コロナ禍の農林水産業で新たな販路につながる取り組みへの支援

新型コロナウイルスの感染拡大により、牛肉、水産物、野菜、花等、農林水産業の生産者は、在庫増加や価格の低下等の影響を受けている。農林水産省は国産農林水産物の販売促進を図る補助事業を立ち上げ、「#元気いただきますプロジェクト」と名付けた。このプロジェクトは期待通りの効果を上げることができたのか。「インターネット販売推進事業」の事例を取材した。

送料支援が産地を力強く応援

新型コロナウイルスとの闘いが続く中、私たちの生活や企業活動が大きな影響を受けている。飲食サービスを提供する事業者は特に売り上げ減少が深刻だ。総務省統計局の家計調査によると、1回目の緊急事態宣言下だった昨年4月は、家計の消費支出のうち「外食」が前年同月比60%以上減少した。同月の牛肉の卸売価格はA-5ランクの去勢和牛が前年比で73.8%(農林水産省統計部「食肉流通統計」)、豊洲市場の鮮魚の売上金額は前年比61.4%、果実は同86.5%(東京卸売市場統計情報)と、いずれも落ち込み、食材を提供する農林水産業と市場関係者にも余波が及んでいる。

このような状況のもと、農林水産省は国産農林水産物の販売促進策として「#元気いただきますプロジェクト」を打ち出した。この事業では、コロナ禍で販路を失った生産者や飲食店等がインターネット販売やデリバリー・テイクアウト等、ウィズコロナにも対応できる取り組みに対して支援を行った。

この中の、送料を支援する「インターネット販売推進事業」では、生産者と消費者が直接つながる機会にもなった。

株式会社食文化 産地プロデューサー&WEBディレクター 豊洲市場ドットコム担当 八尾昌輝氏

「#元気いただきますプロジェクト」に参加したグルメ通販サイト「豊洲市場ドットコム」を運営する、株式会社食文化 産地プロデューサー&WEBディレクター八尾昌輝氏は、「#元気いただきますプロジェクトは、確かに効果があった」と証言する。

同社は2001年に地方の地場食材をネット販売するECサイト「うまいもんドットコム」をスタート。2004年4月に東京築地青果市場と提携し、「築地市場ドットコム(現 豊洲市場ドットコム)」を開始した、食材ECサイトの草分けだ。

豊洲市場ドットコムでは、商品代金とは別に送料がかかるスタイルをとってきた。ただ、「3000円の商品を買い物カゴに入れ、最後の手続きになると送料が1000円上乗せされるので、そこで買い物をやめてしまう方もいた」と八尾氏は打ち明ける。

#元気いただきますプロジェクトの送料支援の効果が顕著に表れたのが、年末に販売した大分の「かぼすブリ」の事例だ。この商品は大きなブリの半身を発泡スチロールケースで送るため、送料がかさむ。しかし、国の送料負担となったため、年末だけでも500件ほどのオーダーが入った。

副次的な効果も得られたと八尾氏は顔をほころばせる。「かぼすブリの場合は養殖だが、『養殖のブリがこんなにおいしいとは知らなかった』『また食べてみたい』というお客様がたくさんいらっしゃって、実質送料無料分を締め切った後にもまだ売れている。これは、お客さんがついたということです」。

SNSも連動して販売をしていたので、「送料無料だったら買ってみたい」という顧客の声や、「産地支援のつもりで買ったこのブリでこんな料理を作った」という写真などもアップされ、このプロジェクトをきっかけに顧客同士のコミュニケーションも進んだ、と八尾氏は振り返る。

豊洲市場ドットコムは、日々仲卸から入る情報をもとに、同サイトが抱える30万の顧客に対して、青果と水産の両方を横断的にカバーする食材の組み合わせを企画・編集し、サイトに掲載して販売しており、他では手に入りにくい高品質な食材を提供しているところに特色がある

生産者や仲卸の意識にも変化の兆しが

豊洲市場ドットコムが以前から年間1000パック販売していたが、今回の#元気いただきますプロジェクトで販売数が4倍に伸びたのが、岡山県の邑久の牡蠣の例だ。

例年、夏から秋口にかけて業務用冷凍原料として牡蠣を売っているが、昨年の夏ごろはまだ動きが悪いということを、邑久町漁業協同組合の松本正樹 代表理事組合長と山本哲也 参事は納入先から聞いていた。もし順調に売れないと、今年1月からの操業がどうなるかという不安があった、と2人は口をそろえる。「今年に関しては、例年通りに原料を出荷していいという話をいただいた。国のいろいろな施策もあって原料を消費できたことで、我々に注文が入ってきたと思う」と山本参事は#元気いただきますプロジェクトの間接的な効果について証言する。

経済産業省が昨年7月に発表した「電子商取引に関する市場調査」によれば、「食品、飲料、酒類」のEC化率は2019年に2.89%と高くない。新型コロナ感染拡大により、インターネット通販は確実に伸びているが、まだまだ普及途中の段階と言える。しかし、今回のプロジェクトは、今までECに消極的だった生産者や仲卸の意識を変えるきっかけになった、と八尾氏はみている。

生産者からは「インターネットでこんなに売れるんですね」といった話をいただき、仲卸の方からも「今後もインターネット販売に力を入れたい」という感想を得た。農林水産業支援の事業だが、得た気づきは思いのほか大きかったようだ。

今年1月8日から緊急事態宣言の再発出となり、少しずつ回復途上にあった外食産業も引き続き大きな影響を受けている。農林水産省では、2020年度第3次補正予算においても、引き続きコロナの影響を受けている国産農林水産物等のインターネット販売、デリバリー販売等の取り組みに支援を行い、農林漁業者等の販路の多様化や、流通構造の変化を促していく。

邑久町漁業協同組合の松本正樹 代表理事組合長(右)と山本哲也 参事(左)

邑久の牡蠣は岡山県虫明湾で生産されている。全国名水百選にも選ばれた千種川が注ぎ込み、良質の植物性プランクトンが発生する汽水域で養殖されるため、ふっくらとした粒の大きさに特徴がある。年間生産量約1500トンのうち、3分の1が冷凍原料向けとして出荷されている

お問い合わせ

農林水産省

https://www.maff.go.jp/

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