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次代を見据えたデジタル変革

時代を見据えたデジタル変革 アサヒグループホールディングス×HENNGE ONE アサヒグループホールディングスが戦略モデルから“DX”を外した理由

テクノロジーで絶え間なくビジネスの変革が求められる時代。デジタルの巧拙がビジネスの成否を決めると言っても過言ではない。SaaS認証基盤/IDaaSが国内で多くのシェアを誇るHENNGE(へんげ)のユーザーであるアサヒグループホールディングスの執行役員 日本統括本部 事業企画部長 野村和彦氏に、「デジタル変革への取り組み」をテーマにDXの現状をうかがう。

DXの本質はデジタルで進める
ビジネス・トランスフォーメーション

──2020年4月に、Value Creation室を立ち上げています。目的は何ですか。

野村氏
アサヒグループホールディングス
執行役員
日本統括本部 事業企画部長
野村 和彦

 それまではほぼ国内市場でビジネスをしていたアサヒグループが、グローバル展開を強化する目的で、アサヒグループホールディングスにアサヒビールから商号変更をしたのが2011年です。約10年が経って、今、海外での売り上げが全体の5割近くを占めるようになりました。その過程で、私たちの価値観を変える必要があると議論になり、2019年にAsahi Group Philosophyが誕生しました。一方で、世の中ではデジタル化が進んでいます。これからますます時代の変化は早くなり、どのような変化があるか分かりません。そうであれば、私たち自身が大きく変わろう、そのための基盤作りをビジネスとは別枠で考えるチームを作ろうということで誕生したのが、Value Creation室です。

 それまでのアサヒグループで行ってきたことは、基盤作りというよりは仕組み作り、それも社内のデータを使って効率化を図るための仕組み作りでした。しかし、今から求められるのはお客様の期待値も吸い上げて、新しい価値を創造して提供していくことです。その創造そのものと、そのためのデータ基盤作りに取り組んでいます。

──2019年には「ADX(Asahi Digital Transformation)戦略モデル」を策定し、その翌年の2020年には「AVC(Asahi Value Creation)戦略」として策定し直しています。なぜ、再構成が必要だったのでしょうか。

 ADX戦略モデルは、社内のシステム部門のメンバーが中心になって2019年に作ったものです。その直後の2020年に、「攻めのIT経営銘柄」の名称が「DX銘柄」へと変わりました。経済産業省と東京証券取引所が共同で選定するこの銘柄に、私たちは7年連続で選んでいただいていますが、ITという名称がDXに置き換わっただけだと考えれば、DXについても、システム部門が担うという考え方もあるでしょう。しかし、DXの主役はトランスフォーメーションであって、デジタルではありません。トランスフォーメーションを起こすのは経営であり、それをサポートするのがデジタルです。

 このことをはっきりさせるため、Value Creation室は事業企画部に置き、戦略を再構築しました。Value Creation室、そしてAVC戦略という名称を決める際にも、デジタルやDXという言葉をあえて外しました。

 私たちの取り組むDXは、本質的にはBX、つまりビジネス・トランスフォーメーションです。そのBXをデジタルと共に進めるという考え方なので、「こんな技術があるから使いましょう」ではなく「これをもっと良くするには、楽しくするにはデジタルを使おう」といった具合に、BX・ウィズ・デジタルを推進していきます。

アサヒグループホールディングスが考える将来のありたい姿

アサヒグループホールディングスが考える将来のありたい姿
アサヒグループホールディングスは「Value」「Empathy」「Benefit」の3つに基づき、新規事業の創出や業務変革といった新しい価値の創造を目指している。
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