COP26を経て、国際社会に存在感を発揮 新時代を切り開くエネルギーのバリューチェーン最適化へ COP26を経て、国際社会に存在感を発揮 新時代を切り開くエネルギーのバリューチェーン最適化へ

様々な分野で社会インフラを支えるシステムを提供してきた日立製作所(以下、日立)。その重要な一角を担うエネルギー分野は、世界規模の地球温暖化対策と密接に関わり、大きな変革を迫られている。一方で脱炭素社会実現の道には課題も多い。技術革新や新しいアプローチを次々と打ち出すことが必要だ。そこで期待を集めるのが、デジタルイノベーションを加速するソリューション「Lumada(ルマーダ)」。エネルギー分野の取り組みやLumadaの威力について、エネルギービジネスユニットCLBO、CIO 清治 岳彦氏と、日立に新たに加わり動き出している加治 慶光氏が、2021年11月5日にオープンした、創業以来伝承してきた企業理念や創業の精神を、世界中の人々と社会課題を解決してきた事例とともに紹介する、日立の企業ミュージアム「日立オリジンパーク」で語り合った。

発電、送電、需要…バリューチェーンを網羅するが故の戦略

―環境問題が世界的な課題となる今、エネルギー活用に関する課題をお聞かせください。

清治:2021年11月にCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)が開催され、脱炭素社会に向けた再生可能エネルギー(以下、再エネ)を中心とするクリーンエネルギーの普及が急務となっています。その中で日立は、COP26で日本企業として初めてプリンシパル・パートナーにも就任し、2030年までに事業所(工場・オフィス)のカーボンニュートラルを目標に掲げるなど、全社的に環境負荷の軽減に取り組んできました。

エネルギーに関しては、供給サイドの発電から、それを送る送電、需要家というバリューチェーンを考えたときに、それぞれに課題があります。供給サイドでは再エネの増加が求められていますが、太陽光や風力発電は天候に依存するため、安定化が課題です。安定的な効率の良い送電も必要で、特に日本は東西で50Hzと60Hzの周波数が併存するという問題もあります。需要サイドでは、効率化が課題でエネルギーマネジメントが有効です。

このそれぞれの課題に対し、我々はLumadaを活用してデータを使いながら制御し、安定化と効率化を進めようとしています。

加治:日立は発電、送電、需要のバリューチェーンすべてを持っており、こんな会社はなかなかありません。それだけに、Lumadaという共通のプラットフォームを持つことが輝きます。日立ならではの戦略ですね。

清治:はい。日立はプロダクトとITの両方を持っており、それをうまく組み合わせながら活用できます。そしてその価値をさらに高めるため、これまで事業構造改革に取り組んできました。エネルギー分野では2020年7月、ABB社のパワーグリッド事業を買収し、2021年10月より日立エナジーとなりました。彼らの持つ送配電技術とそれらを制御するITにLumadaを組み合わせることで、より価値の高いサービス提供を目指します。グローバルトップレベルのパワーグリッド事業の知見を日本に取り入れると同時に、日本のプロダクトやサービスを世界に広げようとしています。統合によって、マインドを変えるというところでも意義を感じています。彼らはグローバルビジネスを進めてきたので、標準化して効率よく展開しようとします。それに対して、我々は長い間、お客様の個別のご要望に一つ一つ対応したビジネスをしてきたので標準化という点では弱い。学ぶべきところは多いです。

図 エネルギーシステムの全体像

図 エネルギーシステムの全体像

脱炭素、水素流通が実現し、クリーンなエネルギーがサプライチェーン全体に浸透するデジタル技術が安定的なエネルギーシステムをマネジメントする

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―日立のエネルギー事業の全体像をお聞かせください。

清治:大きく3つに分かれています。まず1つが先ほど紹介した日立エナジーのパワーグリッド事業。2つめが原子力事業、そして3つめが国内のエネルギー事業です。エネルギー事業では再エネに力を入れており、風車は国内トップの835基(※)の導入実績があります。
※日立製作所と日立パワーソリューションズの累計(2021年3月末時点)

加治:原子力、再エネの両方の技術を持っているというのは、世界的に見ても珍しいのではないでしょうか。

清治:その通り、他にはなかなかないですね。

加治:日本政府が掲げる、安定した原子力をベースロードとして最適化しながら、再エネを増やしていくという考え方もありますが、それにマッチしていますね。

清治:まさにそうで、エネルギーミックスを適切な割合で進めていくことは重要です。再エネを増やすと不安定になるため調整が必要です。Lumadaの登場によって、より緻密な調整が可能になりました。また、以前は発電所の数は限られていましたが、再エネが増えるとあちこちに発電拠点が散在します。数が多くなると人間の能力ではすべてを把握できません。そこでデジタルによる可視化が必要となります。

今後は、予測もできるようになります。例えば広域で曇りそうだとわかったら、止まっている発電所を動かすといったことです。その際、できるだけ消費地の近くの発電所がいいのですが、出力容量や送電線など様々な要素を考える必要があります。それらをすべて勘案しAIで最適な方法を探ることも可能になるでしょう。

加治:発電拠点が散在するようになると、どういうところで制御するのですか。

清治:ある程度まとめて遠隔で制御することになります。そのため、今後制御もクラウド化していくでしょう。ただ、最後に動くのはモノなので、モノを直接動かすエッジの部分は残ります。これから企業はグリーンエネルギーを証明する必要性も高まってきます。電力のトレーサビリティを証明するというところでも、データが重要になってきます。

未知の組み合わせを生み出し、難しいチャレンジの達成を目指す

―具体的なソリューションや事例をお聞かせください。

清治:今注力しているのが、運用効率の向上です。例えば風車は適切にメンテナンスを行い、パフォーマンスを上げていく必要があります。そこで、遠隔監視を使って状態を把握していますが、今後はAPM(Asset Performance Management)を活用し更なる価値創出の検討に取り組んでいます。まずは風車で取り組み、今後いろいろな設備に応用していきます。

このAPMについては、「Lumada APM」としてクラウド化し、導入しやすくしたサービスの提供を始めました。資産運用管理についても、「Lumada EAM(Enterprise Asset Management)」を提供しています。

これらはLumadaソリューションとして提供することで、既存のサービスと連携し様々なデータにAIを活用することもできます。例えば再エネデータと気象データを組み合わせて分析するといった、これまで難しかった分析が容易に実現します。うまくいけば新たな知見が発見できるかもしれません。

送電に関しては、「Vegetation Management(植生管理)」を主に米国で行っています。樹木が送電線に当たってショートしたり、それによって森林火災を引き起こしたりするような事態を防ぐ目的で、衛星画像を解析し、伐採計画を立て未然に事故を防ぎます。データを活用することで効率のよい管理・伐採が可能になります。

長距離でも効率的に送電できるHVDC(High Voltage Direct Current:高圧直流送電)にも強く、世界トップの109基(※)の実績があります。日本では再エネ発電が電力の大消費地から離れていることが多いため、長距離送電が必要です。洋上風力ではエリアでまとめて陸地に送るので、そこでもHVDCは有効です。また、電力融通という点では50Hzエリアと60Hzエリアをまたいで送電するには一度交流を直流に変換する必要があるため、このようにHVDCは様々な用途で活用が期待されます。

エネルギー&ファシリティマネジメントサービス「EFaaS」は、エリア全体での発電側、需要側全体の管理・運用サービスです。省エネだけでなく、マイクログリッド内でエネルギーの効率的な活用を支援します。当社では茨城県日立地区の工場群をつないでマネジメントしようとしています。ここで得た経験や知見をお客様に提供していきます。
※日立製作所と日立エナジーの累計(2021年3月末時点)

加治:お話を伺っていて、Lumadaがエネルギー分野で貢献する大きな可能性を感じました。同時に、組織上の文化面も変えていく必要性を感じます。アインシュタインは、「その課題を生み出した時と同じ思考方法では、その課題は解決されない」と言っています。新たな視点を生み出すには、お客様を含めて多様なバックグラウンドを持った人たちが、お互いの前提を疑いながらコミュニケーションを行うことが重要です。そのためにLumadaがあり、対話する場所としてLumada Innovation Hubがあります。

清治:まさに、加治さんのような方が外から入ってこられて、非常に刺激を受けています。日立の社員はまじめですが、内にこもりがちなところがあります。もっと刺激を受けて、外に発信していく必要があります。

加治:日立の企業理念である「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」を拡張して解釈していくことが重要だと考えています。かつては優れた技術を持っていれば、それだけで競争優位になっていました。これからは核となる技術は自社で持ちながら、Lumadaのように外とも広くつながっていくことが重要です。

清治:日立は多くの分野で事業を行っていますので、それらが上手くまとまって、各分野のソリューションが別の分野でも応用できるようなことが増えていくと、もっと良くなる。そのプラットフォームとしてLumadaが貢献できると考えています。

加治:今世界的には、多くの事業が集まっていると株価が低迷する「コングロマリットディスカウント」が問題となっており、大企業の分割が相次いでいます。それに対して日立は、総合力を持ちながら横につなげていくという、壮大な実験的な試みを行っています。これは、新しい考え方であるステークホルダー資本主義に合う考え方だと思います。一周して、生き抜いてきた巨大で数少ないコングロマリットという考え方もできます。そこでLumadaというプラットフォームを打ち出したことは、世界的にも非常にユニークです。日立の在り方は、世界にとっても重要な試金石になるでしょう。

清治:社会インフラを中心に据えると舵を切ってから、事業の集中化を進めてきました。ただ、社会インフラも様々なものがあります。いま日立は、「環境」「レジリエンス」「安心・安全」の3領域に注力すると宣言しています。その考え方に沿って、多様な社会インフラをいかにつなぎ、組み立てていくか。そこに向けて取り組んでいきます。

未知の組み合わせを生み出し、難しいチャレンジの達成を目指す

―清治さんと加治さん、お二方の今後の取り組みをお聞かせください。

清治:エネルギーの安定供給を実現しながら、脱炭素社会の実現に向けて貢献したい。難しいチャレンジですが、地球環境を考える上では必要な取り組みです。

また、今後新たなエネルギーとして水素が出てきます。水素の生成も再エネ利用が本流になるので、それらを含めてグリーンなインフラの生成から配送、消費までバリューチェーンを最適化していきたい。将来的には、電力と水素をまとめて適切にマネジメントし、エネルギーのプラットフォーム化を進めていきます。

加治:できるだけこれまでなかったような組み合わせの方同士が集まれる機会を設けたいと思っています。特に今年買収したGlobalLogic社は、スピード感やデザインシンキングに特徴があり、それらと融合することで生まれる新たな可能性に期待しています。

日立オリジンパークとは

本対談は2021年11月5日にオープンした企業ミュージアム「日立オリジンパーク」にて行われました。

日立オリジンパークは、「小平記念館」「創業小屋」「大みかクラブ」「大みかゴルフクラブ」で構成され、地域の皆さまや世界中のビジネスパートナーとの新たな対話が生まれる場として活用していきます。

日立、創業の地に企業ミュージアム「日立オリジンパーク」をオープン

https://social-innovation.hitachi/ja-jp/article/hitachi-origin-park/
お問い合わせ

株式会社 日立製作所
Webサイト:https://www.hitachi.co.jp/
問い合わせ窓口:https://www8.hitachi.co.jp/inquiry/it/lumada/jp/general/form.jsp