日経ビジネス電子版 SPECIAL
物流・ロジスティクス チャンネル 物流総論 03

物流コストインフレの時代を
勝ち抜くために

物流能力が企業競争力の
決定要因になる
変革のポイントはデータ活用にあり

経済産業省
商務・サービスグループ 物流企画室長
中野剛志

物流需要は増すばかりだが、供給能力はそれに追いついていない。供給量の伸びはあまり期待できず、需給のギャップはさらに拡大する方向にある。「物流崩壊」さえ懸念される中で、政府も対策の強化に取り組んでいる。そのキーパーソンである経済産業省 商務・サービスグループ 物流企画室長の中野剛志氏が日本の物流の未来を展望する。

物流の需要拡大に、
供給が追いついていない

物流危機が叫ばれて久しい。ECの成長、多品種小ロット輸送の拡大などを背景に、物流の需要はますます増大している。一方、供給側はこの動きに追いついていない。トラック運転手をはじめ、供給を支えるリソースの不足は深刻化している。

「1980年代から90年代にかけて、需要が供給を上回る状態でした。当時は物流事業者やドライバーを増やすために、規制緩和が行われました。ドライバー数はいったん増加しますが、競争が激化して労働環境が悪化し、ドライバーのなり手が減ってしまった。今後は働き方改革がドライバーなどの分野でも進展することで、供給の制約はさらに大きくなります」と語るのは、経済産業省 商務・サービスグループ 物流企画室長の中野剛志氏である。

「物流コストインフレ」:
物流の能力が、競争力や成長を左右する時代へ

2010年代、物流の需要量が供給量を上回る「変曲点」があった。以後、伸び続ける需要量に、供給量は追いついていない。労働規制強化などを踏まえると、供給側の制約は今後さらに大きくなり、需要・供給のギャップ拡大が予想される

図にあるように、90年代から2010年代にかけては、規制緩和などにより日本では物流コストデフレの時代が続いた。しかし、10年代のある時点で「変曲点」を迎える。物流コストインフレの時代に移行し、近年は需要と供給のギャップは拡大する一方だ。ドライバーの時間外労働に関する上限規制が24年に適用されれば、事態はさらに深刻化するだろう。

「日本の製造業の多くは、『いいものをつくれば売れる』と考えてきました。しかし、いいものをつくっても運べなくなる時代が目の前に迫っています。逆に、それなりの品質であっても、いち早く顧客に届けられる企業が優位に立つでしょう。物流能力が企業競争力の重要な決定要因になるということです」と中野氏は指摘する。

中野剛志 氏

経済産業省
商務・サービスグループ 
物流企画室長
中野剛志

1971年生まれ。96年東京大学教養学部卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2005年英エディンバラ大学から博士号(政治思想)取得。製造産業局参事官(デジタルトランスフォーメーション・イノベーション担当)(併)ものづくり政策審議室長、経済産業省大臣官房参事官(グローバル産業担当)などを経て、21年7月から現職。

協調領域と競争領域の
物流強化が求められる

企業は物流を軸に、改めて経営戦略を見直す必要がありそうだ。その際のポイントがデータ活用である。

「サプライヤー→調達物流→生産→物流→販売というサプライチェーン、企画→設計→生産というエンジニアリングチェーンを同期化し、データ連携する。それにより、急激な需要変動にも柔軟に対応することができるでしょう」(中野氏)

物流に関係するデータを統合的に見ることができれば、積載率や配送効率の向上などにもつながるだろう。それが目指す方向だが、現状との差は大きい。デジタル化の遅れやシステム間連携の不足など課題が山積しているからだ。

「サプライチェーン改革というと生産拠点の移転ばかりが注目されがちですが、データ連携への意識をもっと高める必要があると思います」(中野氏)

物流危機への対策として、政府としては標準化や共同配送などへの支援策を拡充する考えだ。ただし、こうした協調領域の施策だけでは不十分。企業単位で取り組む競争領域の物流機能強化が欠かせない。

「このままでは数年後、物流崩壊ともいうべき事態が懸念されます。役所として協調領域での取り組みに汗をかくつもりですが、各企業が物流への意識を高め、データを活用しつつサプライチェーンなどの競争領域を強くする必要があります」と中野氏は話す。

それぞれの企業に、物流の強みを競争力につなげるための戦略が求められている。

中野剛志氏の
講演動画はこちら ▼

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