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今年10月に創立50周年を迎える三菱ガス化学は、社会の変化や時代の流れを見つめながら企業風土であるチャレンジ精神で常に新しい技術を追求し、産業や暮らしを支える世界初、国内初の製品を生み続けている。その強さの源は何か。そして将来に向けた価値創造の取り組みとは━━。藤井政志代表取締役社長に聞いた。

三菱ガス化学は製品の90%程度を自社開発で占めるなど、独自技術を強みに持続的な成長を遂げてきました。なぜそれが可能だったのでしょうか。

 社員はみな「世界初」「国内初」が大好きで、他の企業が手掛けていない新しいものを積極的に追いかけます。社員の挑戦に会社がブレーキをかけることはありません。創立以来、そうした自由闊達でチャレンジ精神旺盛な社風が脈々と引き継がれており、海外展開にも表れています。1980年には当時わが国の化学業界にとって「未踏の地」であったサウジアラビアに進出し、売上規模が1,600億円ほどの時期に1,000億円の投資を断行しました。現場の有志が続々と海を渡り、メタノール生産を実現させました。現在、サウジアラビアには5つのメタノールプラントを抱え、世界最大の生産能力を誇っています。その後、過酸化水素やポリカーボネートの事業でも、いち早くインドネシア、ベネズエラ、タイといった新興国に進出しました。現在では世界各国で製造・販売を行っています。こうした技術力とグローバル開拓力・展開力を背景に、当社は世界シェアトップの製品を数多く保有しています。

研究開発に対する方針を教えてください。

 当社は「研究開発型企業」として革新的な製品や事業を生み出してきました。最近では、植物工場や抗体医薬品など新事業にも積極的に取り組んでいます。当社の研究部門の社員は約550人です。これを外国人や女性を戦略的に採用し700人に増員します。そして将来的には1,000人まで増やし、現在売上高の6~7%を占める研究開発費も10%まで拡大する考えです。今年4月には、全体最適とイノベーション創出の視点から、研究推進組織を再編しました。当社にはグループ社員がおよそ1万人おりますが、今後も研究のリソースの一定割合を新規事業に充てることで、新たな価値の創出を図ります。

デジタルトランスフォーメーション(DX)はどう進めますか。

 業務効率化に向けたDXの推進は必須であり、積極的に投資しています。工場ではヒューマンエラーを極力減らし、高品質の製品を安定的に製造できるよう、人工知能(AI)やIoTを活用したスマートファクトリーを実現します。研究部門でもマテリアルズ・インフォマティクス(MI)を取り入れ、スマートラボラトリー化を図ります。サプライチェーン全体のスマート化により、会社のあり方や仕事のあり方を変革していく方針です。

CSR推進室を設置しCSR基本方針を策定するなど、CSRやESGへの取り組みを強化しています。その背景にはどんな思いがあるのでしょうか。

 近年は企業のCSRやESGへの取り組みに対するステークホルダーの期待がますます高まっています。「社会と分かち合える価値の創造」というグループミッションのもと、化学の力を生かして社会課題解決に貢献する製品・事業を創出し、持続可能な社会の実現に貢献していく考えです。今年3月には2050年のカーボンニュートラル達成を宣言しました。当社はCO2と水素を原料とする「環境循環型メタノール」、地熱発電所やバイオマス発電所の建設、CCUS(CO2の回収・貯留・利用)など、脱炭素化に向けた取り組みを精力的に進めています。カーボンニュートラルの実現をオールジャパンで目指す中、これらの分野で中心的な役割を担っていきたいと思います。

最後に、今後の展望をお聞かせください。

 2022年3月期から始まる新たな中期経営計画では2,400億円規模の投資を行います。2030年には売上高1兆円、営業利益1,000億円を達成し、高い収益力を持つエクセレントカンパニーの仲間入りを果たしたいと考えています。事業ポートフォリオ改革やCSR経営を積極的に進め、社会に寄り添い、さらなる成長を目指していきます。

基礎化学品と機能化学品の2事業部門に組織を再編、
成長分野に集中投資

2020年4月に4カンパニーで構成していた事業部門を基礎化学品と機能化学品の2事業部門に再編した。基礎化学品では環境循環型メタノールに注力するほか、引き続きガスバリア性に優れ炭酸飲料のペットボトルなどに適したMXナイロン(写真左)、建造物などの金属劣化を防ぐメタキシレンジアミンなどを強化する。機能化学品ではスマートフォンのカメラレンズに使う光学樹脂ポリマーや半導体パッケージ用BT積層板、ポリカーボネート樹脂、食品・医療用の脱酸素剤エージレス(写真右)などに重点を置く。成長分野に集中投資し、産業・暮らしに貢献する製品の創出を加速する。

掘削技術を活用し地熱開発を推進

化学品の原料となる天然ガスの掘削で培った技術を活用し、CO2を発生しない再生可能エネルギーである地熱資源の開発に取り組む。秋田県鹿角市の澄川地熱発電所、秋田県湯沢市の山葵沢地熱発電所(写真)に続き、岩手県八幡平市に3カ所目の地熱発電所を建設中。気候変動問題の解決に貢献すべく2030年までに10カ所以上の地熱発電所運営を目指す。

三菱ガス化学株式会社
代表取締役社長
藤井 政志
1959年岡山県生まれ。81年大阪大学経済学部経済学科卒業後、三菱ガス化学入社。総務人事センター長、天然ガス系化学品カンパニー有機化学品事業部長などを経て2012年執行役員、15年常務執行役員に就任。19年より現職。

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