした背景も、今回の協業につながった。

齊藤氏は「まさかそんな場所で発電などできるはずがないと考えている方々に、実はできるという気づきを与えていきたい」と語る。リコーグループは全国の自治体と様々な連携協定を結んでいる。そうしたネットワークを活用しながら、今回開発したマイクロ水力発電のメリットを伝えていきたいと話す。

合同産業とリコー、両社の協力により、水道の力で電気を生み出すマイクロ水力発電の実用化が始まった。山間部や過疎地、都市部の高層ビルなどのエネルギー事情を根底から塗り替える可能性を秘めている。

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