宅急便を世に送り出し、その後も物流業界の変革を続けてきたヤマトホールディングスでは、全社的にDXを強力に推進している。その中でもDXを効率よく活用し運用していくためのデジタル人材の育成を重視している。その環境づくりに尽力しているのが日本マイクロソフトである。今回は、両企業のトップおよびCTOを交え、DXを推進するために欠かせない人材育成の重要性や具体的な取り組みについて語っていただいた。

コロナ禍で大きく変化した
消費のあり方と働き方

ヤマトホールディングス株式会社
代表取締役社長
長尾 裕 氏

長尾氏:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によって、人々の生活やビジネス環境は大きな変化を余儀なくされました。なかでも、緊急事態宣言の発令によってステイホームの機会が増え、eコマースによる消費が活発になり、消費のあり方が大きく様変わりしたと認識しています。このことは企業にとって、変化した消費に対して売り方も変えないと消費者にリーチできないことを意味しており、その結果、多くの企業が売り方を急ピッチで変革しています。当然売り方を変えるには物流も変えていくことが必要で、実は物流ファーストで物事を考えていく必要があるのではと考えています。

吉田氏:長尾社長のおっしゃる消費や売り方の変化はもちろん、働き方についても大きな変化を実感されている方は多いことでしょう。緊急事態宣言が発令された前後はリモートワークのニーズが急増して、現在はリモートワークの効率化やセキュリティという課題に視点が移りつつもあります。大企業については、在宅勤務を維持する動きが続いている一方で、その企業に在宅勤務を要請している政府自身の対応こそが重要です。こうした困難な状況のなかで、厚生労働省が手掛けるCOVID-19情報の一元化システムや、神戸市が整備した給付金のオンライン申請システムなど、民間への成果も含めて、日本マイクロソフトとしてさまざまな事業に貢献できたことは、うれしく思っています。

DXに向けた両社の取り組み

長尾氏:中長期的な経営課題のグランドデザインを示した「YAMATO NEXT 100」を2020年1月に発表し、この1年間具体的な施策に取り組んできました。その結果として、当初10月にスタートを予定していた「EAZY」というEC向け新配送商品をコロナ禍での急激な環境変化を踏まえ6月に前倒ししてローンチすることができました。これは「YAMATO NEXT 100」のなかで掲げた課題への打ち手をスピーディーに進めてきたからこその結果です。「EAZY」は、これまで当社では行っていなかった“置き配”対応も含め、お届け直前まで受け取り場所の変更が何度でも可能で、さらに荷物を置いた状態の画像をスマートフォンにリアルタイムに通知するといった新たな価値を提供しています。

また、多様化するお客様の需要や、増加する荷物にしっかりと応えることができたのも、第一線にいる現場の努力はもちろん、データに基づくリソースの最適配置をしたことが成果に表れていると考えています。そして2021年1月に中期経営計画として発表した「Oneヤマト2023」は、経営の意思決定を迅速にする体制に刷新し、経営資源の最適な振り分けに必要なデータ・ドリブン経営、要はファクト・ドリブンな事業環境づくりを推し進めていく計画です。

日本マイクロソフト株式会社
代表取締役 社長
吉田 仁志 氏

吉田氏:実はデータ・ドリブンな環境づくりを望む企業は多く、我々もDXを推し進める様々な支援を行っています。DX推進には、3つのステップがあると考えています。デジタル技術による自社の競争力強化、新たなビジネスモデルの創出、そして中長期的な社会におけるイノベーションの三段階です。マイクロソフトのDX支援の強みは、我々自身がDXに取り組んできた経験があることです。ライセンス販売からクラウドのサブスクリプションへビジネスモデルを変えました。特に重要なのは、クラウドはお客様に継続的に利用していただくためには、お客様のビジネスをよく理解し、お客様のビジネスに継続した貢献をすることが求められます。お客様の成功が一番重要です。まだ道半ばではありますが、我々のDXの経験を、お客様と共有してお役に立てていけるようにしていきたいと思っています。

長尾氏:実は我々の重要なテーマの1つに、宅急便というパッケージとして確立したビジネスからいかにビジネスモデルを転換していくかがあります。マイクロソフトさんのようにビジネスモデル転換に成功した“先輩”に支援いただけているのは価値あることだと実感しています。

吉田社長のお話のなかに出てきた、DX推進のステップにおける自社の競争力を高めることについては、新しいデジタル技術の活用によって、我々のビジネスにおいて欠かせない人手によるオペレーションの効率化、省人化を進めていくことが重要だと考えています。人でなければならない領域でも、データに基づいて予測を立て、その予測に基づいた経営資源の最適配置を先回りして行うことが重要です。その意味では、荷物が動くよりデータを先に動かして予測し、お客様に対しても次の物流工程を迅速にお知らせするといった付加価値を提供していく必要があります。デジタルデータを最大限活用して我々のビジネス精度をさらに高めていき、お客様の体験をより良いものにしていきたいと思っています。

ヤマトホールディングス株式会社
執行役員
中林 紀彦 氏

中林氏:長尾が語った通り、データが先に動くというキーワードが重要です。最終的にはフィジカルで起こっていることをサイバー空間に再現する、まさにデジタルツインのような環境整備を目指しています。方法論よりも、データ・ドリブンが何に貢献していくのかを事業サイドとしっかり話し合ったうえで、データの準備を進めていきたいと考えています。ここでいうデータとは、リアルタイムに状況を把握しながらサイバー上で荷物が動いていく予測を可能にするデータと、社員やトラックなどのフィジカルリソースがどのように使われているのかという稼働の可視化が可能なデータです。この環境整備には、テクノロジーが重要になってくるため、クラウドファーストな環境のなかでデータを整備し、予測モデルを動かしながら業務の効率化に取り組んできました。また、それらをうまく運用していくためには、デジタルデータを使いこなせる人材の育成が重要です。そこで、新たな人材育成プログラムを用意し、経営層から現場まで幅広くデジタル技術を使いこなせる人材育成カリキュラムを現在構想しています。

吉田氏:人材育成の重要性に関しては我々も共感しているところです。大きなビジネスモデルの変革につなげていくためには、人材育成が欠かせません。特にスキリング(スキルの習得)だけでなく、デジタルを使いこなして応用していくための人材を育てていくことが非常に重要だと考えています。マイクロソフトは、多岐にわたる人材育成支援を積極的に行っています。例えば、経営層の方々向けには、AIをビジネスに活かすための講習を提供しています。また、エンジニアの皆さま向けには、AIやIoTの最新テクノロジーを習得するための場を、そして就労支援として「Global Skills Initiative-Japan」と呼ばれるデジタルスキル習得の支援施策を展開するなど、幅広い層を対象に人材育成を支援しています。

榊原氏:人材育成についてはもちろん、長尾社長が目指される環境づくりに向けて、様々な形でお手伝いさせていただいています。具体的には、データ・ドリブン経営を推進するためのデータ基盤として、我々が提供する Microsoft Azure をご利用いただいており、最適なクラウドシステムの構築をさまざまな形でご支援しています。その中では、CAF(Microsoft Cloud Adoption Framework)と呼ばれる最適なフレームワークを活用してお客様のクラウドジャーニーを成功に導くべく、ランディングできるような環境づくりをご支援しています。

また、セキュリティやコンプライアンスに資する情報保護の考え方に重点を置き、セキュリティのワークショップ開催やアーキテクチャ内に組み込むセキュリティバイデザインのあるべき姿を一緒に検討させていただいています。もちろん、テクノロジーの側面だけでなく、人材育成の面で無償のトレーニングコースをお使いいただきながら、人材育成のロードマップをともに作成し、ランディングしていけるような環境づくりに取り組んでいます。

DX推進に欠かせない
人材育成の重要性

中林氏:中期経営計画で「『運創業』を支える人事戦略の推進」を掲げていることからも、人材育成を非常に重視しています。最近ではメンバーシップ型やジョブ型などが話題になっていますが、特に専門性を持った人材を社内外から登用する人事制度が重要です。データサイエンティストをはじめ専門性を持った人材を育成・採用し、DXを推進するための組織にとって必要な機能を定義しているところです。中期経営計画でも触れた全社の教育専門組織「クロネコアカデミー」のなかでデジタル人材を育てるプログラムも構想しており、経営層を含む全社員のデジタルリテラシーの底上げと、デジタル人材の早期育成を計画です。

日本マイクロソフト株式会社
執行役員 最高技術責任者 兼
マイクロソフト ディベロップメント株式会社
代表取締役 社長
榊原 彰 氏

榊原氏:そんな人材育成への取り組み支援として、我々ではクラウド&AI人材育成プログラムを用意し、トレーニングや認定資格をセットで提供しています。すでに82名の方が認定資格を取得されるなど、ヤマトホールディングス様では大きな成果を生んでいます。DXはIT部門だけでなく全社での総力戦となりますので、デジタル変革に対して現場からアイデアを出してもらい、それを推進していくスキルを身につけることが重要で、CAFはそれを進めていくための方法論の1つとしてご利用いただけると考えています。

マイクロソフトがここ数年重視している「Tech Intensity」という、企業が持つ技術強度を高めていくことこそ、DX実現には重要です。自分たちが進めるDXをベンダーに任せきりにせず、自分たちで進めていくことの重要性をヤマトホールディングス様はご理解いただいており、Tech Intensityを高めていくための活動を、IT部門の方だけでなく、全社的に取り組んでいただいています。

また、マイクロソフトでは、開発の内製化を推進されている企業様向けのプログラムをクラウドネイティブなパートナー様と実施しています。具体的には、アイデアをMVP(Minimum Viable Product)として3日間という超短期で開発してしまうAzure Light-upや、中長期的なプロダクト開発をクラウド活用とアジャイル/スクラム開発に長けたパートナー様と協働で行っていくCloud Native Dojoといったプログラムをご用意しています。

中林氏:人材育成の視点では、榊原様と当社メンバーとのディスカッションの場を設けていただくなど、メンバーの視座を高めて視野を広げていくことができている点も見逃せません。人材育成の面だけでなく、グローバルな知見や経験をもとにしたフレームワークを、我々に適した形で提供いただいており、とても感謝しています。新配送商品「EAZY」も新たな基盤上で稼働しており、最先端のテクノロジーが活用できるプラットフォームを提供していただいています。さらに現在は、人材育成や体制づくりも一緒に進めていただいています。

物流というフィールドから脱皮し、
さらなる価値提供を目指す

長尾氏:中期経営計画のなかでは、グループの経営資源を結集し、お客様に対する提供価値を最大限に高めていくことに重きをおいていますが、物流というフィールドからいかに脱却するかも大きなテーマだと考えています。新たな事業の創出については、現在シリコンバレーに駐在員をおき、我々経営層が現場からのレポートを直接見て、体験もしながら、新しいビジネスモデルを模索しています。経営陣が前面に立ち、外部の先進的な企業と一緒に組みながら企業変革を強力に推し進めていきたいと考えています。

吉田氏:日本マイクロソフトでは、“Transform Japan, Transform Ourselves”を掲げて、「お客様に寄り添うマイクロソフト」として、日本の社会変革に向けたDXをこれからも支援していきたいと考えています。コロナ過において日本が危機的な状況にあることは実感していますが、ある意味で日本に対するwake-up call(警鐘)と考えながら使命感を持って取り組んでいきたい。もちろん、我々一社では限りがありますので、ヤマトホールディングス様をはじめとしたユーザー企業やパートナー企業とも協力しながら、日本社会を変革していきたいと考えています。

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