角井亮一氏インタビューの
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オムニチャネル化と
国際物流の分断
2020年、物流を取り巻く環境は激変した。
とくにコロナ禍のインパクトは大きく、店舗販売が縮小する中、ECへのシフトが鮮明になった。イー・ロジット社長の角井亮一氏はこのように説明する。
「流通分野では近年、消費者が店舗だけでなくPCやスマートフォンからも自由に購入できる環境を用意しようという、いわゆる“オムニチャネル”が大きなテーマになっていました。コロナ禍により、そのオムニチャネル化の動きがさらに進みました」
一方で、国際物流の分断により、生産・流通・販売に支障を来した企業も少なくない。グローバルサプライチェーンの見直しを検討している企業もあるかもしれない。ただ、角井氏は慎重な姿勢の企業が多いと見ている。
「海外での部品調達などが難しくなり、調達先の一部を国内に戻している企業はあります。ただ、コロナ禍の影響がどの程度長引くか、企業の見解は様々です。今のところ、20年の混乱は短期的な事象という前提で動いている企業のほうが多いのではないでしょうか」
2021年物流の3つのポイント。
B2BとB2Cの統合
2021年の物流にも大きな変化が予想されるが、角井氏は3つのポイントを指摘する。B2B物流とB2C物流の統合、物流DX(デジタルトランスフォーメーション)、人材教育である。
角井氏は1つ目のポイントとして、高い難易度の「B2B物流とB2C物流の統合」を挙げる。
「オムニチャネル化が進展する中、今年はとくに流通部門を中心に、メーカーと小売をつなぐB2B配送だけでなくB2C配送も一緒に扱おうという動きが目立っています。ただ、これまでB2Bに特化していた物流センターが、いきなりB2Cも手掛ければまず失敗するでしょう。B2BとB2Cの両方を効率的にさばくためには、それなりの投資と高いレベルのノウハウが必要です」と角井氏は話す。
これまで、B2B物流専業だった事業者も、店舗への配送だけでは十分な収益を確保しにくくなった。オムニチャネル化を進める小売業に対応し、物流センターにもB2B向けとB2C向けの両方の機能を持たせることで、事業の維持・成長を目指そうという動きが広がり始めている。

イー・ロジット 代表取締役社長
兼チーフコンサルタント
角井亮一 氏
1968年、大阪生まれ。ゴールデンゲート大学でMBA取得。帰国後、船井総合研究所に入社し、小売業へのコンサルティングを行い、96年にはネット通販参入セミナーを開催。その後、光輝物流に入社し、物流コンサルティングや物流アウトソーシングを実施。2000年、イー・ロジットを設立。実績879社、倉庫面積11万平米の国内ナンバーワンの通販専門物流代行会社に成長させる。物流とシステムを得意とするコンサルタントとして多方面で活躍、人材育成にも力を注いでいる。物流関連の著書、メディア出演も多数。
物流DXとロボティクスへの
期待と課題
2つ目のポイント、物流DXへの期待も大きい。例えば、製造から卸、小売に至るモノの情報が一元管理できれば、物流の効率は大きく向上するだろう。しかし、それは容易なことではないと角井氏は見ている。
「新潟から東京に米を運ぶとしましょう。新潟県内の産地ごとの『今日の出荷量』を一元的に把握できれば、トラックの台数を最適化することができます。しかし、産地間の競争を前提とすれば、各産地は『どこに、どれだけの米を運んだか』をライバルに知られたくないと考えるでしょう。いくつかの業界で進展している共同配送においても、フェアな形での情報の一元管理は大きな課題です。物流ビッグデータの価値を高めるためには、行政機関による交通整理が必要ではないかと考えています」
倉庫などの物流現場では、ロボティクスの技術も広がり始めている。コロナ禍を受けて、自動化を進め人の接触を減らしたいというニーズもある。ただ、ロボットを導入すれば生産性が上がると考えるのは楽観的すぎるかもしれない。
「ロボット活用で成果を生み出すのは簡単ではありません。導入して生産性が落ちるケースもあります。ただ、今のうちに試行錯誤しながら、ロボットの使い方を学習している物流現場は、ノウハウを蓄積してやがて競争力を高めるでしょう。ロボティクスへの取り組みにも、中長期的な視点が必要です」(角井氏)
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