保険営業のスペシャリストに聞く コロナ禍で保険への関心が高まる保険営業パーソンとの上手な付き合い方とは

新型コロナウイルスの感染拡大で健康や家計への不安が高まり、万が一のときの備えである保険への関心が高まっている。ただし、その中身を熟知している人は少ない。さまざまな保険商品の中からどんな着眼点で選べばいいのか。今入っている保険で十分なのか、不足なのか。適正な保険に加入するために保険営業パーソンとどう付き合えばいいのか。2020年8月に実施した消費者意識調査の結果を交えつつ、世界的な生命保険・金融プロフェッショナル集団、MDRTの2020年度MDRT日本会会長である千葉博道氏に話を聞いた。

「コロナ禍で、改めて保険の大切さや必要性に注目する人が増えた。リモートワークで在宅率が高くなり、より家族で相談しやすい環境になったことも影響していると思う」。MDRT日本会会長の千葉博道氏は話す。

2020年度一般社団法人MDRT
日本会会長
千葉 博道

家族構成や現在の収入、預貯金状況などによって、それぞれ加入すべき保険は異なる。どのぐらいの備えが必要かは家庭によって全く違うからだ。千葉氏はまず丁寧にヒアリングをすることから始めるという。住まいの状況、配偶者がどんな会社に勤務しているか、万が一のときに勤務先からもらえる援助はどれほどか。亡くなったときに死亡弔慰金が厚い会社もあれば、少額しか出せない会社もある。

要するに、不測の事態になっても、不満なく生活を送るためにはどれだけお金が必要なのか。それに対して、預貯金や国が支援してくれる遺族年金などさまざまな制度を利用して、いくらならカバーできるか。すると、不足分が見えてくる。きちんとシミュレーションをして、足りない分を保険で補うことだ。

過剰でも不足でもない、適正な保険に入る

例えば、必要保証額が2000万円ぐらい不足しているときに、死亡保険金が8000万円支払われる生命保険に入っているとしよう。しかも掛け捨てだとしたら、お金も残らない。これは過剰と言える。残された家族はたくさんお金をもらえるかもしれないが、日々の生活で苦しい思いまでして、そこまでの保険料を支払う必要はない。反対に、5000万円ぐらい必要なのに、死亡保険金が1000万円では、いざというときに困ってしまう。「お客様はそこに気づいてないケースが多いので、細かくヒアリングして、現状を正確に伝えている」。

このとき、「思いの部分も大事だ」と千葉氏は指摘する。例えば、自分に万が一のことがあって収入が減っても、それまでと変わらない教育を子供に受けさせたいなど、その思いによって、残すべき金額は変わるからだ。

それこそ大学まで公立に進ませたい場合と、極端に言うと私立大学の医学部に進学させたい場合では、必要な金額はまるで違う。「思いが強ければ、それを保険にも反映させる。だから一般的なデータに単に当てはめるだけでは、保険の内容は決められない」と千葉氏は強調する。

だからこそ保険を設計したり見直したりするなら、まずは将来、自分がどうしたいかを考えておくといい。5年後、10年後、20年後、自分がどうしていたいか。それによって必要な金額は変わってくる。加えて、「将来設計のために、年金の加入状況や将来退職金をどれぐらいもらえそうかも確認しておきたい。実際、自分の退職金を知らない人が圧倒的に多い。退職金規定を読み込めば、おおよその見当はつくはず」。

保険営業パーソンによるアドバイスへの信頼度は高い

今回、MDRTが実施した「保険商品の購入検討に関する意識調査」によると、保険営業パーソンへの需要がネット保険サービスの需要を大きく上回っている(グラフ1)。

保険商品に関して相談する際、「保険営業パーソンと相談をした」と回答したのは89%、「ネット保険サービス(ウェブ上で保険のシミュレーションをするといった種類のサービス)」が6%という結果になった。人生設計において重要なファイナンシャルプランでは、保険営業パーソンによる個人のライフステージにあった包括的かつ適切なアドバイスへの信頼度は高いと言える。また今後、保険商品について相談したい相手として、45%が保険営業パーソンと回答している。

保険営業パーソンに相談するメリットとして、「コミュニケーションのしやすさ」(44%)、「信頼関係を構築できる、親身な相談に乗ってもらえる」(44%)、「複雑な要望を伝え、理解してもらえること」(43%)が挙がった(グラフ2)。このように意思疎通ができるコミュニケーションや人間関係が重視されていることから、保険商品の購入検討において保険営業パーソンを重視する傾向は今後も続くだろう。

「人それぞれ家庭環境や考え方、価値観、バックグラウンドが違い、保険はそれに密接に関わる。一人ひとりの複雑な要望に応え、過剰でも不足でもなく、適正な保険に入っていただくのが保険営業パーソンの重要な役割であり、MDRT会員として常に顧客の利益を優先した商品提供をしていくことが我々の使命だ」(千葉氏)。

デジタルとアナログのいいとこ取り

最近は、保険商品への加入を検討する際、シミュレーションソフトを用いる。自動で算出され、計算ミスもない。ただし、「標準的なモデルはすぐに出るものの、そこに契約者の思いを反映させることは、保険営業パーソンにしかできないと考えている。それでも医療保険やがん保険なら何とかなるかもしれないが、万が一のときの保障金額の大きい保険は契約者とシミュレーションソフトだけで決めるのは難しいと思う」。

保険は、特に病気などは新しい治療法が確立され、保険もそれに対応するために商品自体が刷新されているケースもある。「昔から入っているから安心」ではなく、最新の治療に対応していないこともあるので、保険証券などで確認することも重要だ。新型コロナウイルスの治療に関しても、医師の判断でホテル療養や自宅療養も入院保険が適用されるようになるなど、保険会社によって対応が異なる場合がある。こうした見直しの場合でも、保険営業パーソンに相談すると解決が早い。

保険営業パーソンへの信頼が高いとはいえ、新たな傾向として、保険営業パーソンがテクノロジーやデジタルツールを活用することで、より効果的で経済的なソリューションを提供することを消費者から期待されている(グラフ3)。

保険コスト削減のためにAIによる業務の自動化や、オンライン会議プラットフォームについては、現段階では「大事である」または 「やや大事である」より、「どちらともいえない」という回答が上回ったが、今後期待が高まってくることは間違いない。「デジタルとアナログそれぞれのいい部分を活用し、共存させていくことが重要。まだまだ発展途上だが期待は大きい。デジタルの有効活用が今後の課題。世界中のMDRT会員同士が、会員のネットワークを通じ、様々な情報を共有し、戦略的なアプローチや最新の販売手法を常に学んでセールスに役立てている」。

保険以外のことも相談していい

では、契約者は保険営業パーソンをどう「利用」したらいいのか。「保険とは関係のないことでも相談してみるのが一番。フィナンシャルプランナー(FP)の有資格者も多く、お金に関して詳しい。私自身、お客様には『何か力になれるかもしれないので、保険以外のことでも困っていることがあったら何でも相談してください』と事あるごとに伝えている」と千葉氏は話す。

実際、千葉氏は契約者のあらゆる困りごとにも対応してきた。「これまで離婚相談から、家庭のトラブル解決、子供の留学相談、会社の資金繰りなど数えきれないほど相談を受けてきた。最近では、新型コロナウイルスの影響で、持続化給付金や東京都の協力金、雇用助成金のアドバイスを依頼されるケースが増えている」という。「保険でダイレクトに解決できる部分もあるかもしれない。直接的に解決できないところでも可能な範囲で調べたり、ほかの専門家を紹介したりしている。普段から士業の方とのネットワークを大事にしていて、MDRT会員ならではの大きなネットワークを使い、信頼できるFPをお客様に紹介することもある」。

不安定な時代だからこそ、我々保険営業パーソンに相談してほしいと話す千葉氏

かつては年功序列、終身雇用で、大企業にいればかなりの金額の退職金をもらえた。退職後すぐに年金も支給されたから、そこまで老後の家計について心配する必要がなかったかもしれないが、今は違う。これから先、年金をどれだけもらえるかも分からないとなると、自衛するしかない。「老後資金2000万円問題がメディアで騒がれたときから問い合わせが増えている」という。

「不安定な時代だからこそ、我々保険営業パーソンに相談してほしい」と千葉氏は話す。日本の生命保険加入率は男性81.1%、女性82.9%(生命保険文化センター 令和元年度「生活保障に関する調査」)と高いが、以前に比べ特に20歳代の非加入者が目立つ。この世代への啓蒙は今後の課題。万が一のときに路頭に迷うことがないように、今後とも手助けをしていきたい」。

生命保険・金融のプロ集団MRDT

1927年に米国で発足したMillion Dollar Round Table(MDRT)は、生命保険・金融のプロフェッショナル集団。世界各国の生命保険と金融サービスの専門家6万5000人以上が所属する独立したグローバルな組織で、500社、70カ国で会員が活躍している。世界大会や研修会によるグローバルなネットワークと共に、独自リソースやメンタリング・プログラムを活用しながらビジネスを成長させる豊富な知識を持ち、卓越した顧客サービスを提供。メンバーは相互研鑽と社会貢献を活動の柱に、ホール・パーソン(バランスのとれた人格を志向すること)を目指す。

調査概要

Million Dollar Round Table(MDRT)米国本部が、調査会社マイクロミル社の協力を得て、18 歳以上の成人2071人を対象にオンラインで「保険商品の購入検討に関する意識調査」を実施(2020 年 8 月 28 日から31 日)。日本国内での調査は今回が初めて。

お問い合わせ

Million Dollar Round Table (MDRT)

https://www.mdrt.org/ja/

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