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絶好調の「一番搾り」が、リニューアルに踏み切った理由とは? 絶好調の「一番搾り」が、リニューアルに踏み切った理由とは?

「キリン一番搾り生ビール」が、2年ぶりのリニューアルを敢行した。「こんなに売れているのに、変える必要があるのか?」と思った方も多いだろう。事実、「一番搾り」ブランド<缶>※1は、ビール業界全体が苦戦を強いられた2020年10月~12月においても前年比150%の売上※2を達成。さらに、過去10年で最高の売上※3を記録している。絶好調のさなかにあっても、さらなるおいしさを追求し続ける、それはお客さまにおいしさを提供したいという強い思いからだ。そんなキリンビールの挑戦と、その賜物(たまもの)である「新・一番搾り」の魅力について、日経BP総研 所長の林哲史が考察する。

※1 “一番搾り”を冠する全商品。一部販売終了している商品もあり。※2 2020年10‐12月一番搾りを冠した商品合計の出荷実績において(一番搾りを冠した商品:一番搾り、一番搾り 糖質ゼロ、一番搾り とれたてホップ生ビール、一番搾り 清澄み、一番搾り<黒生>、一番搾りプレミアム)※3 2011年~2020年 一番搾りブランド<缶>計 出荷実績において

時代の声に応えて生まれたとびきり※4おいしい「新・一番搾り」

不確実性がますます高まる今の時代、どの企業にも求められているのが、変化に備える体制づくりです。自社商品に対するニーズの変化をつぶさに読み取るために、経営やマーケティングにVOC(Voice of Customer=顧客の声)を取り入れる企業も増えています。なかでも早くからそれを実践していたのが、キリンビールさんだと考えています。

世の中の生活様式が大きく変わったこの時期に、フラッグシップブランドである「一番搾り」をリニューアルしたのも、顧客の声に応えた結果といえます。ただ、いくらニーズがあっても、今すでに売れている商品をリニューアルするというのは覚悟のいることです。とくに業界全体が苦戦を強いられている今は、なおさら守りに徹したいところ。そこを敢えて攻めに転じられるのは、お客さまの声に耳を傾けるVOC経営に大きく舵を切っているからでしょう。

「一番搾り」は2017年、2019年にもリニューアルを実施していますが、それは人々がビールに求めるおいしさへの変化、その気配を敏感に感じ取っていた証しに他なりません。2年前においしかったものが、今も同じようにおいしいとは限らないのです。ビール市場が縮小する中、この数年、前年比を超えることができているのはそういったことが理由なのではないでしょうか。また、おいしさは環境によっても変わります。例えば、真夏に外から帰ってきて飲むビールのおいしさと、在宅ワーク後の気分転換に求められるおいしさは違います。味の嗜好だけでなく、そうした環境要因をも織り込んで徹底的にVOCを収集し続けることは、簡単なことではありません。でもそういったお客さまの声に耳を傾けることがヒット商品を生み出せている礎といえるでしょう。

そうやって前回も前々回もリニューアルを大成功させてきた「一番搾り」には、キリンビールさんの相当な企業努力を感じますし、その実践と成果には学びがある。だからこそ、時代の転換期に満を持して登場した「新・一番搾り」には、ワクワクするような期待感を抱くのです。

95.2%が「おいしい」と評価した絶妙な調和がもたらす“新しいビール”

実際に飲んでみると、予想を超えた味わいに、よい意味で裏切られることになります。「一番搾り」のおいしさには長年慣れ親しんできたはずなのに、「あれ、ビールってこんなにおいしかったっけ?※4」という新しい驚きがある。まず口に含むと豊潤な麦のうまみが広がり、それがのどを通るときには雑味のない澄みきった味わいに変わる。ビールらしい苦みもありながら、飲み終わったあとにはほんのりと甘みを感じるほどに、豊かな余韻も残してくれるのです。

これは、従来の「一番搾り」ファンはもちろん、今まであまりビールや「一番搾り」を飲んでこなかった人にもアプローチできるおいしさだと直感しました。「とびきり※4おいしい」と銘打った理由にも納得がいきます。

「一番搾り」のような市場のど真ん中に位置するブランドが目指すのは、「のどごしがいい」とか「キレがある」といったトピックではなく、行き着くところはやはり「おいしさ」。この「おいしさ」というのは、うまみや苦み、甘みや酸味、香りやのどごし、後キレといったあらゆるものを集約させたものであって、要はそのバランスなんですね。

「一番搾り」はもともと絶妙なバランスで調和されていたはずで、リニューアルには非常に繊細な調整を求められたに違いありません。リバランス成功の鍵は、1℃単位の温度にこだわった仕込条件の最適化と、味に抑揚を生み出す発酵条件の最適化にあるそうですが、その成果は麦のうまみと澄んだ味わいを感じる調和のとれたおいしさへと、みごとに結実しています。

目指す“理想のビール”にたどり着くまでに、繰り返した試験醸造回数は400回以上。この数字からも、技術的にかなり高い目標設定があったことがうかがえます。とはいえ、それは驚くには値しません。今までの「一番搾り」や「一番搾り 糖質ゼロ」の開発を振り返れば、キリンビールさんならそれぐらいやって当然だろうというのが、正直な感想です。大切なのは何回試醸したかではなく、結果そのもの。お客さまに「おいしい」と言ってもらえることがすべてなのです。

その点、味覚調査(キリンビール調べ N=120人)で95.2%の人が「おいしい」と評価した「新・一番搾り」は、文句なしに大成功といえる出来栄え。消費者の声の裏付けがあるからこそ自信を持って世に出せる、これが「一番搾り」最先端のおいしさなのでしょう。

※4 自社内商品比較