日経ビジネス電子版 SPECIAL
物流・ロジスティクス チャンネル 物流総論 04

流通チャネルを内部化するか、
外部化するか

必要な流通資産の特殊性と
流通業者の存在が
内部化/外部化の検討で
大きな意味を持つ

慶應義塾大学
商学部 教授
高田英亮

流通チャネルを内部化するか、外部化するか。そのような検討を行ったことがある製造業は少なくないだろう。どのような場合に、内部化または外部化が適切な選択となるのだろうか。このテーマに関しては、学術的な成果が積み重ねられている。慶應義塾大学商学部教授の高田英亮氏が、実証分析を踏まえて内部化と外部化の条件について解説する。

人的・物的資産特殊性と
市場ケイパビリティとは

製造業にとって、流通チャネル戦略は重要なテーマだ。内部化して流通をコントロールする企業がある一方、流通業者の力を借りて固定費を抑制しようと考える企業もある。

流通チャネルを内部化するか、それとも外部化するか。最近は、学問的なアプローチにより重要な示唆が得られている。この分野を専門とする研究者の一人が、慶應義塾大学商学部教授の高田英亮氏である。

高田氏が提示するキーワードが「チャネル統合度」だ。

「チャネル統合度は既存研究においてよく用いられる概念。製造業者がある製品を販売するに当たって、直接チャネルが売上高に占める割合のことです」と高田氏は説明する。自社ですべての製品を直接販売すれば、統合度は100。逆に、外部の流通業者にすべてを委ねれば、統合度は0となる。

ある企業が流通チャネルの内部化/外部化を検討する場合、どのような要因が重要になるだろうか。主要なものとして、高田氏は資産特殊性と市場ケイパビリティを挙げる。

資産特殊性には人的なもの、物的なものがある。前者は特定製造業者の特定製品や顧客についての特殊な知識・ノウハウを持つ販売員であり、後者はカスタマイズされた倉庫などの特殊な設備を意味する。

「製品販売に必要な流通資産が汎用的である場合、流通機能を外部化するほうが賢明と考えられます。流通業者は規模の経済や専門化のメリットを生かして、より効率的に流通機能を遂行できるでしょう」と高田氏は話す。

ある製造業者が特殊な流通資産を必要とする場合はどうだろうか。流通機能を内部化している場合は、自ら投資をすれば良いので話は単純だ。

一方、流通機能を外部化している場合、事情はやや複雑になる。特殊な流通資産への投資を求める製造業者に対して、流通業者は簡単には承諾しにくい。他の顧客向けに転用しにくい設備なので、後々、製造業者が自己利益のために取引条件の変更などを申し出るかもしれない。そのとき、流通業者はこの要求をのまざるを得ないかもしれない。

流通業者はこのようなリスクも考慮した上で、投資を検討する必要がある。

高田英亮 氏

慶應義塾大学商学部 教授
高田英亮

1981年生まれ。2004年慶應義塾大学商学部卒業、06年同大学大学院商学研究科修士課程修了、09年同博士課程単位取得退学。慶應義塾大学商学部助教、専任講師、准教授を経て、20年から現職。専門は流通チャネル論とマーケティング戦略論。博士(商学)。

チャネル統合度と
3要因の関係を実証分析

次に、市場ケイパビリティである。ある分野で有能な流通業者が多数存在する場合、製造業者は間接チャネルを選びやすい。逆に、そうした流通業者が存在しなければ、製造業者は流通機能を内部化せざるを得ないだろう。

以上の仮説を整理すると、人的資産特殊性と物的資産特殊性が高いほど、チャネル統合度も高くなる。また、市場ケイパビリティが高いほど、チャネル統合度は低くなる。高田氏はこれについて、実証分析を行った。

高田氏は日本の製造業者に国内卸売チャネルに関する調査票を送付。生産財分野で451社、消費財分野では238社から回答を得たという。それぞれの分野で直接チャネルを主軸に据える企業、間接チャネルがメインの企業があり、その中間にデュアル・チャネルの企業がある。

直接/間接/デュアル・チャネルを運用している企業において、人的資産特殊性と物的資産特殊性、市場ケイパビリティという3要因の度合い(平均値)を下記図に示した。それぞれの度合いは7点評価で、4点が中央値となる。

流通チャネルの内部化・
外部化に関する分析
平均値の比較

3つの要因とチャネル統合度の関係について、おおむね仮説を支持する結果が得られた。一方で、消費財における人的・物的資産特殊性に関しては仮説通りの結果とはならなかった。「消費財分野ではチャネルを外部化するメリットが内部化の効果を上回っていることが示唆されます」(高田氏)

「生産財では消費財と比べて直接チャネルを用いている製造業者の割合が高く、消費財では生産財と比べて間接チャネルを用いている製造業者の割合が高い。また、生産財において、人的資産特殊性と物的資産特殊性は『間接<デュアル<直接』という結果を示しており、それぞれの特殊性が高まるほどチャネル統合度が高くなるという仮説通りの数値の変化が示されました」と高田氏。市場ケイパビリティについても、それが高いほどチャネル統合度が低下するとの仮説が支持されている。

企業の持つ機能を内部化するか、外部化するかは経営戦略の根幹である。上記のような研究成果を参照することで、経営者はより確かな意思決定ができるはずだ。

高田英亮氏の
講演動画はこちら ▼

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